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カミナシの目指す未来像に人事制度はどう向き合うか?「透明性」と「公平性」を大事にして制度アップデートした話

こんにちは。カミナシでHRをしている沖です。
おかげさまで、カミナシも順調に成長し、組織も大きくなり一緒に働くメンバーも増えています。その中で、昨年度の下期に行った人事制度改定をテーマにnoteを書きます。
改定に至った背景や内容、そして設計において苦労した点についても触れていきたいと思います。
人事制度の担当になって約1年ちょっとの奮闘記を見ていただき、同じく制度設計を担当されている方やこれからチャレンジされる方の一つのケースとして参考となったら幸いです。

人事制度設計/運用担当者として大事にしていること

制度そのもののあり方や運用、アップデートにおけるポイントは「透明性」「公平性」のバランスだと思っており、この2点は下記のように整理しています。

透明性
等級に求められる要件や評価などにおける基準やプロセスが明確で、誰もが理解できる状態
これらの情報が公開/共有され、アクセスできる状態

公平性
特定の人や組織/職種が不当に優遇・不利にならない状態
個々の努力や成果が正当に評価されていること

つまり、誰もが「基準がわかり、納得できる」と感じられる仕組みです。
この2点のどちらか、または片方が大きく欠けてしまうと、ルールやそれを用いる組織への信頼を維持できず、安心して働ける環境と感じにくい要因となってしまうと考えています。
そのため、既存の制度が今の組織、未来の組織で運用される中でこの2つの要素が欠けていないかを定期的に見直し、必要に応じて適宜アップデートし続けていくことが制度設計/運用担当者として大事なことだと思います。

ちなみに、カミナシの人事制度におけるスタンスや考え方については下記のように整理しています。

等級制度
会社としてメンバーに期待する役割やふるまいが織り込まれ、浸透・促進される構造になっている
・どの職種や等級においても、目標設定や評価の際の指針として適切に機能している
成長ステップが明確になり、キャリアパスが描けるようなものになっている

評価制度
評価サイクルを通して、メンバーの成長が促される仕組みになっている
・待遇(報酬・登用・配置 etc.)の検討に関する適切なインプットとなる情報が担保されている
・評価対象・評価基準(観点)・評価ロジックが明確で、評価結果との因果関係が明確な仕組みになっている
・評価の甘辛や恣意性が極力排除され、評価の客観性やプロセスの公平性が担保される仕組みになっている

報酬制度
・等級や職種ごとの特性や市場水準を反映した競争力のある報酬体系になっている
環境の変化や業績の上下に対応できる柔軟性を担保した仕組みになっている
目指す組織のコンセプトを起点に、非金銭報酬も含めトータルでデザインされた報酬制度になっている

それぞれの制度に対するスタンスにも、太字にしている部分は担当者として大事にしている「透明性」と「公平性」の要素が入っていることがわかります。
前置きが長くなってしまいましたが、評価制度のアップデートの内容と背景などを紹介していきます。
※報酬制度のアップデートも並行して行いましたが、ボリュームが多くなりすぎてしまったので、別の機会で紹介したいと思います。

実施した評価制度のアップデートについて

評価制度はカミナシメンバーの努力や成長をきちんと反映できるように曖昧性を排除し、「透明性」「公平性」の担保につながるようなアップデートを2つ行いました。

1. 評価スコアの調整

カミナシのこれまでの評価制度では評価のスコアリングは6段階となっており、もともと細かすぎない段数となっていました。ただ、評価サイクルを回す中で、特定のスコアの基準が広くメンバーの成長段階や期待に違いがあるにも関わらず、付与されるスコアが一律となっていましたことがわかり、修正の検討を始めました。
具体的には、あるスコアの要件が「期待に対して一部満たしていない」という表現となっており、一定の成果基準や期待に対して「もう少しで届く」レベルと「不足がある」レベルの区別ができていないということが判明しました。
このまま運用を進めると、被評価者、評価者の両者が評価に対するレベルの区分が曖昧になり、評価への不満やモチベーションの低下が生じる可能性がありました。

この課題に対しては連動する報酬部分との関係性を整理しながら、いくつかの解決のオプションを検討しました。
例えば下記のようなオプションです。それぞれPros/Consを整理しながらリードオプションを決めていきます。

