【新店舗"Hone"開業記③:チーム】メンバーの集まり方と、未経験チームで取り組むレストラン運営
こんにちは。井澤卓です。
仲間とデザイン会社を経営しながら、会社のメンバーで飲食店"LOBBY"と"nephew"を経営しています。
このnoteは、僕達が2022年7月にオープンした新店舗"Hone"を立ち上げるに当たり、構想段階から作り上げる過程を書き連ねるシリーズです。
第一章、第二章はこちらをご覧ください。
これまでビジネスモデルやデザインについて書いてきました。
今回はより現場の運営に近づき、お店のスタッフについてまとめます。
飲食店のスタッフ採用はどんどん難しくなっています。
知り合いの飲食店経営者と話すと、どこのお店でも、料理人、サービスマン、バーテンダー全てにおいて人手不足だと聞きます。
コロナのタイミングで一気に飲食業界から人が減り、それでも新規オープンのお店は増え続けているので、需要と供給が見合っていない状態です。
僕達の会社でも全く同じ状況。更に新規開業にあたり料理人のアテが全く無かった僕達にとって採用は大きな課題でした。
※今回の記事はお店やスタッフの背景の内容がメインです。お店に関わりがある方向けの側面が強いので、ご容赦下さい。
チーム編成
1Fがキッチンとスタンドバー、2FがレストランとなるHoneの構造。
2F層なのでその分スタッフ人数が必要になります。
現在のHoneの1日の営業メンバーは5名。週末にスポットで1名が入り6名になることも。
基本的には、キッチンスタッフが2名、バーテンダー2名、サービス1名で営業します。
週末は上下階が満席になると同時に40名ほどのお客様が集うことになるので、5名での営業はとてもハード。
営業中に休憩を取ることが難しいので、今後に向けて人を増やしたいところです。
キッチンチーム
レストランを始めるに当たり、一番重要なのが料理人。
物件を借りる時点では何もアテがなく、なんとかなるだろうと楽観的な展望を持っていました。
業界経験無く始めたアウトサイダーな僕達のお店は、バーテンダーや料理人等技術者を目指す方々が修行期間として腕を磨く店ではない。
でも、だからこそ技術と経験があればチームをリードする立場になれるので「自分が主体となって腕を発揮したい人」には魅力的に映るはず。
2店舗の経営で飲食業界のリアルがわかっていたので、ある程度の修行期間を終え、新たなチャンスを探す20代後半〜30代前半の料理人はいるだろうと思っていました。
表面的な採用サイトではそのチャンスが正しく伝わらないと考え、以下のnoteを書いて各SNSに展開しました。
シェフ:富田(トミー)
そこで出会ったのが料理人の富田(トミー)です。
ある日の深夜、姉妹店のLOBBYにもじもじしながらやってきたトミー。
「なんかこの人ずっともじもじしてるなあ」と思っていたら、「最後に募集を見て…」と話しかけてくれました。笑
話を聞くと、よく知る系列のお店で働いている事がわかり僕も一気にテンションアップ。
それまでも何件か応募が来ていたのですが、年齢や経験が合わずに見送っていたところでした。
トミーは31歳。年齢や好きなお店のカルチャー的にも合致していたので、「良い人が来たぞ!」と思ったのを覚えています。
それから面接を重ね、晴れてシェフのオファーを送り就任が決定。
一回も一緒に働いていないのに、いきなり全権限を任せることになるので、大きな「かけ」ですよね。
トミーは前の店でシェフとして勤務していたわけではないので、彼の料理を食べることも難しい。
そんな中で「この人だな」と思えたのは、人間的な実直さや素直さに対して魅力を感じたのが大きいです。
僕達は飲食業界の経験が浅い分、しきたりもわからないし、固定概念も持っていない。
合理化できることは徹底するし、「こういうもんだから」という思考停止は許さず、考え続けることをチームに求めています。
そのため、プライドが高く自分の経験に頼り仕事するタイプの人とはあまり上手くいきませんでした。
トミーと複数回話す中で、彼の素直さや柔軟性、そして強く真がある部分も垣間見えました。
どうせかけるのであれば、人として魅力的な人にかけたい。
そう思って彼にお願いをしてHoneを立ち上げてから6ヶ月、Honeをリードして想像以上の大きな成果を出してくれています。
シェフとしての仕事は、ただ美味しい料理を作るというクリエイティブな側面だけではありません。
むしろ数字や労働環境にも向き合う経営者の仕事に近いと思います。
与えられた前提条件をベースにお店のビジョンを掲げ、メニューを作る。
そのメニューの中に、あらゆる経営戦略が詰まっていきます。
お客様の満足度を上げるための構成を第一に、お店として最終的に目指す客単価への戦略を盛り込む。それに伴って、どの程度の労力をかけるかの意思決定をしていく。
