【14】僕の体験した「途上国の人々との話し方」
突然ですが、みなさんメタファシリテーションなるものをご存知でしょうか。
国際協力界隈では必読本とすら言われているこの本、僕も2回くらい読みました。何について書かれているかというと、対人話法についてです。ザッというと「事実をひたすら積み重ねて、人の認識や意見を取り除き、真実をあぶり出す」といった感じでしょうか。
僕たちの会話は思い込みが大半を占めているため、事実が見逃されがち。事実が見逃されてしまうと、問題解決のために適切な介入ができない、みたいなところがこの本の問題意識かなと。
本のタイトルは「途上国の人々との話し方」ですが、人間というものは古今東西本質は変わらないようで、先進国途上国問わず有用なツールだと僕は思います。
このnoteでは基本的なこの会話ツールの考え方をシェアして、その上で僕が使って得た知見というか、経験を書きたいと思います。なにかご意見あれば伺えると嬉しいです。
人間の頭の中は「事実」「観念/考え」「感情/気持ち」
人間は現実を3つの要素に分けて捉えるらしいです。それは「事実」「観念/考え」「感情/気持ち」の3つ。
例えば、朝ごはんをテーマに質問を組み立てると、
①「今日朝ごはん何を食べた?」→事実
②「いつも朝ごはんに何を食べる?」→考え、観念
③「朝ごはんに何を食べるのが好き?」→感情、気持ち
のようになります。①は今日の朝食べたもの、たとえば僕は、今朝パンを食べました。②は、基本的にうちの朝ごはんはいつも朝はパンなのでこれもパンだと思います。③で言えば、今は遠すぎて涙しか出ませんが僕は味噌汁、ご飯、納豆の三点セットが好きです。
この中で現実に基づいて真実を言っているのは①だけです。最初に事実と書いてしまったのでそりゃそうだろと思うかもしれませんが、僕たちは日常会話の中で②と③すら真実と捉えてしまいがちです。
いつも朝ごはんに何を食べるかと聞かれたら、僕は最近3日連続でパンだったからそう答えるけれど、マンダジ(揚げパン)の日もあるし、チャパティ(厚めのクレープみたいなやつ)の日も確かにある。決して「いつも」朝ごはんにパンを食べているわけではない。
何が好きかと聞かれれば、僕は上記の日本食三点セットが好きだけど、今は距離的に食べられない。だから、たしかに好きではあるけど今は食べられない。
こうやって細かく分析する癖があれば、何が真実で何がそうでないかわかりそうだけれど、僕たちはこれらすべてを真実と捉えてしまいがちな気がする。
過去を掘り起こす
この事実を浮かび上がらせるには、「過去のことについて聞く」ことがまず一つ原則です。というのも、過去に起こったことは絶対に事実であり、未来のことは推測、つまり観念や感情を含むものになってしまいます。その上で、具体的なその過去のシュチュエーションを詳細に聞いていく、というのが僕の理解です。
これは実際に僕がこの島の学校の保健状況を保健の先生に聞き取り調査していてあった会話です。この日はColgateという会社から歯磨き粉と歯ブラシが学校に配られていて、その延長で「生理用ナプキンも配られている」という話になりました。いい感じの例になっているかと思います。
先生「学校では生理用ナプキンを定期的に配ってるんだよ」
僕「そうなんですね。先月も配ったんですか?」
先生「いや、先月は配ってないな」
僕「先々月はどうですか?」
先生「(少し考えて)..いや、配ってないな」
僕「3ヶ月前は?」
先生「配ってないな笑」
こんな感じで聞いたところ最後に配ったのは半年前だそう。定期的をどの範囲で捉えるのかにもよりますが、「生理用ナプキン配る」ことを考えたとき、半年に一回の配布って意味あるのでしょうか。
これ僕がメタファシリテーションを知っていたから「半年に一回」という事実を浮かび上がらせることができましたが、知らなかったら「ああそうか、定期的に配ってるんだな」程度の認識に終わっていたと思います。もし僕がメタファシリテーションを知らず、どこかの援助機関で働いていて、プロジェクトの実施権を握っていたりしたら大きな取り逃しをしていたところです。
教科書だと...
この「途上国の人々との話し方」、様々な事例とともに成功例を載せてあります。僕の会話もその成功例のようにうまくいっていれば、保健の先生に「あれ?定期的に配ってたと思ってたけど最後に配ったのはもう半年も前じゃん!なんとかしなきゃ!」みたいな気づきを促していたと思うんですが、その保健の先生に定期的にナプキンを配布するだけのコネや能力ががあったかというと、なかったと思うんですね。
後日半年ぶりに生理用ナプキンが配られるのも見たんですが、確か配られたナプキンにはsafaricom(ケニアのインターネット会社)の文字が書いてあったので、そこから慈善事業的に配られたものだったと思います。その保健の先生がsafaricomに対する交渉権だったり、そういうポジションにいるかといったら全くそうではない。彼はただの学校の先生に過ぎませんし。
ここでわかったのが、メタファシリテーションを使うときは相手がある程度変化を及ぼせる力を持っていることを前提としてコミュニケーションを取る相手を選ばないと、誰かを動かすことはできないということ。あと僕自身もコミュニケーションを取る相手に対して行動変容をうながすことを意識して質問を組み立てないといけませんね。
それを抜きにしても事実確認はすごい役に立つコミュニケーションの仕方だと思いますけども、対人援助ってコミュニケーションで相手をどう動かすかが重要だと思うので、この会話のあと目からウロコの気分でした。
まとめ
①問題解決の鍵は思い込みでなく事実から
②事実は過去からあぶり出す
③問題を見て現状を打破できるのは誰なのかを考える
アウトプットのために初めて使ったnoteでした。こういう使い方もありっすね。
ではでは
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