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【行政書士】助成金不交付決定処分取消請求事件の最高裁判決とザブングル加藤氏の宅建合格
コロナだったのか、重めの症状の風邪を引いて11/18〜22までの4日間寝込んでいました。令和5年行政書士試験後もあまり燃え尽きることなく、完敗だった行政法を中心に試験勉強を続けてきてましたが、体調不良で勉強のペースが狂ってしまったようです。
先週の11月17日の金曜日は、ピエール瀧氏も出演していた映画の「助成金不交付決定処分取消請求事件」の最高裁判決がニュースとなり、そちらを参考に私が勉強を始めた行政事件訴訟法法とは何なのかと考え込んでいました。
無味乾燥でとっつきずらい行政法分野でこのニュースの判旨(ネットにはまだ地裁判決の判旨しか載ってないが)をネタに、行政法の過去問を全て終わらせる勢いでやっていきたいですね。
この事件について一連の報道では「憲法における表現の自由を巡る裁判」と位置付けられていたように思えますが、それはマスコミだから、あるいは左に寄りすぎな弁護士だからそちらに着目するだけであり、事の本質はお上が民間に補助金という名のカネを出す・出さないを巡る裁判です。
訴訟の相手方が行政機関ということで行政事件訴訟法に関する重要な判例が最高裁から示されたということで、これは行書試験に出るかもしれぬということも含めて刮目です。
助成金不交付・事の経緯
文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会(芸文振)」より、2019年3月に助成金の交付内定がされていたにもかかわらず、2019年7月に「公益性の観点」という、当時の助成金交付要綱にも法律にも規定されていなかった曖昧な基準を理由に不交付決定がなされました。 出演者であるピエール瀧氏が麻薬取締法違反で逮捕されたことに起因するものであった
原告は映画制作会社で、被告は独立行政法人「日本芸術文化振興会」(芸文協)。私が勉強中の行政事件訴訟法に基づけば、被告は一旦差し出そうとしたカネを上げなかったジャイアンなので処分性はあり、原告はもらえなかった可哀想な人たちなので原告適格はありますし、補助金交付という個別具体的な法関係があり国民の権利義務を形成する行為でもあるので訴えの利益があります。
そして行政庁の一方的な意思表示で法効果が生じる事案であります。補助金の不交付という処分には違法性(✖️不当性)がありそうです。そして自己の法律上の利益に関係のある違法を理由として取り消しを求めています(10条1項)。
ここの理事長がおそらく文科省の天下りなんでしょうが、ピエール瀧氏の薬物による逮捕が、一度は内定していた補助金交付を公益の観点からそぐわないとして一転不交付としたことが問題となりました。地裁では原告勝訴でしたが、高裁は被告勝訴。最高裁は「不交付は著しく妥当性を欠き、違法だ」として補助金不交付を取り消し、映画会社の逆転勝訴が確定しました。
行政の裁量権の範囲の逸脱・濫用
そもそもこの芸文協なる団体のトップのおっさんはどこまでの裁量権が認められるのだろうか?クラウドファンディングを募っていた原告弁護団の主張はこうです。
「行政に裁量が認められる根拠は専門的判断が可能だからですが、専門外の事柄についても行政が自由に考慮・重視して補助金や助成金の交付・不交付の判断ができることがOKということになれば、今後、行政は様々な理由を付けて、場合によっては何か補助金等を申請等する市民や団体に不都合な不祥事や出来事を税金を使って調査し、探し出して、それらしい理由を付けて、不交付決定を行ってくるということも十分に予想されます。そうすると、専門外の事も重視できるわけですから、科研費等の交付・不交付の判断や、さらには行政の人事の問題(日本学術会議の問題がその例)にまで、このたびの不交付処分の弊害の射程が拡大していってしまいます。」
一応、行政庁の裁量権の濫用逸脱は置いておいて、薬物はダメというのが世間一般常識なのでそこはただの天下りの理事長でも専門的判断の必要性については不要に思えるが、
だからこそ専門家でもない芸文協のおっさんごときにこうしたことを認めれば、行政庁は難癖をなんとでもつけることができ、どんな難癖でも行政庁の裁量と認める事は、すなわち裁量権の逸脱・濫用となるのではないか?
