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冒険する組織のつくりかた京都イベント、主催プロセスでの学び

この内容はポッドキャスト「シゲさんの愉快な仕事」でも話しています。


出版記念イベント主催の「衝動」


2025年2月27日、京都Questionで安斎勇樹さんの「冒険する組織の作り方」の出版記念トークイベント主催。おかげさまで全国21都道府県から冒険の仲間が集まっていただき、いろんな共同体に属する人が合流する熱気溢れる会となりました。

この記事では主催側ならではの裏側のプロセスの学びを中心に書いてみたいと思います。

交流会では安斎さんといつからお付き合いがあるんですか?とよく聞かれました。考えてみるとまだ1年も経っていないんですよね。専門としているTOC(制約条件の理論)で「答えよりも問いだ!」と言われ始めていた流れを受けて研究した「問いのデザイン」から安斎さんに注目し始めて、色んなコンテンツを読み漁っていたのが約1年前でした。

特に私の大きな衝動を目覚めさせるきっかけとなったのが去年の6月頃のCULTIBASEの会員サイトです。ここには対談や講演の動画が数百本あって、これまで有料だったのを無料で公開されたときに完全にハマってしまいました。

私も以前、有料会員制を手放した経験があったことも大きく心が動いた要因でしょう。その前には大きな葛藤が数年間ありました。

MIMIGURIさんは有料会員制をスパッと手放して、手放したことが「人類への資産の開放」とユーザー側に表現されていました。これを手放す前にはもちろん大きな葛藤があったことと思いますが、そこをしっかり対話して意味づけし、支持されていることに私と大きな違いを感じ、それでこそ大きな未来の可能性を感じたのです。

一日動画を3本くらい続けて見て、どんどん自らにインストールしていった感じです。映画「マトリックス」で、バイクの運転やヘリコプターの操縦を数秒で頭にインストールするシーンがありますが、まさにそんな感覚でした。とにかく見まくって、読み漁って、できるだけ早くインストールしたいという思いで学んでいました。

でも私の自己パターンとしては、実際に会った人の情報でないと信頼できないんですよね。会ってこの人のようになれればいいなと感じた人からは、すごく学べます。

そこで「会いに行こう」と思い立ち、安斎さんが大阪で行った「チームレジリエンス」の出版記念講演会に参加したのが最初の出会いでした。

その講演会ではSlidoというツールを使った質疑応答が印象的でした。安斎さんはVoicyでよく「質疑応答の時間がモヤモヤする」と話されています。

「質問ありませんか?」と聞いて会場がシーンとなり、誰かを指名して無理やり質問を考えさせるような時間が苦手だと。このSlidoを使うと、質問をリアルタイムで集めて選びながら答えられるので、とても画期的だと感じました。

その後も東京の蔦屋書店や静岡など、いくつかの講演会に足を運び、毎回最初に挨拶して自己紹介をするようにしていました。京都に問いにぴったりのQuestionという施設があるから、いつか「問いのデザイン」や「パラドックス思考」の講演会を企画したいとお伝えしていました。

そんな中、「冒険する組織の作り方」が出版されました。イベントの冒頭でも話しましたが、「商売は戦争なのか?」という25年のクエスチョンを持っていた私には長年の扉が開く!ような感じがして、ぜひ出版記念講演会をやらせてくださいとお願いしました。

支えてくれた有志のお陰で孤軍奮闘から脱する


さて安斎さんを講演に呼ぶには?いろいろ条件的な心配をするのですが、Voicyで「100冊売れれば」という条件を言ってくださったので、まず100冊購入してから人を集めるという、リスクを覚悟する形でやりました。

他の会場では書店と連携して書籍販売のリスクを軽減していることが多かったんですが、そこに繋がりのない私は「冒険する組織の作り方」は出版後に品切れになるかもしれないタイミングがあるということで、まず100冊確保することが大事だと考えました。

そこから興味のある方々に声をかけていきましたが、大きな転機となったのが高知への訪問でした。

高知では「こうち冒険がっかい」というコミュニティの立ち上げと同時に出版記念トークイベントが開催されていて、難波さんという方が音頭を取られていました。その発信を見て「なんじゃこの高知の熱さは」と感じたんです。高知は以前EQ(ネットショップ)の勉強会をやっていた時に初期の頃からとても熱い地域だったのですがそんな風土があるのでしょうか。

今回は教育関係者が多く、愛媛県などからも参加者が来ていて、席もすぐ満席になる勢いだったので、「これは熱いな」と思い、私も高知に行ってみました。

高知のイベントは仕掛けからして全然違いました。会場に入るとまず「こうち冒険がっかい」の名刺が入ったカードを渡され、メンバー感がありました。中には地図があって「どこから来ましたか?」とマッピングするコーナーがあり、ステージには大きなドラクエの宝箱(お手製!)が置いてありました。

司会の難波さんのファシリテーションも素晴らしく、参加者がノリノリで聞いていました。講演の横でおじゃこさんの素晴らしいファシグラもありました。

安斎さんと参加者の1on1でのアドバイスセッションもあり、本に書かれているCCM(クリエイティブ・カルテ・モチベーションモデル)を学校でどう使うかといった実践的なプレゼンもありました。

イベント中の参加者同士がつながる交流の仕掛けや、終了後の読書会、リアルの集まり(「ルイーダの酒場」と呼んでいました)も用意されていて、その後も読書会が続いているとのこと。すごく羨ましく思いました。

