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終わることなきキーボード沼へ(HHKB からKeychron K2へ)
みなさんは、お仕事用のキーボードに何をお使いでしょうか?
私は長らくApple純正Magic Keyboard(US)を使っていましたが、HHKB Professional HYBRID Type-S 英語/墨を経て、自分にとってのNo.1キーボードはKeychron K2であるとの結論に達することができました。
この記事では、比較対象のレファレンス機としてHHKBと比較しながら、オススメポイントをメモします。
キーボードに求めるいくつかの条件
Apple純正Magic Keyboard(US)の製品寿命によりいくつかのキーにダメージが蓄積し、以下の3条件を満たすキーボードを物色していました。
①US(英語)配列
②無線/有線両方で接続できる
└ 無線はマルチデバイスペアリング可
└ バックアップとしての有線はUSB-C
③テンキーレスで横幅コンパクト
条件①については、ホームポジションが中心からずれていることに加え、よく使う[ ]{}や;:’”等の記号キーが脈絡なく上下段に分かれて配置されショートカット操作が不便になる(そもそも、ほとんどのUS製アプリケーションのショートカットキーは、US配列の記号キーの配置を前提に設定されているため)JIS配列は好みでないので、MacBookProシリーズはもちろんiPadのキーボードもすべてUS配列に統一しています。当然、グローバルな市場で競争するUSキー配列が使えればキーボード選びの選択肢も増えるわけで、今JISをお使いの方も騙されたと思ってキーボードはUS(英語)配列に移行することをお勧めしたいと思います。
条件②も、特にマルチデバイスペアリングは利用デバイスがPCのみならずiPad、Apple TVなどに広がってきた昨今、必須条件となってきています。ところがApple純正Magic Keyboard(US)にはなく、今後も搭載されないであろう機能です。またこの条件設定により、キーボード界定番名機の一つである東プレのREAL FORCEシリーズが、残念ながら選択肢から消えることになります。
条件③は、テンキーが付いてしまうと、右手側に設置するマウスまでの移動距離が増え、非効率になるためです。経理や経営企画で数字を多く扱う方以外は、同意いただけるのではないでしょうか。しかしこの条件により、最近良い評判を耳にするようになったlogiのMXとCRAFTが選択肢から消えます。
結果、日本で手に入るメジャーなメーカー製キーボードで、残る選択肢はといえば、PFUのHHKBぐらいとなります。機能的な条件をクリアすれば、あとは実際に買ってみて、自分の手に馴染むかを試すしかありません。
まずHHKBを購入してみたものの…
ということで、HHKBシリーズの中から、最高峰モデルである「HHKB Professional HYBRID Type-S 英語/墨」を購入しました。
まず、このキーボードの打鍵感の良さを否定する人はほとんどいないと思います。確かにすばらしいものです。静電容量無接点方式ならではの「スコスコ」という擬音で表現される小気味いい押し込み具合。Type-Sは打鍵音も静音化されており、ベンツのような高級車の車内にいる感覚で、文字を入力することに集中できます。個人的にもキーからの反動と自分の指の力の相性がちょうどよいようで、「寿司打」などのタイピング速度測定サイトで最もスコアが高く出るキーボードです。
サイズに関しても、本当にコンパクトでミニマルです。机の上はもちろん、カバンに入れて持ち運ぼうにも、邪魔になりません。
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HHKBの購入を一瞬躊躇させた懸念点が、ホームポジションを崩さず生産性を追求するための変態キー配列でした。実際、
・functionキーがない
・方向キーもない(fnキーと併用して操作)
・deleteキーや`キーの位置が違う
のを嫌がって、普段US使いの方もJIS版を選択する方も多いようですが、私は鉄の意志でUS版を選択しました。結果、慣れたのですが、方向キーをfnとの組み合わせでカバーするのは、文字範囲を選択する際にシフト同時押しするときや、MS Excelなどを使う仕事の場面では明らかに不便です。
とはいえ揺るぎない定評もあるし、ロングセラーとしての実績もあり長く販売されそう(かんたんにはディスコンしなさそう)だし、これでいいじゃん、となるはずだったのですが…
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使えば使うほどに、
・プラスチック感溢れるキーや筐体
・ボディから飛び出た電池格納部
・すぐに割れてしまいそうな薄く貧弱な電池カバー
・スタンド(脚)の裏面に滑り止めゴム無し
といったディティールの手抜き加減に、巷の評判ほどの愛着を持てなくなる自分がいました。
ダークホース「技適を通したKeychron K2」あらわる
そんなタイミングで出会ったのが、今回紹介するKeychron K2です。
