きょうの霊枢 衛気篇 第五十二 (2) 2021/6/24
衛気篇の後半です。
前回は足の三陰三陽経の標と本を見ましたが、その続きの手の三陰三陽経の標と本からです。それぞれの経穴や部位は先人(楊上善や張介賓、馬蒔など)の註釈によります。
手太陽之本 在外踝之後
標在命門之上一寸也
※ 手太陽小腸経(本-養老 標-晴明の上一寸)
手少陽之本 在小指次指之間上二寸
標在耳後上角下外眥也
※手少陽三焦経(本-液門 標-角孫、絲竹空)
手陽明之本 在肘骨中 上至別陽
標在顏下合鉗上也
※手陽明大腸経(本-曲池、臂臑 標-人迎の後ろ)
手太陰之本 在寸口之中
標在腋內動也
※手太陰肺経(本-太淵 標-天府)
手少陰之本 在銳骨之端
標在背腧也
※手少陰心経(本-神門 標-心兪)
手心主之本 在掌後兩筋之間二寸中
標在腋下下三寸也
※手厥陰心包経(本-内関 標-天池)
※上記について経穴図を合わせて参照すると、陽経は手と顔面部、陰経は手と体幹の組合せになっていることが分かります。
凡候此者
下虛則厥 下盛則熱
上虛則眩 上盛則熱痛
故石者 絕而止之
虛者 引而起之
※白川先生の『字通』によると、「本」は木の根元、「標」はこずえ、高い枝が大本の意味とのことで、そこから人体の下部を「本」上部を「標」として解釈することが多いそうです。標と本については興味深いので、以下に『素問』の標本病傳論を置いておきます。
ここでは、標と本に主従関係は無く、組合せとして掛け合わせているようにみえます。ただ、治法についてはほとんどが「本」を治すで、やはり本治は大事だなと思うのですが、一方で「標」を治すのが「中満」に関わるものだけ、というのも興味深いです。「中満」で検索をかけると、素問霊枢よりも傷寒論の方が「中満」について述べている部分が多いのもまた気になります。この辺りはもっと検討が必要な部分だと思いました。
黃帝問曰 病有標本 刺有逆從 柰何
歧伯對曰
凡刺之方 必別陰陽 前後相應 逆從得施 標本相移
故曰
有其在標而求之於標
(其の標に在りて之を標に求むるあり)
有其在本而求之於本
(其の本に在りて之を本に求むるあり)
有其在本而求之於標
(其の本に在りて之を標に求むるあり)
有其在標而求之於本
(其の標に在りて之を本に求むるあり)
故治有取標而得者
(故に治に標に取りて得る者あり)
有取本而得者
(本に取りて得る者あり)
有逆取而得者
(逆に取りて得る者あり)
有從取而得者
(從取して得る者あり)
故知逆與從 正行無問
知標本者 萬舉萬當
不知標本 是謂妄行
夫陰陽逆從 標本之為道也 小而大
言一而知百病之害
少而多 淺而博 可以言一而知百也
以淺而知深 察近而知遠 言標與本 易而勿及
治反為逆 治得為從
(治して反するを逆となし、治して得るを従となす)
先病而後逆者治其本
(先ず病みて後に逆するものは其の本を治す)
先逆而後病者治其本
(先ず逆して後に病むものは其の本を治す)
先寒而後生病者治其本
(先ず寒ありて後に病を生じる者は其の本を治す)
先病而後生寒者治其本
(先ず病みて後に寒を生じるものは其の本を治す)
先熱而後生病者治其本
(先ず熱ありて後に病を生じる者は其の本を治す)
先熱而後生中滿者治其標
(先ず熱ありて後に中満を生じる者は其の標を治す)
先病而後泄者治其本
(先ず病みて後に泄するものは其の本を治す)
先泄而後生他病者治其本
(先ず泄して後に他病を生じる者は其の本を治す)
必且調之 乃治其他病
(必ずしばらくこれを調えて、乃ち其の他病を治す)
先病而後先中滿者治其標
(先ず病みて後に中満を生ずる者は其の標を治す)
先中滿而後煩心者治其本
(先ず中満して後に煩心する者は其の本を治す)
人有客氣有同氣
小大不利治其標
(小大利せざれば其の標を治す)
小大利治其本
(小大利すれば其の本を治す)
病發而有餘 本而標之
(病発して有余なれば、本にしてこれを標とす)
先治其本 後治其標
(先ず其の本を治し、後に其の標を治す)
病發而不足標而本之
(病発して不足なれば、標にしてこれを本とす)
先治其標後治其本
(先ず其の標を治し、後に其の本を治す)
謹察間甚 以意調之 閒者并行 甚者獨行
先小大不利而後生病者治其本
(先ず小大利せずして後に病を生ずる者は、其の本を治す)
本文後半です。
ここから急に前回出てきた「氣街」の話になります。
十二経脈で標と本を示しておきながら、最後に重ねて「氣街」を持ってくる構成が気になります。事情は分かりませんが、別の流派・学派の考えをねじ込んだのかもしれませんね。
請言氣街
胸氣有街
腹氣有街
頭氣有街
脛氣有街
故氣在頭者 止之於腦
氣在胸者 止之膺與背腧
氣在腹者 止之背腧
與沖脈於臍左右之動脈者
氣在脛者 止之於氣街
與承山踝上以下
取此者 用毫鍼 必先按而在久應於手 乃刺而予之
所治者 頭痛眩仆 腹痛中滿暴脹 及有新積
痛可移者 易已也
積不痛 難已也
※次回からは口問篇に入ります。