バズ中毒
TikTok用のショートドラマの脚本を細々とやっている。完全に業務委託として仕事をもらっているので、そのドラマに僕のクレジットは出ない。というかSNSプラットフォームにおけるショートドラマって、誰が監督とか脚本とか役者をしてるかなんて誰も気にしない。短いから気にしてる暇がないのだ。逆に言えば、有名どころを起用すればバズるというわけではない。
僕が書いているのはとあるシャンプーのPRアカウントに投稿されるショートドラマだ。僕がやるべきことといえば「匂い」に関するドラマを作り、うまいことその商品を紹介することだ。しかも1分で。しかもしかも、役者は男女4人だけに限られていて、セットは学校か電車か映画館の3つだけ。制約は確かに多いが、不自由から生まれる面白さもある。何より最初から選択肢が狭まっているから書きやすい。TikTokで、しかもショートドラマなんて自分とは縁がないと思っていたけど、やってみると結構楽しい。
これまで全部で15本くらい書いただろうか。自分が0から考えたものに、いろんな大人が動いて、映像として世に出るのは嬉しくもあるが、責任はやはり感じる。何より僕が担当したドラマはせいぜい数万再生で「バズ!」とまではいかなかった。クライアントからも「ショートドラマ仕立てはしばらくなしの方向で」と告げられた。良い経験をさせてもらったし、数字を出せていないから仕方ないとは思うが、最後に一本くらいはバズりを体感したかったものだ。
やれやれTikTokとも縁がなかったのか、なんて思いながら、最後の別れとして当該アカウントを久しぶりに覗いてみた。
あー、これもあれも僕が書いたやつだ。再生数やっぱ伸びてないね。1万にすらいってへんやん。ダメダメ、全然あかん。そら高校生とか大学生のツボなんかわからへんって。
アプリを閉じようとしたその時だった。
「117万」
ん?ん!?うそ!
バズっとる!紛れもなく僕が書いたものだ。すごい!
もちろん役者さんもカメラマンさんも上手いから、周りの人があってのことだけど、してやった感はある。万馬券を取った時の感覚に近い。
このnoteもそうだけれど、誰もが忙しいこの時代に「その人の貴重な何分かを僕に費やしてくれた」という事実が嬉しい。だから甘ったるい日記じゃダメなのだ。危うさを含まないショートドラマもダメ。付け焼き刃的な表現になるけど、ノーリスクじゃノーリターン。ノーミスのままではノーポイント。皆が道端に落ちている札束に群がるのなら、焼け野原に突っ込んで僅かに残る紙幣を集めたい。
もう一回バズりたい。今年の目標はTikTokで何回バズれるかに方向転換しよう。あの背筋が一瞬冷える感覚をもう一度味わいたい。バズりたい方、案件お待ちしております。