そういう事だと認識しました。
判旨の要旨(読売新聞オンラインより)
映画への助成金を内定後、出演者の薬物事件を理由に不交付としたのは違法だとして、映画製作・配給会社「スターサンズ」(東京)が独立行政法人「日本芸術文化振興会」(同)に不交付決定の取り消しを求めた訴訟の上告審判決が17日、最高裁第2小法廷であった。尾島明裁判長は「不交付は著しく妥当性を欠き、違法だ」と述べ、不交付を取り消した。同社の逆転勝訴が確定した。
不交付決定取消判決の効果
不交付決定の取消判決ということで、行政が敗訴という原告の訴えを認容する「認容判決」が出たことで別訴での蒸し返しを防ぐ「既判力」、芸文協の処分の効力は処分時に遡って消滅という「形成力」、
本取消判決は処分をした芸文協及びその他の行政庁を拘束し、芸文協は判決の趣旨に従い改めて申請に対する処分または審査請求に対する裁決を行うこと、同一事情の下で同一の理由に基づく同一の処分をすることができない「反復禁止効」が生じ、
そして取消判決の効力が他の第三者、他の映画会社などにも効果が及ぶ「第三者効」が形成されます。行政も、のべつ幕なしに交付を認めたがらないので、今後の助成金の交付には「公益性の観点」なるお役所っぽい要件が過重され、行政が主導するクールジャパンなるもののさらなる形骸化が進むことは容易に予想されます。
結論;芸文協の理事長のオッサンが妙なことをしなければ日本の芸術文化は死なずに済んだ
元売れっ子芸人の宅建合格
そして先週11月21日火曜日は令和5年宅建試験の合格発表があり、私の元にも22日に合格証書が送られてきました。そして例年この時期に著名人の「難関国家試験に合格」という見出しで釣るニュースの出稿が盛んになります。
なんの試験なのか読まなくても大体察しがつきますね。J2・Vファーレン長崎DFの櫛引一紀選手の宅建合格のニュースがYahooのスポーツ記事のトップに取り上げられてました。代表クラスでもなくJ2ましてやDFとなると全国区のネットニュースになることはかなり少ないですが、こうした視点から記事になるのもなかなか興味深いですね。
検索していると元Jリーガーの鄭大世選手も現役時代に宅建取得を目指して静岡の大原に通っていたそうですが、頑張って一日5〜8時間勉強したことがかえって本業に差し障ってスタメン落ちしたとか。櫛引選手をはじめセカンドキャリアを見据えて取り組まれている。私も同じですね。
セカンドキャリアといえばYahoo!ニュースのコメントで多数のいいねがついていたのが、お笑い芸人のザブングル加藤氏ですね。
この人が宅建の受験勉強を開始したというニュースを聞いたのはもう3、4年前なので、合格までかなり時間を掛けられたようす。ただしここは著名人だからでしょうが、ザブングル加藤氏の合格を貶すようなコメントもありました。
そもそもは宅建の難易度を「難関」と書いたネットニュースの釣りが酷いからですが。難しいか否かではなく、宅建取引で必要な重説ができるようになるかならないかという仕事の話です。すぐにテストの難易度の議論にすり替えられる。
ヤフコメでは自らを士業従事者と名乗る人物が「宅建と行政書士は簡単ですよ」と揶揄していました。本当の難関国家資格は司法試験、税理士、会計士、司法書士などを指すのであって、宅建は宅建であるということ。
ザブングル加藤氏はただ生きるために必死なだけなのに、試験の難易度とかどうでもいい話でしょうが。彼はすでに不動産仲介の仕事をされてるんだそうです。ならば仕事で必須じゃないですか。
そしてなぜか関係ない行政書士まで巻き込まれる。今の120点レベルの私にとって行政書士は簡単な試験ではない。だが仮にもこんな暴言を吐かれるならば、来年必ず取ってやろうと、妙な奮起をした次第です。