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他人はコントロールできない

対人援助の仕事をしていると、援助相手に「もっとああしたらいいのに、こうしたらいいのに」と思うことがあります。

「禁煙すればもっと健康になるのに」
「デイサービスに行けば安心してお風呂に入れるのに」
「もっと集中して勉強すれば成績がアップするのに」

援助相手にこういった思いを持つ対人援助者の人は、きっと多いと思います。

「相手にもっとよくなってもらいたい」と思う気持ちは、援助者にとって大切なことです。
ですが、「相手にもっとよくなってもらいたい」と思う気持ちが行き過ぎると、「わたしの思い通りに相手を動かしたい」といった感情へと変わってしまうことがあります。

「自分の思い通りに相手を動かしたい」

この気持ちを「コントロール欲求」といいます。
コントロール欲求をもつことは、別にいけないことではありません。
元来、人は思い通りに他人をコントロールしたい気持ちを持っているものです。
よくないのは、コントロール欲求が強くなりすぎて「相手が思い通りに動かないと気が済まない」という気持ちになってしまうことです。
行き過ぎたコントロール欲求は、虐待やDVという形になって弱者を攻撃します。

学生のときにゼミの先生から教わった、「人間は他人を支配する欲が一番強い」という言葉が今でも心に残っています。
どうやら対人援助では、援助相手に対して援助者のコントロール欲求が強くなり過ぎてしまう傾向があるようです。
援助する側が「強者」で、援助される側が「弱者」という構図ができやすいからでしょう。
その先生からは、特に人とかかわる医療、看護、福祉の分野で働くときには

医療→囲療(人を囲う)
看護→管護(人を管理する)
福祉→服祉(人を服従させる)

こうならないように注意しなさい、と教わりました。
立場的に弱者になりやすい人を相手にするわたしたち対人援助者は、自分自身のコントロール欲求に気づいて、うまくつき合っていかなくてはいけませんね。
そのために、まずは自分自身を含め誰もがコントロール欲求を持っていることを認めることです。
そして、「他人はコントロールできない」ということも認めましょう。
いくら「相手にもっとよくなってもらいたい」と思って援助者が何か提案したとしても、それを選ぶのは援助相手です。
たとえそれがどんなに良い提案だったとしても、相手が望まなければどうしようもありません。
対人援助は、援助者の思い通りになんていかないものなのです。
むしろ、援助者の思い通りにいかないのが当たり前です。
自身のコントロール欲求が行き過ぎたものになっていないかどうか、対人援助者は折に触れて自己点検してみるといいかもしれませんね。

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