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【26】うそつきよわむし
昔から責任感が強いと言われる性格だった。母に。担任の先生に。友達に。
でもそれは違っていたと思う。僕は、臆病だっただけだ。
年を取るにつれて、人の言うことなんて大抵無責任なものなのだと思い始めるようになった。毎週ジムに通う、毎週何か勉強する、本を年間何冊読む。年の初めになって、皆が皆思い思いの抱負を語るけれど、その中で今も続いているのはどれくらいだろう。
僕は、人の言うことなんて大体行動とか継続に移らないまま終わっていくものだと思っていた。衝動で飛び出した言葉は、継続することを知らずにどこかへふわふわ行ってしまうものだと。
他称責任感の強い僕は、確かに責任感強いのかもなぁと周りの声を聞いて思いつつ、世の中の無責任さに気づいていった。そして自分が本当に成し遂げたいことは、言葉ではなくて行動に出るものだと悟った。口だけの人、いっぱいいるよなぁ。どうせ続かないのに、よく胸張って言えるよなぁ。なんて思いながら。
僕がこのnoteを毎日続けているのは、一度365日やると言ったらそれを曲げて「無責任な人」になりたくないからなのかもしれない。できもしないことは言わない。noteを毎日書くくらいなら、僕にもできそうだ。
今日、病院と警察のところへ行ってきた。病院へはHIVの治療を受けている人が今どれくらいいるかを調べるため、警察のところへは、ケビンの家の隣に飲み屋が開かれてうるさいしマリファナ臭いし迷惑しているという通報をするためだった。
ケビンはよく僕にプレッシャーをかけてくる。本人は無意識なつもりなのだろうか。「もしプロジェクトを始められなかったら、先生たちからの信頼を失ってしまう」分かってる。「一度やるといったことをまた変えてしまったら、彼らをもてあそんでるみたいだろう」分かってるって。「もしプロジェクトのお金を確保できなかったら…」「ケビン、分かってるよ、全部分かってる。もうそれ以上言わないでくれ。」
我慢できずに、こんなことを口走った。「そういう言葉がすごくプレッシャーなんだ」とも。ケビンはそれを聞いて、オーケーと言ってスマホをいじり始めた。
それでも、お金がもし集まらなかった時の話をそのあとにしてきた。どうする。とケビンは僕に聞いてくる。
正直、150万も集められる気なんてさらさらしなかった。始めることすら怖かった。自分たちのこの手法が正しいかもわからない。「なんでこんなことやってるんだ」なんて、この道のプロが見に来たら言われるかもしれない。たくさんの人に見られて、叩かれるかもしれない。
僕は、「集まった金額を見て、プレステカフェと放課後授業に振り分ける金額を考えるしかない」と答えた。ケビンは納得のいかない顔でイエスといい、しばらく黙った。
思えば僕は、ずっと弱気なままだった。ケビンにいつも説明するときは、「お金がすべて集まるとは限らないから。」「正直、150万も集まるとは思えない。」noteに何か書く時だって、「僕はNGOでもNPOでもないから難しい。」
それは全部きっと正しい。お金はすべて集まるとは限らない。150万だって個人で集めるには途方もない金額だ。でも、僕はいまどうしてこんなことをしているんだろうと、いつものように考え直す。
ケビンのような人を、チャンスが回って来ないままで終わらせたくないから。このまま彼が死ぬまでHIV感染率の高い島としてこの島が知られ続けるなんて、彼は望んじゃいないだろうし、僕は彼のHIVゼロ世代を創るというお手伝いがしたい。僕が彼のチャンスになりたい。
だけど、自分にできそうにないことは言えない。だって、無責任だから。言ったことなら責任もってやり遂げないといけないから。だから僕はいつも「お金が集まるとは限らない」と予防線を張っていた。
そんなことを言い続けていたら、背中を押したいはずの人が、こっちを向いて言い始めた。「大丈夫なのか?」「お金が集まらなかったら、どうするんだ。」
そんなことをぼやっと、昼ご飯を食べ終えてコーラを飲みながら考えていた。僕は、僕の仕事は何なんだろう。お金を引っ張ってくること?彼のやりたいことをプロジェクトとして整えること?どれもなにか、しっくりこなかった。
自分にできることだけを言おうとしてきた人生だった。できそうにもないことを言って、それができなくて無責任だと自分で自分を思いたくなかったのかもしれない。だから弱気な言葉ばかりがいつも出てしまう。150万なんて。
そんなことを思いながらFacebookを開くと、ケビンの投稿が目に入った。僕の名前はないけど、この文章のyourはきっと、僕だろう。いつもありがとうなんて、嬉しいなんて言ってくれないから、少し驚きながらこれを見ていた。そして、やっと気づいた。
「ここまで長い道のりだったけど、俺たちはこの子たちが最高のものを享受できるように身を燃やして頑張らないとな。俺は助けてもらっていることが本当に嬉しいよ。君はこんなにも活気に溢れていて、この島の若者を変えることを叶えようとしてくれているんだから。」
僕はここで無責任にならないと、嘘でもいいから胸を張って言わないと、ケビンが安心してプロジェクトを前に進められないじゃないか。弱気になっていていいのか。自分の仕事は、彼が思いっきりやりたいことをできるようにしてあげて、彼の夢をかなえるお手伝いをすることじゃなかったか。心配させてどうするんだ。
「ケビン、クラウドファンディング、成し遂げるよ。絶対。」
たどたどしかったと思う。コーラを飲み終えて、彼が待っていた場所で落ち合って、これまでの自分を切り捨てるような弱弱しい声で言った。
「今日はお金の保障ができないなんていってごめんね。お金は俺がなんとかするから、気にしないで。また明日。」
大学受験の時、お金が無いから志望校にいけないと母に言われた僕が、言ってほしかったのはこの言葉だった。そんなことを少し思った。
まだ言うのは少し怖かったけど、22年の人生に胸を張って別れを告げるような覚悟でそういってお別れをした。ケビンは笑顔だった。
もう弱気な言葉は言わない。彼に絶対と言ったから、僕は自分ができる最大限を尽くして150万をかき集める。何が何でも。
まだこんなことをnoteに書くのが少し怖い。でも、自分にできそうなことを言ってばかりいたら、いつまでたっても強くなれないから、僕は無責任になることを覚悟で、何回でもここに書く。
僕は、150万を集める。ケビンにはもう、心配をかけない。
クラウドファンディングご協力のお願い
現在クラウドファンディングが公開中です!こんなビビリ弱虫の僕でも、ケビンと一緒にこの地域を変えたいと本当に思っています。ご協力いただけないでしょうか!
僕の住んでいる島は、HIV罹患率が非常に高いため、HIVテスト受診促進のためのプロジェクトと、学校に介入して性教育や、HIV/AIDSの授業を行うことで、若者のHIV感染を防ぐことを目的としています。詳細は下記のリンクから!もしプロジェクトに共感していただければ、1500円からサポートできますのでよろしくお願いします!
https://camp-fire.jp/projects/view/221387
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![熊谷拓己](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/32777826/profile_92c079dd9e81821339550f6762ecdd96.jpg?width=600&crop=1:1,smart)