きょうの難経 十四難(2) 2021/10/14
1難からコンパクトに論を重ねてきたのが、この14難で急にボリュームも増え、内容も複雑になっていきます。だいたいこのあたりが脱落する最初の山ですので、頑張って乗り越えていきましょう。
前回、以下のような至脈と損脈の呼吸との関連と、方向性について学びました。
・至脈は、呼吸の間に脈拍の回数が増えていき、上から下に向かう。
・損脈は1回の脈拍の間の呼吸数が増えていき、下から上に向かう。
それを踏まえて、今回は五臓との関係が述べられていきます。
損脈之為病柰何
然
一損損於皮毛 皮聚而毛落
二損損於血脈 血脈虛少 不能榮於五藏六府也
三損損於肌肉 肌肉消瘦 飲食不為肌膚
四損損於筋 筋緩不能自收持
五損損於骨 骨痿不能起於床
反此者 至於收病也
從上下者 骨痿不能起於床者死
從下上者 皮聚而毛落者死
これを整理すると以下のようになります。
一損 → 皮毛(肺)→ 皮膚が皺、毛髪脱落
二損 → 血脈(心)→ 血脈が虚少、五臓六腑栄養不足
三損 → 肌肉(脾)→ 肌肉やせ衰え(飲食しても)
四損 → 筋(肝) → 筋が弛緩
五損 → 骨(腎) → 骨が萎えて起き上がれない
「毛髪脱落」にはドキッとしますが、「從上下者」は「外から中へ」、「從下上者」は「中から外へ」両方の伝わり方があるのが興味深いです。「六病位」では、病は外(陽)から中(陰)へ進んでいきますが、ひょっとしたら、中から外へ病が進む考え方もあったのかもしれません。
また、肺(金)→ 心(火)→ 脾(土)→ 肝(木)→ 腎(水) という伝わり方も、五行の相生相剋関係ではあまり法則的とは言えません。
背部兪穴は、上から 肺兪(金)→ 心兪(火)→ 肝兪(木)→ 脾兪(土)→ 腎兪(水) となっていますが、脾と肝の位置が異なります。
強いて言えば、四象(太陰、少陰、太陽、少陽)+中央土の五行の配置に当てはめると、まだ伝わっていく様子がイメージしやすいようにも思います。
後半は治法についてです。
治損之法奈何
然
損肺者 益其氣
損其心者 調其榮衛
損其脾者 調其飲食 適寒溫
損其肝者 緩其中
損其腎者 益其精
此治損之法也
各臓の治法です。
・肺の損には気を補う
・心の損には営衛を調える
・脾の損には飲食とその温度を調える
・肝の損には、その中(中焦?)を緩める
・腎の損には精を補う
まず、脾の損で、飲食の「適寒溫」とあるのが興味深いです。
現代は冷蔵庫のおかげでどうしても胃腸を冷やしやすいですが、冷蔵庫のない2千年前でも飲食物の温度に着眼しているのはまさに慧眼といえるでしょう。
また、肝の損で「緩其中」とあり、テキストでは「甘薬」を用いるのが良いとありました。芍薬甘草湯の芍薬、甘草。あるいは大棗などがそれにあたるのでは、という指摘を頂きました。
最後に、「損」と「虚」はどう違うのか、というご質問がありました。
ひとつの仮説として、陰陽のバランスの変調で見るのが「損」、損耗により絶対量が減っているのが「虚」と考えたのですが、今後しっかり考えていきたいテーマになりました。
「損」の字の員の部分は、鼎の足の大きさに合わせて、上部の鍋の部分の大きさが変わること表現している説もあるそうで、「サイズダウン」を表しているというご指摘も頂き、大変勉強になりました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
十四難、次回に続きます。
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