プロダクト開発への「間接的な関わり方」の面白さと難しさ
今回は、ミドルマネジメントとしてのプロダクト開発への関わり方、その面白さと難しさについて記述してみたいと思います。
この記事が、同様にミドルマネジメントとしてのチャレンジ渦中の方や、プレイヤーとマネジメントの間で奮闘しているプロダクトマネージャーに届き、何かの役に立てば嬉しく思います。
この記事を書こうと思ったきっかけ:プレイヤーからミドルマネジメントへの役割変化
私は、昨年7月にプロダクトマネージャーとして10Xに入社しました。プロダクトマネジメント部内のマネージャーを兼任したり、全社横断での品質改善プロジェクトに参画したりもしましたが、主軸は一貫して「プレイヤーとしてのプロダクトマネージャー」にありました。
これまでのキャリアにおいても、主軸は同様に「プレイヤーとしてのプロダクトマネージャー」にありました。約9年間のプロダクトマネージャーキャリアはすべて「プレイヤーとして直接的にプロダクト開発に関わってきた」ものであると言えると思います。
そんな自分が、今年の10月から、プロダクトマネジメント部・デザイン部・データプロダクト部の3部を統括する「プロダクト本部」の本部長を務めることになりました。これまでの「プレイヤーとしての直接的な関与」から「ミドルマネジメントとしての間接的な関与」へと、プロダクト開発への関わり方を大きくシフトする必要がありました。
この差分は想像以上に大きいと感じているのですが、その大きなシフトのなかで具体的に何を意識しているのか、どういった面白さや難しさを感じているかなどを、思考の整理も兼ねて書いてみようと思いました。
※前提として、プロダクト開発におけるミドルマネジメントの位置付け・役割は組織によって大きく異なるものだと理解しています。また、個人の志向や経験・スキルによってもその関わり方には差分があって然るべきだと考えます。あくまで一組織・一個人の事例として捉えていただければと思います。
参考:10Xにおけるミドルマネジメントとは
10Xでは、今年9月にマネジメントポリシーが策定されました。その先頭で「人を動かし、ことを成す」という一節が掲げられています。
マネジメントポリシー策定の背景・詳細については以下記事をご覧ください。
ミドルマネジメントとしてのプロダクト開発への関わり方
「人を動かし、ことを成す」という一節は、「プレイヤーとしての直接的な関与」と「ミドルマネジメントとしての間接的な関与」の差分を端的に表現していると思います。
「人を動かし、ことを成す」ためには
「自分たちが成すべきことは何か」を定め、示す
そこに向かってメンバー・チームが自律的に動ける状態をつくる
が必要です。
自分たちが成すべきことは何かを定め、示す
自分が強く意識していることは、戦略と実行を一致させること・乖離させないことです。特に組織の規模が大きくなってきたり、事業・プロダクトが複雑になってきたりすると、この戦略と実行の一致においてミドルマネジメントが果たす役割は非常に大きくなると考えます。
経営陣の頭の中、経営・事業の方針を正しく理解する
それらを咀嚼し、チーム(私の場合は本部)のミッションやフォーカスを定義する
それらがチーム・メンバーに伝わるようにメッセージする
そこに向かってメンバー・チームが自律的に動ける状態をつくる
「人を動かす」といっても、事細かな指示・管理、マイクロマネジメントすることを意味していません。そのやり方は変化に弱く、スケールにも耐えられません。そうではなく、自律的に動ける状態を実現することが肝要です。
そして、これがまさに「ミドルマネジメントとしてプロダクト開発に間接的に関与する」ことそのものだと感じています。
プロダクト開発を取り巻くプロセス・プロトコル・マインド・意思決定などを定義・整備・浸透する
全体を俯瞰し、状況を把握する
ときに伴走・牽制・介入も活用しながら、全体の方向付けをする
また、これらを効果的に機能させるためには、ミドルマネジメント間の連携・協調が欠かせないと考えます。私の場合、プロダクトマネジメント部・デザイン部・データプロダクト部の各部長陣との連携を密にすることは強く意識をしています。
プレイヤーとしてのプロダクトマネージャーの場合、向き合うものは機能・顧客の課題・体験などでした。
一方、ミドルマネジメントの場合、ロードマップの策定プロセス、各チーム間やプロダクト - 事業間の情報連携・プロトコル、パートナーコミュニケーションなど、プロダクトやプロダクト開発を取り巻く周辺領域により目を向ける必要があります。これらを通じてメンバー・チーム、そして最終的にはプロダクトに影響力を及ぼすことが、「プロダクト開発に間接的に関与する」ことだと思っています。
ミドルマネジメントとして2ヶ月が経過したいま感じていること:難しさと面白さ
「プレイヤーとしての直接的な関与」から「ミドルマネジメントとしての間接的な関与」へとプロダクト開発への関わり方が大きく変わってから2ヶ月が経過しました。難しさも面白さも存分に味わっている中で、いま自分が感じていることを書き出してみます。
直接的に関与できない物足りなさ・何かが欠けている感覚
Product Leaders 2023の「世界最大のプロダクトコミュニティから学ぶPMのキャリアと育成」のセッションで、登壇者のEmily Tateさんが話されていた内容にとても共感を覚えました。
プロダクトを作る楽しさ、それが顧客への価値提供に繋がる喜びを存分に知っているだけに、そこから少し遠い場所にいる感覚は否めず。これはプレイヤーからマネージャーへの役割変化において、最初にぶつかる壁のような気がします。
自分がやるべきこと、自分にしかできないことがある
ミドルマネジメントの立場になってみて、この立場・役割でないとできないことがある、そしてそれはより大きなインパクトを実現する上で欠かせないことである、と感じています。前述した「直接的に関与できない物足りなさ・何かが欠けている感覚」がネガティブに働かないのは、この役割・この関わり方が明確に必要だと感じられているからだと思います。
プレイヤーの側面を否定しない・ある切り口ではプレイヤーであり続けて良い
「人を動かし、ことを成す」を意識しすぎるあまり、自分が手を動かす = ミドルマネジメントとして適切に振舞えていないのでは?と迷いが生じる瞬間もありましたが、いまは「どんなミドルマネジメントもある側面ではプレイヤーである」と割り切っています。重要なのは自分がやるべきことを適切に見極めることであり、そうと決めたことには全力で自分が取り組むことが必要です。
終わりに
ミドルマネジメントとしての挑戦はまだ始まったばかりです。うまくいくこともいかないこともあると思いますが、「人を動かし、ことを成す」を実現すべく、日々チャレンジしていきたいと思います。