子育てではなく子育ち

2018年11月に子どもが生まれた。男の子だ。

子どもが生まれたのだから、子どもにとって「良い父」になるため、父親の勉強をしようと、日々様々な子育て本を読んだりしている。

そんな時に偶然雑貨屋さんで見かけたのが、『子育ちによりそう』という本。

この本は、幼稚園で発行される園だよりに書かれている、園長先生のメッセージをまとめた本。なかなかユニーク。

園長先生の言葉を通して、その園の雰囲気を感じられるのが面白いなーと思って読み進めていくと、以下の文章に出会った。

言葉にし難いような、とてもじんわりする文章だったので、引用したいと思います。おすすめの本です。

「ひ・み・つ」のこと

幼稚園には、「ひみつ」のことがたくさんあります。
ベランダで、園児が先生の耳元でなにやらひそひそとやっています。
「なあに?先生も聴きたいなあ。教えてよ」と、そばに行くと決まって、「だめだよ!ぼくと先生のひみつだもん。」と、言います。私がなおもくいさがると、「じゃあ教えてあげる。でもひみつだよ。明日先生の隣で給食食べようねってお約束したんだ。」と、先生と顔を見合わせて、とてもうれしそうに教えてくれました。

こんなことが幼稚園では日常茶飯事です。「ひみつ」って大人でもわくわくしますよね。

そこで、私もまねして「お片づけ上手ね。お姉ちゃんが年少組の時より早いみたい。でも、お姉ちゃんには秘密ねっ!」とほめてみると、いつもよりにこにこ顔で喜んでくれます。

プール遊びが始まったある日のこと、とても素敵なひみつに出会いました。年長組がプールの中で楽しそうに「貝殻拾い競争」をしています。プールの中に沈めたおもちゃの貝殻をいくつ拾えるかの競争です。
水が大好きな子は、ここぞとばかり両手一杯に貝殻を拾い集めていますが、水の苦手なO君は一つも拾えませんでした。

昨年は顔が水にかかる事さえ苦痛な表情でしたが、年長組になってだいぶ水に慣れてきた段階の園児です。それでも、一生懸命探して貝殻の近くまでは行くのですが、得意な子に全部取られてしまったのです。

私はO君のそばで、「ああ、どうしよう、またとれなかったらがっかりするだろうな・・」と、はらはらしながら見つめていました。

「はい、第2回戦!ようい、はじめ!」

先生の元気な声が聞こえ、水しぶきが上がります。
その時、両手に貝殻を拾った女の子が黙ってO君の手に一つ、貝殻を乗せてすっと離れていきました。O君は、その貝殻をじっと見つめ、大切そうに握りました。

何も言わず、押し付けでもなく、本当に自然な行為でした。あまりに素敵すぎて、思わずそのひみつをあとで担任にばらしてしまった私です。

お家でも、こんな素敵なひみつを見つけてみてください。
もし、見つからなかったら、皆さんからひみつづくりをしてみてはいかがですか。
でも、悪口のひみつは、厳禁ですよ!
(谷塚おざわ幼稚園園長・小澤理加)

出典:団遊監修『子育ちによりそう① 幼稚園園長19人がつづる子どもの育ち57編』ホンブロック 2014.



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Takuro Shimada
■不動産営業を1年、社会調査の仕事を1年半、現在は中間支援のNPOスタッフ。■障害者介助の仕事と労働組合運動を細々と関わり続けている。■ヨチヨチ父(0歳児が1人)