離しなはれや。
そういえば、そんな奴おったな。
昔、こんな奴がおってな。
大昔からおんなじことが言われてる。
大昔から気にしてる人がおったということ。
気にしなかった人と気にすることを止めなはれ、言うた
のみが、「昔な、、、」と人々の話題にのぼり、
いやいやそんなことはない、後世に残る何かを!と
息巻いてやっきになった人は、忘れ去られる。
思い出されることもない。というか記録もないから
おったのかすら怪しい。おらんかもしれん、そもそも。
「飯食うて屁ぇこいて寝る。」
高校教諭、俳人であった父の口から飛び出した
このなんともええ加減で軽妙なフレーズが忘れられない。
難しいこと考えなや。
考えても分からへんし、あんた、そんなに
勉強もしてへんし、いろいろ見てもおらんやろ。
知った口きいてんと、早よ・・
「飯食うて屁ぇこいて寝なはれ」
漏れ聞くところの話では、
愚痴百篇、不満放題になってもおかしくない
ような境遇、環境、そしてこの息子を持ったのに、
全然言わへん。言うてくれへん、とも思えるくらい
言わない。
なんでなんやろ?
どうしてなんやろ?
と思うけれど、本人の口から
出てけぇへん限り、とやく言うもんではない、気がする。
離しなはれ。
どうしょうもないことはある。
風は吹く。夜は暗い。冬は寒い。屁はくさい。腹は減る。
怒っても嘆いてもしゃーない。
そういうもんや、思って
「飯食うて屁ぇこいて寝よ」