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きょうの霊枢 口問篇 第二十八 (2) 2021/7/29

今回は、噦(エツ、しゃっくり)、唏(キ、なきわらう)、振寒(シンカン)、噫(アイ、おくび)の病因と治療法について学びました。さっそく本文から見ていきましょー。

黃帝曰 人之噦者 何氣使然
歧伯曰
穀入于胃 胃氣上注于肺
今有故寒氣與新穀氣
俱還入于胃
新故相亂
真邪相攻
氣並相逆
復出於胃
故為噦
補手太陰 寫足少陰

まずは噦(エツ、しゃっくり)から。
噦の字は、説文解字では「気もどすなり」とあり、吐気を催す意味とされていますが、詩経では「噦噦」を鈴の音の擬音語として用いているそうで、そういわれてみれば、しゃっくりの音も、鈴の音に聞こえないこともないかもしれません。
飲食物が胃に入ってできる穀気と胃に入り込んでいる寒気が混ざって、しゃっくりが口から出てくるとし、これを治すには手太陰(肺経)を補い、足少陰(腎経)を瀉すとしています。

「噦」は他でも登場回数が多く、主なものを以下に挙げます。

素問 宣明五氣
氣所病 心為噫 肺為欬 肝為語 脾為吞 腎為欠為嚏
胃為氣逆為噦為恐 大腸小腸為泄 下焦溢為水
膀胱不利為癃 不約為遺溺 膽為怒 是謂五病

霊枢 邪氣藏府病形
心脈
急甚者為瘈瘲
徵急 為心痛引背 食不下
緩甚 為狂笑
微緩 為伏梁 在心下 上下行 時唾血
大甚 為喉吤
微大 為心痺引背 善淚出
小甚 為善噦

霊枢 口問
肺主為噦 取手太陰

傷寒論 辨脈法
脈滑則為噦 此為醫咎 責虛取實 守空迫血

傷寒論 辨太陽病脈證并治
得病六七日 脈遲浮弱 惡風寒 手足溫
醫二三下之 不能食而脅下滿痛 面目及身黃 頸項強
小便難者 與柴胡湯
後必下重 本渴而飲水嘔者 柴胡湯不中與也
食穀者噦

傷寒論 辨陽明脈證并治
陽明病 不能食 攻其熱必噦
所以然者 胃中虛冷故也
以其人本虛 故攻其熱必噦
/若胃中虛冷 不能食者 飲水則噦

金匱要略 黃疸病脈證并治
黃疸病 小便色不變 欲自利 腹滿而喘 不可除熱
熱除必噦 噦者 小半夏湯主之

金匱要略 嘔吐噦下利病脈證治
乾嘔噦 若手足厥者 橘皮湯主之
噦逆者 橘皮竹茹湯主之

しゃっくりに橘皮湯や橘皮竹茹湯を用いるのは割と有名らしいですね。

つづいて、唏(キ、なきわらう)。
説文解字では「哀痛して泣かざるをいう」とありますが、「唏唏」は笑い声で、わらうの意味もあります。『進撃の巨人』という作品でも、主人公が仲間の死を聞いて悲しみのあまり笑い出すシーンが描かれていましたが、私はまさにこれかなと思いました。

黃帝曰 人之唏者 何氣使然
歧伯曰
此陰氣盛而陽氣虛
陰氣疾而陽氣徐
陰氣盛而陽氣絕
故為唏
補足太陽 寫足少陰

陰気と陽気の極端なアンバランスが「唏」という状態をもたらすようです。
これを治すには、足太陽(膀胱経)を補い、足少陰(腎経)を補う、としています。馬蒔や張介賓はこれをさらに解釈して、陽蹻脈の起こる申脈穴と陰蹻脈の起こる照海穴を用いる、としています。
陰蹻脈、陽蹻脈については、以下が参考になるかなと思います。

霊枢 脈度
蹻脈者 少陰之別 起於然骨之後
上內踝之上 直上循陰股 入陰
上循胸裏 入缺盆 上出人迎之前
入頄 屬目內眥 合於太陽
陽蹻而上行 氣并相還 則為濡
目氣不榮 則目不合

難経 二十八難
陽蹻脈者 起於跟中 循外踝上行 入風池
陰蹻脈者 亦起於跟中 循內踝上行
至咽喉 交貫衝脈

3つ目は振寒(シンカン)。
寒邪が入って、悪寒して震える、という状態ですから馴染みがあると思います。なので、治法も諸陽を補う、なのはもっともと言えるでしょう。

黃帝曰 人之振寒者 何氣使然
歧伯曰
寒氣客於皮膚
陰氣盛 陽氣虛
故為振寒寒慄
補諸陽

ところが振寒にもいろいろありまして、中には熱によるものもありました。

素問 評熱病論
勞風法在肺下 其為病也
使人強上冥視 唾出若涕 惡風而振寒 此為勞風之病

素問 脈解
陽明所謂洒洒振寒者 陽明者 午也
五月盛陽之陰也
陽盛而陰氣加之 故洒洒振寒也

素問 骨空論
風從外入 令人振寒 汗出頭痛 身重惡寒 治在風府
調其陰陽 不足則補 有餘則寫

霊枢 経脈
(胃足陽明之脈)是動則病洒洒振寒 善呻 數欠 顏黑
(胆足少陽之脈)是主骨所生病者・・汗出振寒

金匱要略 肺痿肺癰欬嗽上氣病脈證治
桔梗白散 治欬而胸滿 振寒 脈數 咽乾不渴
時出濁唾腥臭 久久吐膿如米粥者 為肺癰

金匱要略 黃疸病脈證并治
發於陰部 其人必嘔
陽部 其人振寒而發熱也

最後は、噫(アイ、おくび(げっぷ))。
寒気が胃に入り込んだことによって生じる、とありますが、ここまで読むと、噦と噫の説明が入れ替わっているんじゃないかという気もします。漢方医の先生が、本来しゃっくりに用いる橘皮竹茹湯をおくびに用いることがあるとおっしゃっていたので、噦と噫はあまり厳密に区別されていなかったのかもしれないですね。

黃帝曰 人之噫者 何氣使然
歧伯曰
寒氣客於胃
厥逆從下上散
復出於胃
故為噫
補足太陰陽明
一曰補眉本也

噫に関する記述を以下に挙げておきます。

素問 陰陽別論
二陽一陰發病 主驚駭背痛
善噫善欠 名曰風厥

素問 痺論
心痺者 脈不通 煩則心下鼓 暴上氣而喘
嗌乾善噫 厥氣上則恐

霊枢 経脈
(脾足太陰之脈)是動則病舌本強 食則嘔 胃脘痛
腹脹 善噫

難経 十六難
假令得脾脈 其外證 面黃 善噫 善思 善味

傷寒論 平脈法
口脈弱而緩 弱者陽氣不足 緩者胃氣有餘
噫而吞酸 食卒不下 氣填於膈上也

傷寒論 辨太陽脈證并治下
傷寒汗出解之後 胃中不和 心下痞硬 乾噫食臭
脅下有水氣 腹中雷鳴下利者 生姜瀉心湯主之

傷寒發汗 若吐若下 解後 心下痞硬 噫氣不除者
旋復代赭石湯主之

今回は長くなってしまいましたが、口問篇、次回に続きます。






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