優しさをやり切る
Netflixドラマ「First Love」を観て以来、「綺麗だと思う女優は?」と聞かれたら八木莉可子と答えるようにしている。これは老化だと思うのだが、最近はアイドルとか女優、アナウンサーの顔がみんな似たように見えてしまう。しかし彼女の顔は一度見たら忘れないタイプで、眉毛が凛々しいハッキリした美人である。
First Love以降、「綺麗だと思う女優は?」と聞かれることは結局なかったので、誰かに八木莉可子を推すことは未だにできていない。しかし彼女はついに昨日、情熱大陸への出演を果たし、その内容が素晴らしかったのでこのnoteで紹介させていただく。
八木莉可子はいわゆる憑依型だ(俳優はみんなそうかもしれないが)。オンとオフのスイッチがすごい。例えば舞台の稽古中は、悪く言えば「ガリ勉娘」のように、オタクっぽい雰囲気を醸し出しながら台詞の意味も追求する。それが本番になると一変し、いつもの華やかさオーラを全開にする。彼女にとってはカメラの前、観客の前が全てで、そこに生命を宿すのだ。美人なだけじゃなかった。
度肝を抜かれたのは、初詣か何かの密着でお守りを5個買い出したカットだ。なぜ5個も?と思っていると、スタッフたちにお守りを差し出す八木莉可子。どんだけええ子やねん。おっさん涙出るわ。
僕はひねくれた子どもだったので、こういう「優しい光景」を見ると「偽善者め!」と思っていた。プロ野球選手のオフの慈善活動もそうだ。高い金もらってるんだからやるのが普通だろと思っていた。でも大人になった今、分かる。偽善だとしても実際にそれをやり切ることがすごい。偽善でもいいじゃないか。
例えば養護学校側が、慈善活動に来る野球選手に払えるギャラなんてたかだか知れている。そもそも野球選手は元から金に困っていない。貴重なオフの一日を犠牲にしてまで夢を与える活動をしているのがすごいのだ。
八木莉可子がスタッフにお守りを配ったのは、純粋な善意か、それとも自己演習か。そんなことはどうだっていい。First Loveで僕を虜にした女優が、ちゃんと「優しさをやり切る人」でよかった。