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「骨太の方針2023」から考える介護業界の行末

2023年6月16日、「骨太の方針2023」が経済財政諮問会議での答申を経て、閣議決定されました。

このうち、介護分野の課題への取り組みについては、以下の方針が示されています。

急速な高齢化が見込まれる中で、医療機関の連携、介護サービス事業者の介護ロボット・ICT機器導入や協働化・大規模化、保有資産の状況なども踏まえた経営状況の見える化 を推進した上で、賃上げや業務負担軽減が適切に図られるよう取り組む。
「介護職員の働く環境改善に向けた取組について」(令和4年12月23日全世代型社会保障構築本部決定)では、現場で働 く職員の残業の縮減や給与改善などを行うため、介護ロボット・ICT機器の導入や経営の見える化、事務手続や添付書類 の簡素化、行政手続の原則デジタル化等による経営改善や生産性の向上が必要であるとされており、取組を推進する。

次期診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定においては、物価高騰・ 賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・ 保険料負担への影響を踏まえ、患者・利用者が必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行う。

この「骨太の方針2023」に対しては、自民党の議員連盟が鈴木財務相に対し、以下の声明を発表していました。

「骨太の方針2023」の策定にあたっては、物価高騰等による介護分野の厳しい現状に配慮し、令和六年度介護報酬改定等における経営の安定性確保と十分な賃上げを図るに不足ないプラス改定や、さらなる支援策等の実現を目指した 積極的な取り組みについて、明記することを求める。

・自由民主党介護福祉議員連盟 会長麻生太郎
・地域の介護と福祉を考える参議院議員の会 会長末松信介

この声明により、介護報酬のプラス改定の明記が期待されていた骨太の方針2023ですが、ふたを開けてみれば、プラス改定やさらなる支援策等は明記されない結果となりました。

賃上げや給与改善に関しては触れられているものの、介護報酬のプラス改定は言及されず、「介護ロボット・ICT機器の導入や経営の見える化、事務手続や添付書類 の簡素化、行政手続の原則デジタル化等による経営改善や生産性の向上が必要である」との記載にとどまっています。
つまり、両議員連盟の要請は不発に終わったわけですね。

ところで、両議員連盟がこの決議文を鈴木財務相へ提出したのは5月31日でした。
骨太の方針の原案は、その後すぐの6月7日に発表されましたので、決議文の提出は遅きに失した感があります。
これはうがった見方かもしれませんが、両議員連盟は本気でプラス改定しようと思っていなかったのではないでしょうか?
つまり、決議文を提出すること自体が両議員連盟のポーズだったのではないかと考ることもできます。
本気でプラス改定しようと思っていたら、もっと事前に関係各所へ根回しを図るはずです。それがなく、財務相への提出も遅かったということは、「議員として言うことは言ったぞ」という証拠作りのにおいがしてなりません。

一方の財務省は、一貫して社会保障費の削減に舵を切っています。
物価高騰などによって働き手の処遇改善が急務である介護業界ですが、このままでは次期介護報酬のプラス改定は難しいのではないでしょうか。
業界の今後を考えると、どうしても悲観的にならざるを得ません。

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