首の自由も奪われた 交通事故重傷記 3
月曜。
栄養ドリンクの吸い込みも服薬も、歯磨き代わりの食後のうがいも、だいぶ上達した。
「管を通じて胃に直接栄養分を流し込むことも考えたんだけど、意識がはっきりしてたから。自分で摂取してもらうことにした」
事故翌日に医師からこう言われた時、いっそのこと胃へ直結の管を開通させてくれていればむせることなく苦しまずに済んだのにと思ったが、それは誤りだった。他人頼りはいかにも不自由。 何であれ、自力でできればそれだけ自由になる。はじめは下手でも試行錯誤を繰り返せばある程度はできるようになる。
昼、整形外科の診察室に呼ばれて行くと、いきなり首の動きを制限する装具を取り付けられ、レントゲン写真を示しながら「頚椎第4、第5棘突起が折れています」。神経の集積部位から離れているので特段の心配は不要だが、放置していいけがではないとのこと。水分の摂取が上達して自由を取り戻す喜びを感じたのも束の間、次は首の自由が奪われた。
「回復に向けて一歩ずつ、だねぇ」
妻からのメールを読み返した。