この意思決定に、自ずとチームの労働環境が紐づきます。
例えばすべてのソースを1から手作りするとなると、膨大な時間がかかる。ということは労働時間が長くなってしまう。
会社のバックグラウンドやお店の現実的な価格設定(レベル)を考え、「どこまでやるべきなのか」、常に理想と現実に向き合って決断を繰り返す仕事です。
そんな難しい仕事に正面から向き合い、まさにシェフとして立派にチームをリードしてくれています。
シェフ就任が決まってからすぐにPCを買ってきて、頑張ってタイピングしていたトミー。(僕達のお店では全ての経営数字をクラウドで管理するので、PCが必須。)
ある日、エクセルもスプレッドシートも使ったこと無いはずなのに、毎日の原価を管理するシートを作ってきた時は「こんな料理人いるんだ」と驚きました。
新しい環境に適応するため、必要のないプライドは捨てて学ぶ。
その「素直さ」は成長する人に共通の要素だと学ばされます。
何より料理のセンスも抜群。
美味しいのはもちろんのこと、視覚的な構成力も見事で、どんどんレベルアップしている印象です。
僕自身何度か客としてディナーを食べましたが、お世辞無しで満足度が非常に高いです。
実力がありながら、これほどまでに自分達の考え方にフィットして活躍してくれる料理人を見つけられたことは奇跡だと思っています。
本当にnote書いててよかったです。笑
キッチンチーム:Masaru
もう一人のメンバーのマサルは、オープン前駆け込みでチームにジョインしました。
彼はもともと美容師をしていて、その後オーストラリアや日本で飲食業に関わっていた人。年齢はシェフのトミーと同じ31歳。
「3年後に友人と飲食店を開く約束をしているため、Honeの立ち上げプロジェクトに参加して経営面から学びたい」と応募してくれました。
当時はキッチンのメンバーが一人も決まらず、このままではキッチンがシェフのトミーただ一人!という危機的状況。
料理人として経験があるわけでは無いものの、「決意を持って飲食業界にチャレンジする」人は応援したいと思ったし、年齢的にも人間的にも落ち着いていて若いチームには必要な存在でした。
元美容師や海外経験等、飲食以外の共通言語を持っていたことも後押し。
僕達はカルチャーに密接なお店づくりをしていきたいので、多様な人生経験や美容、ファッション系のフィールドでの実績は魅力に映ります。
仕事に責任感を持ってしっかりと向き合ってくれ、キッチンメンバーとしての働きはもちろん、チームのお兄さんとしても動いてくれる信頼できるメンバーです。
これまで共に働いた半年間の中で、論理的な考え方を持ち、課題を改善に向かわせるのが得意な一面を感じていたので、もう少し俯瞰してチームをリードする立場にしたいなと考えていました。
そこで、2月中旬からは新たに系列店nephewに異動し、マネジメントメンバーとしてリードするポジションにステップアップ。
自分が前に出る立場になったことで、ここから更なる活躍を見せてくれるととても期待しています。
サービスチーム
続いてサービスチームの面々です。
Moeko / モエコ
サービスチームで一番最初に決まっていたのがモエコです。
Honeがオープンする数ヶ月前、友人から「LOBBY(姉妹店)に良い人がいる」と紹介されたのがモエコでした。
当時は彼女が名古屋から上京してきて仕事を探していたタイミング。
ちょうど新店舗に向けて人を探していたところ。僕個人のinstagramの投稿を見た友人がおすすめしてくれたそうです。
その友人は自身でファッションブランドをディレクションしている人。
僕自身もそのブランドのファンだったこともあり、尊敬する人が紹介してくれるなら間違いないだろうということで、一度会ってみることに。
初対面は緊張していたのか大分硬い印象でしたが、独特のクールな雰囲気を持っていて、自分が思う「LOBBYに立つ人」のイメージにぴったり。「こんな人がバーテンダーでシェイカーを振ってたらかっこいいし、他のお店では見たこと無いな」とイメージが膨らみました。(以前そんな店をオーストラリアのトップバーで見たことがあって憧れていました。)
元看護師で飲食は未経験経験だったものの、音楽やファッションが好きで僕達のコミュニティと共通項が多かったこともありチームにジョインしてもらうことに。
僕達が一緒に働くメンバーを決める際、基本的には経験よりもカルチャーフィットしているかどうかを重要視しています。飲食を通した場作りをする上では、飲食以外の提供物も重要。音楽やデザイン等、一貫した場所の空気を作るためには興味関心が似ている人の方が望ましい。
過去の採用経験からも、既存のメンバーや周りの友人の紹介が一番フィットする実感があります。やはり紹介(リファーラル)が最も良い採用手段ですね。
