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きょうの霊枢 口問篇 第二十八 (4) 2021/8/19

「口問」を「こうもん」と読むか、「くもん」と読むか悩みながらも、口問篇、4回目になりました。
今回はまず「涎(よだれ)」が出過ぎる症状からです。

黃帝曰 人之涎下者 何氣使然
歧伯曰 飲食者 皆入于胃
胃中有熱則蟲動
蟲動則胃緩
胃緩則廉泉開
故涎下 補足少陰

涎が出過ぎるのは、胃の中の熱邪と飲食物が相まって、「蟲」が動くことで廉泉穴が開くからだ、としています。
「蟲」は寄生虫とする解釈と、「三尸九虫」とする解釈があるようです。
霊枢の厥病篇では寄生虫によって涎が出るとしています。
(腹熱喜渴涎出者 是蛟蛕也)

「三尸九虫」については、以下ウィキからの引用です。
「道教に由来するとされる人間の体内にいると考えられていた虫。
60日に一度めぐってくる庚申の日に眠ると、この三尸が人間の体から抜け出し天帝にその宿主の罪悪を告げ、その人間の寿命を縮めると言い伝えられ、そこから、庚申の夜は眠らずに過ごすという風習が行われた。一人では夜あかしをして過ごすことは難しいことから、庚申待の行事がおこなわれる。
日本では平安時代に貴族の間で始まり、民間では江戸時代に入ってから地域で庚申講とよばれる集まりをつくり、会場を決めて集団で庚申待をする風習がひろまった。
道教では人間に欲望を起こさせたり寿命を縮めさせるところから、仙人となる上で体内から排除すべき存在としてこれを挙げている。」

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涎が出過ぎる症状については、傷寒論や金匱要略に多く出ているので、以下に列挙します。

傷寒論 辨厥陰病脈證并治
乾嘔 吐涎沫 頭痛者 吳茱萸湯主之

金匱要略
中風歷節病脈證并治
邪入於臟 舌即難言 口吐涎

肺痿肺癰欬嗽上氣病脈證治
肺痿吐涎沫而不咳者 其人不渴 必遺尿 小便數
所以然者 以上虛不能制下故也
此為肺中冷 必眩 多涎唾 甘草乾姜湯以溫之
炙甘草湯 治肺痿涎唾多 心中溫溫液液者
生姜甘草湯 治肺痿欬唾涎沫不止 咽燥而渴
桂枝去芍藥加皂莢湯 治肺痿吐涎沫

痰飲欬嗽病脈證并治
假令瘦人 臍下有悸 吐涎沫而此水也 五苓散主之

水氣病脈證并治
惡風則虛 此為風水 不惡風者 小便通利
上焦有寒 其口多涎 此為黃汗

嘔吐噦下利病脈證治
乾嘔吐涎沫 頭痛者 茱萸湯主之

趺蹶手指臂腫轉筋陰狐疝蚘蟲病證治
蚘蟲之為病 令人吐涎 心痛 發作有時
毒藥不止 甘草粉蜜湯主之

婦人雜病脈證并治
婦人吐涎沫 醫反下之 心下即痞 當先治其吐涎沫
小青龍湯主之
涎沫止 乃治痞 瀉心湯主之

漢方医の先生方からは、涎が大量にでる妊婦さんが、人参湯で改善した症例と、逆にシェーグレン症候群と思われる患者さんが、人参湯で改善した症例を紹介頂きました。人参湯は、金匱要略で挙がっている、「甘草乾姜湯」に白朮と人参を足した加味法とのことです。

次の段は耳鳴り。

黃帝曰 人之耳中鳴者 何氣使然
歧伯曰 耳者 宗脈之所聚也
故胃中空則宗脈虛
虛則下溜 脈有所竭者
故耳鳴 補客主人
手大指爪甲上與肉交者也

耳には多くの経絡が集まる。飲食物が胃に入らないと精気が不足し、経絡の流れも絶えてしまうので、耳鳴の症状が出る、という流れ。
治療には「客主人」を補う、とありますが、これは今の上関穴。
この付近を手の少陽三焦経、足の少陽胆経、足の陽明胃経が通る所に着目しています。
「手大指爪甲上與肉交者」は手の太陰肺経の井穴である少商穴を指します。

※客主人は以下の篇で登場します
素問 刺禁論
刺客主人內陷中脈 為內漏為聾

霊枢 經脈
胃足陽明之脈・・出大迎 循頰車 上耳前 過客主人
三焦手少陽之脈・・從耳後入耳中 出走耳前 過客主人前交頰 至目銳眥

霊枢 動輸
胃氣上注于肺 其悍氣上沖頭者
循咽 上走空竅 循眼系 入絡腦 出顑 下客主人
循牙車 合陽明 并下人迎 此胃氣別走於陽明者也

今回の最後の段落は「舌を噛む」です。

黃帝曰 人之自齧舌者 何氣使然
(歧伯曰)此厥逆走上 脈氣輩至也
少陰氣至則齧舌
少陽氣至則齧頰
陽明氣至則齧唇矣 
視主病者 則補之

厥逆した気が顔面部に集まる、という前提で、
経絡の流注から、
舌を噛むのは(足)少陰の脈気が上逆している、
頬を噛むのは(足)少陽の脈気が上逆している、
唇を噛むのは(足)陽明の脈気が上逆している、
としています。
霊枢の経脈篇には確かに流注として挙がっていますので引用しておきます。

霊枢 経脈
腎足少陰之脈・・循喉嚨,挾舌本
膽足少陽之脈・・其支者 別銳眥 下大迎 合於手少陽
        抵於䪼下 加頰車 下頸
胃足陽明之脈・・下循鼻外 入上齒中 還出挾口環唇
        下交承漿

私は頬を噛んでしまうことが多いので、足の少陽胆経の脈気が上逆しないように気を付けたいと思います。

長くなりましたが、今回はここまでです。
最後までお読み頂きありがとうございました。





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