■検討したオプション例
A, スコアの要件(表現)の変更

B, 評価スコアを分解し、段数を変更する
C, スコアの要件は変更せず、連動する報酬部分でメンバー個別に調整する

Aのオプションは何度も要件を考えましたが、解釈の幅を分けられるような表現ができず、曖昧性の排除が叶わず、選択肢から外しました。
Cのオプションは連動する報酬部分の調整をどの基準でどの程度行われるのかがブラックボックス化してしまい、透明性と公平性が担保できないことから選択肢から外しました。
こういったいろいろな観点からオプションを検討する中で、Bの「評価スコアを分解し、段数を変更する」をリードオプションとし、具体的な内容を詰めていきました。

イメージ図:
一部のスコアで発生していた基準の広すぎるスコアを分解し、最終的には6→7段階に変更

最終的には「一部満たしていない」というスコアを「期待をほぼ満たせている」と「期待を下回っている」の2つに分解し、更にその下の評価スコアの要件を変更し、「期待を大きく下回っている」という形にしました。
ただ、これだけでは「ほぼ」「大きく」とはどのくらいの程度を示すのか?に不透明さが残っています。そのため、もう一段階この曖昧性を排除するために、達成の基準を設けることにしました。

2. 達成基準の明確化

これまでは各評価スコアのディスクリプションのみが記載されており、どの基準で評価(または自己評価)するべきかが曖昧で評価者と被評価者の間でズレが生じる可能性がありました。
先ほど出てきたように、評価スコアの要件にある「ほぼ」「大きく」といったワードに対して被評価者と評価者どちらかの認識がズレていると、その達成基準も同時にズレてしまいます。
もちろん、目標設定時にはこういったズレがないように評価者と評価者ですり合わせは行いますが、どうしても曖昧性の高い表現だけで基準をすり合わせようとすると両者間のズレは発生しやすく、またそのすり合わせの工数や負担は大きくなってしまいます。これは評価期末の振り返りでも同じことが発生します。
そのため、両者共通のものさしを一つ増やすことで、なるべくスムーズに両者の目線を合わせられるようになることを狙って各評価スコアに照らした達成基準を数値(達成率)で設定しました。


ここで新たな悩みのタネが出てきます
どのスコアに対してどの数値(達成率)を設定するのか?です


ここはHRの視点だけで勝手に決めると実際の運用と乖離してしまうリスクが高まります。
制度設計や運用担当として一番怖いのが、制度リリースしたものの、気づけば現場で使われない、または使いにくいものになっていることだと思います。
評価期に違和感なく活用されるかという観点も踏まえながら内容を決めていく必要があるため、過去の評価スコアの分布で傾向を掴んだり、評価者コメントの定量面と定性面の評価ポイントを整理しながら、各評価スコアの要件と数値(達成率)のバランスを調整し、設定しました。

評価制度のアップデートのサマリ

実は前回の評価タイミングで、この新しい段数や数値(達成率)での評価を試行したところ、「これまでよりも評価が適切に行えそう」「評価しやすくなった」という声が寄せられ、課題解決への手応えを感じています。

新しい評価スコアを使った評価期がまもなく始まるので、改めて検証をしながら必要に応じてチューニングしていきたいと思います。

制度アップデートの振り返り

課題を正しく把握しその解決オプションを検討する。その各オプションのPros/Consを洗い出し、リードオプションを決める。そのリードオプションは実際の運用にきちんと乗せられるものになっているのか?をチェックしながらブラッシュアップするというサイクルを回し続けることで大事にしている「透明性」「公平性」の担保につながるということを学ばせてもらいました。
(実際にはリードオプションを決めたが実際の運用と合致しないリスクが見つかり、またオプションを検討し直すみたいなことも沢山ありました…笑)

今回紹介した評価制度アップデートの検討にあたっては、専門書だけでなく、社外の人事の方へのヒアリングもさせていただき、様々な企業の制度事例も参考にしました。
また、経営陣や各部門のマネージャーやメンバーとも検討を重ね、現場で求められる能力や成果を具体的に評価できる基準作りに注力しました。
各アップデートの内容はシンプルに映るものですが、その過程には様々な観点や情報を得るためにカミナシのバリューである「現場ドリブン」を地道に体現できた結果だと思っています。

さいごに

冒頭にも記載しましたが、今の組織、未来の組織で必要となるアップデートし続けていけるよう、今後も社内外の情報をアンテナ高くキャッチしながらカミナシメンバーの才能が解き放たれる環境づくりをしていきます。
アップデートの内容自体はとてもシンプルだったと思いますが、その過程を紹介できて良かったです。

今後もカミナシの制度設計奮闘記を定期的に発信していくつもりですので、ぜひこちらの発信へのスキ、フォロー、密かに応援していただけると嬉しいです!
最後まで読んでいただきありがとうございました!

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