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岡村発言、パチンコ、自粛警察

コロナでみんながイライラしている。ちょっとした外出はできるにせよ、GWだっていうのに自宅にいなきゃならないなんて、しんどいのはみんな同じだ。みんなが同じように苦しんでいるのに、自粛に従わない人や店を見つけては、罵詈雑言を浴びせたり、脅迫じみた張り紙をしたり…そんな人々=自粛警察が出現している。同調圧力に抵抗がない人ほど、率先して警察気取りなっちゃうのだから困ったもんだ。

さて、そんな折に炎上したのがナインティナイン岡村の発言だ。該当ラジオの発言を聞いた上で意訳すれば「コロナのおかげで、いつもより上玉の風俗嬢が抱けるぞ!」と。これに対して、女性の尊厳を損ねるだの、性的搾取を扇動するだのと大きな批判が巻き起こり、岡村は謝罪に追い込まれたのは周知の通り。

また、外出自粛が促されている状況下で不要不急の最たるものであるパチンコ屋に列を成す人々にテレビカメラが迫る。インタビューを受けたパチンコ好きのコメントが、良識的な市民の感情を逆撫でするものばかり…。子供も外出を我慢しているのに、なんて身勝手で無責任なのだ!と多くの人が憤慨している。

どちらも叩きたくなるのは十分に理解できる。けど、コロナがなければ、性風俗も笑いのネタにできるし、パチンコに行く人を誰も非難していないだろう。叩きやすいところから叩いて、溜飲を下げるだけのことだ。

そもそも性風俗産業は、古くから様々な形態で当たり前のように存在し続けてきた。我々は売買春に関しての倫理的な問題、法的な問題を一度たりとも真剣に論ずることもなく、“臭いものには蓋をしろ”と不問にしてきた。自分を含めてほとんどの男性が、少なくとも一度はお世話になったはずなのに、まるで自分は関係ないと言わんばかりである。どんな男も自分の妻や恋人や娘が風俗嬢になろうとしたら必死になって止めるだろう。そう、ほとんどの人が心の中ではセックスワーカーを軽蔑している。だから、あんな汚らわしい業種に税金を注ぎ込むな!と多くの良識的市民が憤慨する。

パチンコも同様だ。日本において賭博(ギャンブル)は厳しく規制され、競馬、競輪、競艇、オートレースはもちろん、宝くじやスポーツくじも公営だ。一方でカジノやバカラなどは闇賭博であり違法とされるが、なぜかパチンコだけは公営でなく、違法でもない。遊技・娯楽として認められ、約20兆円もの巨大産業になっている(ちなみに僕が仕事で関わるファッション産業は約10兆円にも満たない……)。多くのテレビ局はパチンコ大手のCMを大量に垂れ流してきて、その金で番組を作り、今となってはパチンコに群がる人々を反社会的存在として糾弾している。まさに、厚顔無恥とはこのことだ。

コロナがもたらした大きな変化が、奇しくもグレーな存在を浮かび上がらせ、“臭いもの”を可視化した。そして、自称・良識的な市民たちを自粛警察へと駆り立てる。根っからのヒコクミンである僕に言わせれば、風俗に行く人もパチンコに群がる人もどうでもいい。風俗でもパチンコでも勝手に行って、派手に感染して重症化すればいいだけだ。

性風俗産業やパチンコを必要悪として、グレーにしておいたことには歴史的な背景や理由要因がある。どうしてもその存在の是非を白黒はっきりさせたいのなら、議題に上げて法律を変える以外に手立てはない。オランダのように売春を合法化して、裏社会との関係を断ち切り、暴力と性感染症から女性を守るという方法もある。

でも、そうする人が結局少ないのは、多くの人間がグレーな社会でしか生きられないことを、身を持って知っているからだろう。自粛警察のほとんどはこうしたことが理解できない、童貞マインドの持ち主なのだ。



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