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強みを伸ばせ。本当にそうか

「強みを伸ばすとか甘えるな。弱みを何度かしろ」とバイト先の上司に言われたことがある。一般的な仕事だとそうなのだろうか。

エンタメ界隈では「強みを伸ばせ、弱みを伸ばしても結果は出ない!」とよく言われる。「その人にしかない武器を伸ばすと、唯一無二になれる。器用貧乏になっても魅力ないよ」といったロジックだ。

じつに「令和感」があり耳に優しい。だが落とし穴もある。

散見されるのは「ぼく弱みを伸ばさなくていいんだ」といった免罪符としての言葉の使用だ。
「わたしゃ嫌なことはやらず生きていくねん!」と印籠のごとく差し出すパンクスが一定数いる。もちろん彼らは皆27歳までに死ぬため、それはそれでスッキリした人生にも感じる。

バンドマンのような「芸事で身を立てよう」なんて男たちは「一攫千金!マジメに地道に頑張るなんてゴメンだぜ」といった性根であることが多い。

一昔前に「付き合っちゃいけない3B!」という女の子向けのパートナーフィルタリング啓発フレーズがあった。理由は「美容師・バーテンダー・バンドマンはモテるわりに貧乏でだらしないから選ぶなよ」といったものだ。

美容師とバーテンダーの人間性はよく知らないが、たしかに我々バンドマンには「一日ずつ少しずつがんばることが成果をもたらす」といった世界観が著しく欠落している。
個人差はあるし、積み重ねられるバンドマンもいるのだろう。だけど自分自身がバンドマンならば油断しないほうがいい。その要素のタネが眠っているのは間違いない。

油断時に「弱みは放置で!強みを伸ばしていこう!」などといった甘ったれやすいアドバイスは毒になる。怠け者からしたらじつに悪用しやすい。

特に我々ボーカルの怠けっぷりさは顕著であり、「嗚呼…曲が降りてこない。だから納期は守れませんでした。でも俺の魅力ってたまに降りてくる名曲だからさ」などと聞かされたメンバー、関係者の方々は多いことだろう。

僕も「人の本性は修羅。この現世こそ地獄🔥」といった性悪説論者ではないのだが、自分自身について振り返ると「強みを伸ばすぞ」なんて幼稚園向けの考え方で事態が好転したためしがないのだ。

何より世の中に散らばる「強みを活かせ。弱みを伸ばそうとすんな」という言葉の「弱み」は「150kmが投げられない、高い声が出ない、速く弾けない、走れない」といった個人技的な話だ。怠け者の若者はここがそもそも理解できないのだ。というか捻じ曲げて捉える。

どう曲解するかというと彼らは「時間が守れない、自制できない、面倒ごとは先延ばし、嫌なことがあると逃亡する」みたいな社会規範力の欠如を「俺の弱みだぜ」と捉えてしまう。こんなものは弱みでもなんでもない。

逆説的なのだけど「弱みを整えると強みを見てもらえる」ということがある。
150kmは無理でも120kmぐらいは投げられないと何もできない世界がある。ある程度は高く歌えたないと、ある程度は速く走れないと、速く弾けないと、話にならないことがある。

日々採用を行なっているが、これも似ている。

「優秀な人材を雇うぞ」なんて考えない。
「入れたらマズイっぽいやつをはじく」と考える。

そのひとが素晴らしい能力を持っているかなんて分からないし、仕事の適性なんてシチュエーションごとに変わる。やってみないとわからない。だけど「ヤバイやつ」がもたらす毒性は大きなダメージを負う。

そして面接時に対峙しても「優秀かどうか」なんて分からない。でも「ヤバそう」とは感じる。これは誰だってある察知能力だ。ヤバイかヤバくないかは証明できないが、「ヤバそう」というのは感知する。

言いわけっぽい話し方は他責思考の気が強いし、体型が良くないと自制心、自尊心が危ういんだろうし、表情には性格が張り付いている。
マッチングアプリの攻略法みたいだけど、ヤバイ人間はそれなりに東京にウジャウジャいるので、スキだらけに生きることもデンジャラスだ。

組織も個人同様に「強みを伸ばす」よりも「弱みを整える」なのかもしれない。これは人口が飽和している東京の考え方すぎるのかもしれない。

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takuro(juJoe)
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