Book Review『天才を殺す凡人』~「共感性」の強みと危うさ
北野唯我さんの著書『天才を殺す凡人』を読んだ。
これまで「才能」ということについて、真剣に考えてこなかったが、考えるきっかけを与えてくれた1冊である。
気づきのあったところを簡単にアウトプットしておきたい。
「才能」…つまり人間の強みとは何だろうか?
本書では、人の才能には「天才」「秀才」「凡人」の3種類があると定義されている。
【天才】独創的な考えや着眼点をもち、人々が思いつかないプロセスで物事を進められる人
【秀才】論理的に物事を考え、システムや数字、秩序を大事にし、堅実に薦められる人
【凡人】感情やその場の空気を敏感に読み、相手の反応を予測しながら動ける人
「天才」は『創造性』という軸で物事を評価する。
「秀才」は『再現性』、「凡人」は『共感性』で評価するのだという。
本書の良い点は、3つの才能に優劣をつけていないところだ。それぞれの才能の特性や戦い方をストーリー仕立てでわかりやすく描いている。
そのため、根っからの凡人タイプである私も勇気づけられた言葉が多くあった。
ただ、「強み」を知るとともに、気をつけなければならない点もある。
タイトルのとおり、凡人は天才を殺してしまうこともあるからだ。
本書にあった「凡人はオセロ」という言葉。そのとおりだなと思う。
成果を出す前の天才には恐ろしく冷酷で、成果を出した途端に手のひらを返す。その逆もしかりで、昨今の芸能界の炎上などをみても、凡人の「共感性」の力はすごい。簡単にひとりの人間を再起不能に追い込んでしまうこともあるのだ。
「多数決」が天才を殺してしまうという構図は、何とも切ない。
「共感性」の危うさも認識しつつ、それぞれの「才能」の特性を理解して、組織にプラスとなるような行動をしていけたらなと思う。
また、「広くて浅い反発」「狭くて深い支持」というのも覚えておきたい言葉だ。
例えば、大谷翔平選手がファイターズに入ったとき、「二兎を追う者は一兎をも得ず」的な意見が少なくなかった。
これも「広くて浅い反発」ではなかったか。
仮に投手か野手か、どちらかに専念した場合、今の革新的な大活躍はなかった。
こんなにも世界に衝撃を与えたりワクワクさせたりするまでは至らなかっただろう。
本書で最も刺さった箇所は、「凡人の最強の武器は自らの言葉」という話。
「便利な言葉」は秀才の武器、「自らの言葉」は凡人の武器。
私は、発言した「自らの言葉」が相手に届いているなと感じることがこれまでに何度となくあった。けっこううれしい瞬間だ。
しかし、それを自分の武器とは一度も思ったことがなかった。
腹の底から出た「自分の言葉」を磨いていくことで、もっともっと人を巻き込むことができる。「共感性」を発揮することによって人的資産につなげていくことができる。そんな勇気を本書からギフトしていただいた。