連絡せなあかんで
台風が来るといつも思い出すエピソードがある。7年ほど前、とある大阪の中小企業というか、レンタル布団の会社というか、株式会社白光に勤めていた頃の話だ。
僕は9月の土日と祝日を使って、入社3年目にして初めて3日続けて休んだ。その連休を使って僕は家族で北海道旅行に出かけた。
ちょうどその頃は台風が本州に急接近しており、神戸空港から千歳へは何とか逃げるようにして飛び立ちキャンセルを回避できた。しかし3日目はドンピシャで直撃してしまう。無事に大阪へ戻れるか危うい状況であった。
飛行機が飛ばず北海道に残されたら、会社に連絡とかしないといけないからめんどくさい。4連休にでもなってしまったら何を言われるか分からない。そもそも当時の会社には3連休はおろか、有給を消化することはタブーみたいな風潮があった。なにせ残業は30分単位でしか支払われず、19:00ちょうどとか19:30ちょうどにタイムカードを切ると社長直々に「警告」が入るような会社だ。だからみんな18:58とかにタイムカードを切って「よしよし間に合った」と満足していた。今考えると狂ってるな。
飛行機はなんとか無事に飛んでくれた。次の日からはまた現実が始まる。出社し、社長室へ顔を出して挨拶をする。
「おはようございます」
「おー、飛行機ちゃんと飛んだんやな」
「あ、おかげさまで」
「そういう時はな、ちゃんと連絡せなあかんで」
我が耳を疑った。
飛行機はちゃんと飛んだ→次の日は予定通り出社できる→事前に会社に連絡???
意味が分からない。なぜ休みの日までブラック企業のことを考えなければいけないのか。こんな社長がいるからワーカーズホリックという言葉が流行り、カロウシという言葉が世界共通語になってしまったのだ。
「はあ、、」
「北海道に台風が来てたことを、こっちは知ってたわけやから」
知らねえよお前の見聞は。あ、失礼、知りませんよそんなことは。連絡がない=無事に出社できる、と考えるのが普通だと思うが、どうだろう。こんなことをしている(していた)から悪徳企業体質から抜け出せない(抜け出せなかった)のではないだろうか。
そもそも、上司へのメールや電話が嫌で仕方ない。メールの送信ボタン、電話の発信を押すときに胃がムカムカして吐きそうになる。これは本当に連絡すべきことなのか。僕が連絡することで仕事の手が止まって、相手方に迷惑かけてしまわないだろうか。というかそもそも年上のおじさんとコミュニケーション取るのがめんどくさい。そういう意味では各種チャットサービスにある「リアクション機能」には本当に助けられている。返すべきか否か迷うメッセージにはあれ一撃で会話を終わらすことができるから。
古い会社ほど「電話でのコミュニケーション」にこだわる。電話ほど害悪なものはない。仕事の手は止まる、漢字が分からないからイメージが浮かんでこない、情報が整理できない、などなど。その布団屋の人たちは文字を読むのが嫌いだったのか、メールやチャット機能が導入されず、電話ばかりだった。事務所に入れば電話電話。車の中でも電話電話。特に葬儀会社からの問い合わせは多かったな。葬儀会社、特に個人でやっているところは本当に偉そうな人が多くて、電話を取るのが憂鬱で仕方なかった(ベルコとか大阪祭典とか大きいところはさすがに丁寧な方が多い)。
最後は愚痴みたいになってしまったが、台風で現状を報告するのは家族とか友人だけで十分です。ご安全に。
サポートしていただいたお金を使って何かしら体験し、ここに書きたいと思います。