彼女は現在HoneとLOBBY両店に入り奮闘中。
当初はお店事情で半ば無理やりお酒を作るポジションに抜擢しましたが、今ではバーテンダーらしさも出てきて、面接の時にイメージした姿を実践してくれています。
僕達が現場にいなくても、お店の新しい顔になってくれると期待していたモエコ。
元々の僕達の周りのコミュニティの面々とも仲良くなってくれたので、今までの仲間を維持しながら新しい風を吹き込んでくれる重要な存在です。
音楽が好きな一面を活かして、新たな取組にもチャレンジしたりと幅を広げて活躍中。お店で音楽イベントもやりたいねなんて話しています。
こちらは彼女が企画してくれたLOBBY Master's Playlist。
毎月お店のPlaylistをアップデートしていきます。
Ogawa / オガ
オガは前職を辞めてまで飲食業に挑戦してくれたメンバー。
Honeの企画段階のnoteを見て応募してくれました。
前職では美容室の店舗開発や法人営業を行っていたとのことで、一般企業での勤務経験があることが目を引き早速面接を打診。
しっかりした会社員経験があることはどんな仕事にも転用ができるので魅力を感じます。
一方で、安定した正社員を辞めてまで僕達の様なベンチャー企業を志望してくれるのは嬉しい反面、イメージとのギャップが無いか不安もあります。
以前も何人か大企業から応募してきてくれる人がいましたが、飲食業の地道な面等リアルを伝えていくと「やっぱり辞めます」という人ばかりだったので、この時も半信半疑で面接に臨みました。笑
(「飲食業は体力仕事だし帰るのも終電以降になってしまうけど、生活大丈夫?パートナーに納得してもらえるかな?」等めちゃくちゃ聞きます。)
彼女は元々飲食業だけでなく& Supplyという会社のファンだったとのことで、お店以外の活動も見ていてくれ、僕達のこともよく知ってくれていた印象がありました。
今ではオガはHoneの1Fを担当し、バーテンダーとしてメキメキ成長中。
持ち前の明るさと人を大切にする性格で常連客をたくさん作ってくれています。
彼女に会いに来る人の多さを見ると、自分には到底できないことなので尊敬します。
また、前職の仕事経験を活かして神泉マップという街ガイドを社内で企画。デザイナーと協力して冊子を作り上げてくれました。
通常業務に加えて一つの冊子を作るのは簡単なことではありません。
自分で近隣の掲載店舗へアプローチして情報を集める等、足と時間を使って取り組んでくれました。
母体であるデザイン会社の背景を活かして、街全体を盛り上げる企画を展開するのは昔からの目標でした。ただ、僕達自身、日々の仕事に追われて中々取り組めていなかった領域だったので、現場から発案されて完成まで至ったのはとてもありがたいこと。
元々多様な仕事をしているバックグラウンドを持つ& Supply(僕達の会社)だからこそ、所属チームを超えて自分がやりたい事を実現できる環境があります。会社を通して自分がやりたいことを実現してくれることは、経営者としてとても嬉しいことですね。
An / アン
2Fのサービスを担当するアンも別業界からの転職組。
新卒から総合ディスプレイ会社の営業職として勤務していた彼女。
空間の造り手として働く中で、飲食店でのワインやお酒を中心としたコミュニティに魅力を感じ、自身もプレイヤーとして「場づくり」の運営を行いたいと考えていたとのこと。
アンの場合は、履歴書の志望動機が刺さりすぎて、書類先行の時点で決めていました。
前述の通り、一般企業からの転職応募に対しては、飲食業の光が当たるところだけを見てないかと懐疑的になるところ。
ただ、彼女の場合は大企業の仕事をする中で感じたもどかしさや、自分のやりたいことに対して回答を持った上で、強い意志とともに応募してきてくれたのがよくわかりました。
僕自身もバックグラウンドが似ていて共感できることが多かったので、意思さえあれば是非一緒にやりたいと打診し、8月末からHoneに参加。
チーム最年少の25歳ですが、ナチュラルワインへの情熱は一番強く、努力家で伝えたことをどんどん取り組んでくれ、皆の刺激になる存在です。サービスのスペシャリストで、週末のフロアは彼女がいないと回らないほど。
人懐こい性格もあって、どんなお客さんとも仲良くなれる陽の人です。
彼女もHoneだけでなく姉妹店のnephewに勤務しています。
これまで書いてきて分かる通り、僕達& Supplyのスタッフは複数の店舗で働くスタッフが多いです。
各店舗により必要とされるスキルセットが変わるので、教育面では効率が良いことも多いですし、メンバーの強みや弱みを補い合うことができます。
