成功するギバー、奪われるギバー
アダム・グラントの『GIVE&TAKE』を読み終えたので、メモ的にアウトプットしておきたい。
著者はペンシルベニア大学ウォートン校教授。1981年生。「世界でもっとも優秀な40歳以下の教授40人」にも選ばれている。
本書では、成功するためには人とどのようにギブ・アンド・テイクしていくべきかということが、豊富な事例を通してさまざまな角度から検証されており、とても気づきの多い一冊であった。
結論から言うと、人はテイク(奪う)するよりもギブ(与える)することの方が大切で、ギブすることで成功に近づける、ということなのだが、そんな単純な話ではなく、成功者がどのようにギブしているのかということを深堀りしている一冊といえる。
まず、前提として、人間には、ギバー、テイカー、マッチャーの3つのタイプがあるという。
ギバーは、受け取る以上に与えようとする人。
テイカーは、与えるよりも受け取ろうとする人。
マッチャーは、バランスを大事にし、ギブとテイクを五分五分に保つ人。
それぞれどのぐらいの割合でいるのかというと、マッチャーが最も多く、全体の55%。次いでギバーが25%、テイカーが20%となっている。また、自分が3つのタイプのどれに属するかというのは、シチュエーションによって変化するものらしい。
多くの職種を調査したところによると、成功から最も遠いのは、ギバーであった。
えっ?という感じである。1位ではないのだ。理由としては、「ほかの人の仕事を手伝っているせいで自分の仕事を終えられない」とか、「テストで不利になることもかえりみずに仲間の勉強を手伝ってやる」など、思いやりがあって、自己犠牲的な分、テイカーに搾取されてしまうのである。
次に成功しないのがテイカー。テイカーでも成功することは可能であるが、他人を蹴落としている分、妬まれやすい。人間の大半はマッチャーなので、仕返しを受け、その成功が波及していかない。
では、一番成功するタイプはマッチャーなのか?といことになるが、それも違っている、最も成功するのもまたギバーなのであった。これは、著者自身にとっても驚きの調査結果だったらしい。
つまりギバーには最も成功するタイプと、最も成功しないタイプがいるということ。ここが本書の核心部分となっているのだが、成功するギバーが成功しないギバーとなにが違うのか、単なるお人好しで終わらないためにはどうするべきなのか、そのあたりのことが多くの事例を通して検証されているので、整理してみたい。
①【強いつながりと弱いつながり】
豊かな人脈を作るためには、「強いつながり」と「弱いつながり」のどちらが大切なのか。
ここでいう「強いつながり」は親友や同僚のこと、「弱いつながり」はちょっとした知り合いのことを指す。
本書の調査によると、「弱いつながり」を大切にしている人のほうが仕事で成功しているという結果が出た。
これまた意外である。というか逆と思っていた。
たとえば、「強いつながり」を恋人として考えると、関係が近すぎて衝突してしまう恐れがある。また、同じネットワークの中で交流するので広がりがない。
対して、「弱いつながり」は、ぶつかることもなく、異なるネットワークにより開かれていて、新しいきっかけを発見しやすい。何年も会っていないような「休眠状態」の友人であっても、音信不通の間にそれぞれが新しいアイデアやものの考え方を育てていて、それを共有することもできるという強みもある。
テイカーやマッチャーが「強いつながり」を大事にしているのに対して、ギバーは「弱いつながり」を大事にしている傾向がある。
②【ゆるいコミュニケーション】
テイカーとギバーはコミュニケーションをどのようにとっているのか。
〈テイカー〉
・自分が他の人より優れていて、別格の存在と考えている。他人に頼りすぎると、守りが甘くなってライバルに潰されると思っている。
・強気な話し方をする。弱みをさらけ出せば、自分の優位と権限を危うくすることになると心配する。
〈ギバー〉
・頼り合うことが弱さとは考えない。頼り合うことは強さの源であり、多くの人々のスキルを、より大きな利益のために活用する手段と考える。
・ゆるい話し方をする。不明な点があれば明らかにし、人のアドバイスがあれば喜んで受け入れる。弱点を隠さず、弱さをさらけ出し、拒絶や障害や躊躇をうまく利用して会話を進めていく。
テイカーは人に頼らず、強気の話し方をするのに対して、ギバーはその逆で、頼り合うことを強さと考え、ゆるい話し方をする。これだけみると、テイカーは孤独だなと思う。あきらかにギバーの方が他者を巻き込み、シナジーを生み出していけると思う。
③【ギバーが気をつけるべきこと】
成功できないギバーは自己犠牲的で、自分自身のニーズを顧みない。他人を助けているうちに自分自身を傷つけてしまう。テイカーが利己的で、成功できないギバーが自己犠牲的なら、成功するギバーは他者志向的。他者志向になるということは、受け取るよりも多く与えても、けっして自分の利益は見失わない。
この「他者志向的」という言葉がちょっと分かりにくいのだが、他者の利益を重要視しながらも、自分の利益も大切にするということ、要するにウィンウィンを考えよ、ということなのだろう。単なる自己犠牲的ギバーにならず、ウィンウィンを考えたギバーになることで、成功に近づけるということだ。
④【まとめ】
・仕事で成功する上で、必ずしも「強いつながり」による「絆」を目指す必要はない。成功者は「弱いつながり」を大事にしている。
・人にアドバイスを求めることを、弱さと考えない。教えを乞うことで、相手への信頼や、その洞察力や専門知識に敬意をもっていることを示せる。
・相手の利益を考えつつも、自分自身の利益も大事にする。自己犠牲的ではなく、ウィンウィンを意識したギバーを目指す。
最後までお読みいただきありがとうございました。