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【表現評論】WhitePowder「LAMUNATION!」コアレビュー Part 1 共通ルート
ゲーム開始
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主人公である紅星月菜(あかほしるな)がヘリコプターに乗り、スカイダイビングするところからゲームは始まる。ヘリコプター内で便意をもよおした月菜が案内人とやりとりをするところが最初の掛け合いなのだが、この時点で「こういうゲームですよ」と教えてくれる親切設計である。ノベルゲームでこのような下品なネタから始まるゲームはほとんどないのではないか。
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月菜がスカイダイビングをする目的は、同時にスカイダイビングする4人のヒロインの写真を撮ることである。月菜の幼馴染である碧海らむね(左2)、さくらんぼ大好きなアイリス(左4)、アイリスの双子の妹でクールに見えるレイラ(左1)、そして月菜の双子の妹である紅星陽菜(あかほしころな)(左3)の4人が勢ぞろいする。月菜を含めた主要キャラクターは5人しかいないのに双子が二組も存在するゲームはなかなかないだろう。
重要だから先に触れるが、このヒロイン4人は全員バイであり、ヒロインどうしの性的な接触はゲーム内でふつうに行われる。たとえばfig. 3は、月菜の言動に吐き気を催した陽菜が、らむねにゲロを口移しで飲ませようとした直後のセリフである。
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スカイダイビングから一週間後、月菜はソラリスという少女と会話している。この時点ではソラリスが何者なのかはまったくわからない。ゲームを進めると知らないうちに設定が明かされるが、設定を知らなくてもなんの問題もない。ちなみに、このゲームは地の文のほとんどがナレーションに読み上げられるのだが、その声はソラリスと同じである。
ここでラムネーションという言葉が説明される。
ソラリス「貴方は『ラムネーション!』という文化をご存知ですか?」
月菜「まぁ、人並み程度にはな。炭酸ジュースを飲むときの乾杯の音頭だ」
ソラリス「本来の意味はご存知ですか?」
月菜「確か、元はインターネットミームだろ?」
ソラリス「そうです。炭酸ジュースを飲んで写真を撮り、SNSにアップする」
月菜「そうすると、それを見た世界の誰かが同じように写真をアップする。まぁ詰まるところ、オンライン乾杯って所だな」
ソラリス「そこには文化、言語、宗教、人種の隔たりはない。まるで、世界が一つになったような瞬間ですよね」
月菜「よく考えれば、元々世界は一つだった気もするがな……」
月菜「ともかく、世界が平和で楽しい事は良いことだな」
ソラリス「その文化が転じて、今ではみんなで炭酸ジュースを飲む時の乾杯の音頭にも使われるようになったみたいですね」
月菜「ミームとは移り変わり変化していく物だからな」
ソラリス「その『ラムネーション!』という文化が、この街発祥だってのはご存知でしたか?」
ここでソラリスから「ラムネーション!」という文化に関する面白い話を聞くことになる。つまり、ゲーム本編の時間軸はこの時点が現在であり、これ以降のプレイではソラリスの話を聞いている、過去の話なのである。
ヒロインたちとの出会い
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月菜の家には露天ジャグジーがある。非常にうらやましい。
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ジャグジーを楽しんでいるところ、らむねが空から登場してラムネを手渡してくれる。なんで空から登場できたのかを詮索してはいけない。
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ガラケーの時代は「メールを保存/保護する」という機能があったが、スマホにはそういう機能は見当たらない。私も昔は保護したメールを読み返して夜な夜なニヤついていたものだ。
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らむねとともに陽菜の運転する車で希望島学園という学校に向かう。この手のゲームでは高校などの名称は使わず、学院や学園と名付けられることが多い。まあ大人の事情というやつだろう。
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車に向かって注文してもいないハンバーガーなどを投げつけてくるアイリスとレイラ。通常考えられないことが起こる。そう、ラムネーションならね。
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ご丁寧にもナレーションで世界観を説明してくれる。舞台であるセントアリア市は国際企業であるRMCが牛耳る街である。とりあえずそれだけ覚えていれば十分である。これ以降細かなネタがそこかしこにちりばめられているが、すべては拾えないことをご了承いただきたい。
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陽菜とアイリスが進学希望者向けの説明会に参加した。fig. 11のようにネタを乱打してくるから、このあたりでギブアップするプレイヤーも多いことだろう。
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みんなでアイリスとレイラの経営する飲食店、チェリークラウンダイナーで食事をとり、月菜と陽菜は帰宅する。そこで以下の会話が行われる。
陽菜「ねぇ、お兄ちゃんは今幸せ?」
月菜「これを幸せと表現しないなら、ほかにどう表現していいかわからんな」
陽菜「なら……」
陽菜「なら、みんなを幸せにしてみない?」
月菜「みんな?」
陽菜「うん。らむにゃー、アイリス、れーちゃん……勿論、それだけじゃなくてもいいし」
陽菜「いきなり父さんや母さんのように大勢を幸せにするなんて事は難しいけど……」
月菜「そのみんなっつーのは、陽菜、お前も入ってるのか?」
陽菜「え?そ、そりゃ……お兄ちゃんが、そんな素敵な人になってくれたら妹の私は幸せだけど……」
月菜「そうか。じゃぁ、やろう」
陽菜「はやっ。もう少し考えてもいいんだよ?ちょっとした私の思いつきなんだし」
月菜「いや、考えるまでもない。妹を、幼馴染みを、親友を、もしこの俺が幸せにしてやれるのであれば」
月菜「幸せにしてやるのが俺の務めだ。違うか?」
陽菜「ううん。ちがくない」
陽菜「えへへ……お兄ちゃんのそういうところ、私は大好きだよ」
月菜「少々退屈していた所だしな、ちょうどよかったよ。陽菜、ありがとうな」
陽菜「うんっ!私も手伝うから、一緒に頑張ろうね!」
突然ゲームの目的を説明されて面食らってしまった。それまでギャグ一辺倒だったのに急に真顔になるなよ。最後までやればわかるが、この「幸せにする」は本当にゲーム全体の通奏低音になっている。
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ここで共通ルートが終わり、個別ルート選択になる。初回プレイでいきなり陽菜を選ぼうとすると、最後にプレイすることを推奨するポップアップが出てくる。無視して選択することもできるが、やはりらむねやアイリス・レイラを先にやるべきだろう。
本来はらむね→アイリス・レイラ→陽菜と進むべきだが、今回は私のプレイ順にアイリス・レイラ→らむね→陽菜の順にレビューする。