その特徴的なデザインで前から気になっていたキーボードでしたが、これまでは日本の無線デバイスを規制する「技術基準適合証明(技適)」に違反する前提で個人輸入するしかなかったKeychron K2。それが、2021年8月より正式に日本の代理店から技適を通した上で販売されることを知りました。
冒頭挙げた全て条件を満たしつつ、技適コンプライアンスも万全、それでいて価格も1.5万円程度とお手頃なこともあり、触ってみてキータッチが気に入らなければメルカリ行き前提でポチ。翌日に到着するスピード対応。
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届いてみて驚いたのがその重さです。テンキーレスにもかかわらずなんと900g近くもあります。キーボード界で最も重い部類に入るはずです。しかし、そのアルミ製フレームのガッチリした剛性あるボディのおかげで、安定感と高級感はHHKBをはるかに上回ります。実は、より軽いプラスチックフレーム版もラインナップにあるのですが、本機に関しては質感の違いからアルミフレーム版を強くお勧めします。
届くまで分からなかった打鍵感に関しても、想像を上回るものでした。メカニカルキーボードですが、「赤軸」を選んだために押し込みはリニアな、HHKBにかなり近いスコスコ感があります。「青軸」を選ばなければカチカチしたクリッキーな感触はありません。
ただし、底打ちした時の打鍵音は、HHKBとは全く違います。押し込みの力が強ければ強いほど、スコの後に「カ」というやや高めの音が出ます。スコカカカカ。Slackの通知音、あれに似ているかもしれませんが、より拍子木的というか、品のいい木工製品から出る音がします。と同時に、手にもその音の感触が伝わってきます。指の力を加減すると音がグッと小さくなるのも、打楽器のようです。
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YouTubeで、HHKBとKeychron K2の打鍵音を比較して聞かせてくれる動画なども事前に見ていましたが、動画で聴いたものとはいい意味で全く違う気持ちの良いサウンドが鳴ります。逆に言えば、家の中でも静かさを求める人には、メカニカルキーボードはやはり向いていません。この点ははっきりアドバイスしておきます。
事前に挙げていた条件面は完璧に満たし、さらにHHKBを特殊たらしめている独自のキー配列もなく、省略されたキーもありません。一番右にあるPageUPキー やHomeキーなどのせいで誤入力するという方がいるようですが、ホームポジションを守ってタッチタイプしている限りは届かないのでご安心を。気になるようであれば、キーマップを操作してこれらのキーを殺すこともできます。
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HHKBとの不思議な挙動の違いとして、無線マルチデバイス接続の切り替えがあります。
キーボードからの操作だけで切り替えできる便利さは両者変わりありませんがが、HHKBの場合、接続先を切り替えても、OS側からまったくリアクションがありません。これに対しKeychronの場合、Macに切り替えた時に「接続されました」「切断されました」というOSからの返答が表示されます。細かな点ですが、Keychronのこうしたところにも、HHKBにはないMac OSへの親和性を感じました。
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ともあれ、音を含めたプロダクトとしての質感、デザインの良さは圧倒的で、機能面の充実もさることながら何よりHHKBには感じられなかった愛着が持てるキーボードに仕上がっています。
以上の次第で、HHKBの素晴らしさは認識しつつも、軍配はKeychron K2に上がり、しばらくはこれをメイン機として使い込んでいくこととなります。
良いキーボードは今後高価格化していく
キーボードはマウス以上に「沼」なデバイスで、こだわればこだわるほど、キーボードを自作してしまう人が現れるほどのマニアな世界に突入していってしまう危険があります。
一介のサラリーマンが良い「文房具」にこだわるのは自由だとしても、文房具を自作するようになっては本末転倒でしょう。そうならないように気をつけなければなりません(笑)。
その一方で、今後デジタル化がますます進み、入力デバイスの差が生産性に大きく影響することが間違いない未来、キーボードのハイエンド化・高価格化も加速していくことが予想され、どうせ長く使うものであれば、今のうちに買っておくのがよいかもと考えています。その証拠に、東プレのREAL FORCEの対抗馬と目される静電容量無接点方式の新興勢力AKEEYOのNiZの価格が、最近になって7000円近く上昇しているのです。
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そう考えると、冒頭の条件をすべて満たし、(今のところ)HHKBの半額以下で入手できるKeychron K2は、一般的な事務職・オフィスワーカーのお財布事情に照らしてもお買い得であるとお勧めできます。
もちろんKeychron K2がこれからもずっとベストと言うつもりはなく、HHKBもリファレンス機として手元に置きながら、今後も良いキーボードが出れば取り入れていきたいと思います。
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