その分お店のオペレーションが安定しなかったり、シフトを組むのが大変だったりと苦労も多いですが、他店舗間での一体感を作れるなどメリットも多いです。メンバーが別店舗のイベントに顔を出したりするので、店舗を跨いでもメンバーの仲は良いと思います。
何より、人間一つの仕事を継続すると飽きてしまうことが避けられないので、「店舗を変える。ポジションを変える。」などなるべく多様な働き方ができる環境作りも意識してます。
Morimoto Hiroki / ヒロキ
最後に、外部メンバーとしてワインを選定してくれているソムリエのヒロキ君。
Honeは僕達にとって3店舗目のお店。これまではバーとカフェバーを経営していたこともあり、ナチュラルワインを取り扱うのはほぼ初めて。僕達自身もほとんど知識がないところからスタートしました。
レストランをやるからには、やはりワインが必要だ。ということで、日本橋のレストラン"CAVEMAN"のマネージャー&ソムリエである彼に相談し、立ち上げからワインの選定全てを担ってもらっています。
日々素晴らしいワインを選定してくれ、毎週水曜日の入荷日に出会うワイン達に胸をときめかせています。
来店されるワイン好きの方々も口々にラインナップをお褒めいただくほど。
ヒロキ君がいないとHoneは成り立たなかったと言っても過言ではありません。
他にも僕達に経験が無いレストラン運営の悩みやサービスの基本等を相談できる兄貴的存在、頼りにしています。(僕より年下ですが。笑)
未経験チームでレストランを運営する難しさ
ここまで読んでいただいた方には分かる通り、これまでのHoneのチームには経験者がシェフのトミー以外にいません。
僕達経営陣を含めて、客単価が高いレストランでの勤務経験がなく、ナチュラルワインも素人。
そんな状況なので、オープンからこれまでの6ヶ月間は一筋縄ではいかず、厳しいお言葉を多々頂いてきました。
でも、今までやってきていないのだから、直ぐにできるようになるのは無理がある。
だからこそ適切な努力をチームで継続することが大事。
各自が本等で勉強するのはもちろん、サービスロールプレイングをしたり、ワインの勉強会を開催したりと日々トレーニングを行っています。
とはいえサービス面がまだまだ追いついていないため、外部講師を招いた研修も始めました。
先日はTHE AOYAMA GRAND HOTELの支配人を務めるPlan Do Seeの掛井さんにサービス研修を依頼。全員で2時間みっちりとディスカッションをし、学びが深い機会になりました。
第三者やその道のプロから言葉をもらうことはすごく重要。
今まで不安に思っていたことの解決策を言語化してもらったり、他の組織の話を聞いて、その上で自分達が目指す方向性を皆で考えたりすることは普段中々できないので大きな意味がありました。
(組織の道標として示す内容が至っていなかった自分の課題にも直面しました。まだまだです。)
他には会社としてバー・レストランレポートという制度を作り、飲食店での体験に経費を使える仕組みを導入しています。
メンバーの皆が書いてくれたレポートを読んでいると、僕個人としても勉強になるのはもちろん、各自が見る視点が変わってきたりと成長が垣間見れるので、とても楽しみに読んでいます。
そんな、未経験チームで運営しているHone。
でもだからこそ、今後の伸びしろが大きいとも言えます。
お店に来て頂いた方々により良い体験が提供できるように、今後もチームとしてレベルアップを目指していきます。
Honeで共にレストラン運営にチャレンジするメンバー募集!
1店舗目のバーLOBBYから始まり、カフェの機能を持つnephew、そしてレストランであるHoneと、その都度新しい業態にチャレンジしてきました。
それぞれを極めたわけでも無いのに次の業態を始めてしまって、移り気が激しいことも自覚しています。
でも、「できなかったことが新たにできるようになる」って楽しいですよね。毎年何か新しいことを初めてしまうのも、あの感覚が病みつきになってるからかもしれません。
Honeも、今後さらにコーヒースタンドやランチ等新しい展開を考えています。
事業を広げていくにあたり、新たにチームにジョインしてくれる方々を募集しています。
未経験のメンバーが活躍する & Supplyなので、経験の有無は問いません。
別業界からお店づくりにチャレンジする方も大歓迎です。
Honeに限らず、系列店のLOBBY、nephewも新しいメンバーを募集しているので、興味がある方は是非ご応募をお願いします!
詳細は以下のリンクからご確認ください。
以上、今回はメンバーについて重点的に書いてきました。
日々サービスを向上できるようチームで改善しているので、是非各メンバーへ会いにお店に来てくださると嬉しいです。
次回以降は、具体的なHoneの収支状況にも触れていきたいと思います。
シリーズで継続していくので、是非また見に来てください!