帰り道、滋賀県から一人で参加した私は孤軍奮闘感を感じて「これじゃ盛り上がらないし、その後も冒険の仲間は集まらないな」と感じました。そこで申込者の中で特に熱量の高かった知人にまず声をかけ、一緒にやりましょうと直接お願いして、事務局メンバーを少しずつ集めていきました。

大きかったのは安斎さん自身がTEDx Kyotoのオーガナイザーである三ツ木さんを紹介してくださったこと。

この方はクエスチョンの会場を何度も使ったことがあり、セッティングや写真・動画撮影、会場との折衝もお任せできて、とても心強い味方でした。

当日は6人のスタッフで受付や交流会のセッティングを行いました。孤軍奮闘感を脱することができ、支えてくれた本当にありがたい事務局の皆さんです。

イベント前から大きな学びが始まっている


イベント当日、まず安斎さんに質疑応答のやり方について相談しました。高知では宝箱に質問票を入れて安斎さんに取ってもらうスタイルだったので、同じようにやろうと思っていたのですが、安斎さんからは丁寧かつ鋭い返信がありました。

実はアナログの質問箱方式にはいくつかリスクがあると。開けた順番で答えていくため質問を文脈に沿って選べないことなど、4点ほど整理して書いてくださいました。

さすが「問いのデザイン」の著者です。こちらの大切にしていることを最大限引き出しながらも、メリット・デメリットをしっかり提示して「どう進めますか?」と問いかけてくれる、ここからすでに学びが始まっていると感じました。

結果、質疑応答は大阪形式のSlido方式にして、アナログでは参加者から安斎さんへのメッセージを京都らしい千代紙に書いてもらい、箱に入れてお渡しすることにしました。これは事務局メンバーの発案でした。

安斎さんは講演の1時間ほど前に来られ、まずサイン会を行いました。130冊のサインを20分ほどであっという間に終わらせる集中力に驚きました。

その後の場づくりへのこだわりもすごく徹底していて、照明のチェックや、実際に前後に座って確認し、椅子の配置を調整するなど、細部まで気を配っていました。これは「学習環境デザイン」の基本だと実感しました。

多彩な話題をつなぎ合わせ整合させる


講演会がスタートし、私がまず「なぜやるか?」ご挨拶。そこからのアイスブレイクがまた素晴らしい。

素性を明かさない自己紹介なんて?!ってことで場が一気に盛り上がります。本当にヤラレタ!レベルのさすがのファシリテーションです。


対談相手の塩瀬隆之先生との掛け合いも素晴らしかったです。明確に講演・対談を分離するのではなく、テーマごとに対談を挟むって感じで進められました。

塩瀬先生の「戦争をやったことないやつが戦略立てられるわけない」というスパッとした口調が痛快でいっぺんにファンになりました。一方で問いは深いんです。「ラスボスは何なんだろう?」我々は本当に何と戦っているのか、なぜ戦いたがるのか?と内省が深まる問いかけがありました。

最後のチェックアウトでは「平和の反対は何だろう?」という問いが投げかけられました。私たちは「戦争」と答えがちですが、本当にそうかと問い直され、「私たちは平和ということを本当は知らないかもしれない」というメッセージを感じました。

このように答えがない問いに対して、モヤモヤしながらも対話を重ね、軍事的世界観から抜け出し冒険する組織として自分たちが行く道を作っていくというストーリーが見事に整合されていました。

反省点としては、集まっていただいた事務局の皆さんのチームのポテンシャルを引き出せなかったことです。初めてのイベントで、初めての場所、初めての安斎さんの講演ということもあり、プログラムの対応に追われるうちに、事務局同士でもっと対話する時間が取れなかった。直前になればなるほど、どんどん進行イメージが出てくるので、そこにチームコミュニケーションの時間がついていけなかった感じです。

また、交流会集金の作業に忙しかったスタッフが、講演をゆっくり聞けなかったことも残念でした。

いろんなバックグラウンドやコミュニティに属している方々が一堂に会したことがとても嬉しく、もっと交流してほしかったのですが、なかなか混じり合わせる場作りに工夫ができず、課題を残しました。

それでも、塩瀬先生の大爆笑の乾杯や、安斎さんの和むトークで随分救われました。

そして「場のデザイン」へ


イベントの中で安斎さんと塩瀬先生が「問いのデザイン」の続編として「場のデザイン」を書くと宣言されました。塩瀬先生の言葉では場というテーマで書くことに「覚悟を決める」とのことで、会場の皆さんには証人になってください!という呼びかけで大きな拍手が起きました。

これからも人が生き生きする、チームのポテンシャルを発揮できる場づくりを研究、探究していきたいと思います。ぜひSNSでも「 #冒険する組織のつくりかた 」のハッシュタグで発信していただければと思います。安斎さんも皆さんの発信を楽しみにしています。

私自身もこの本を実践知として咀嚼していくために、オンライン読書会や組織を語る会を開催していく予定です。今朝も大分からの参加者さんと、イベントを振り返り本を眺めながら「自分たちの組織はどうだろう?」と対話しました。

この「冒険する組織の作り方」という本は読む本というだけでなく、対話のツールだと思います。ぜひ本を前に置いて、自分たちの組織に照らし合わせながら使っていただきたいと思います!

ここを仲間たちと冒険しつづける、はじまりの村にしていきたい。これをきっかけに読書会や組織探究会の機会を作って学びたい仲間は、ぜひ一緒に冒険しましょう!(現在京都読書会やオンライン勉強会企画中)

安斎さん、塩瀬先生はじめ、今回の場に関わっていただいた全ての方に深く感謝申し上げます。ありがとうございました!

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