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素直に、地道に継続する人が成果を出す。プリント工場がSNSで急成長した話。

ここ6年間、ずっと僕がWEBマーケティングのコンサルティングと広告出稿を担当しているプリント工場がある。その名も、「プリント職人」。

6年前に担当として仕事を始めたときの売上は数億円。今期は当時から4倍の売上高で着地する見込みだ。

広告はずっと僕一人が担当しているので、その貢献度に対して常に感謝の言葉をいただいている。だがフラットに見て、コンサルタントの僕の力よりも、彼らの地道な努力が大きな成長要因だ。

シンプルに、「やるべきことを素早く、地道に継続してくれているから伸びている」と実感している。

「何を当たり前のことを」と思われるかもしれないが、仕事での成長を目指すあらゆる人の参考になると感じたので、彼らの事業成長の要因について書いてみる。

プリント職人について

彼らとの出会いは約6年前の7月。
僕が独立したばかりでまだ明確な事業アイデアも無く、会社員時代の専門分野であるWebマーケティングの仕事で食いつないでいた頃だ。あるきっかけで社長の中島さんに出会い、年齢も感覚も近く意気投合し、共にお仕事をさせてもらえることになった。
僕の3歳上で経営の先輩ということもあり、悩み事があったら相談させてもらったりと、公私ともに頼りにする存在の一人だ。

彼らの事業は、その名の通りプリント工場である。Tシャツやパーカーなどのアパレルアイテムを中心に、バッグやエプロン等ファブリック商品のプリントを請け負っている。

顧客はアパレルブランド等BtoBに加え、個人からの少量生産も幅広く請け負う。BtoCでよくある利用シーンの一つがクラスTシャツ。文化祭の時にクラス皆で作るTシャツも主要な顧客カテゴリになる。当然BtoBの方が一度に受注する金額が大きいが、その分頼り切ると失注など不測の事態に経営が傾くリスクがあるため、BtoCの少量案件を複数並行し土台を維持する必要がある。

BtoB、BtoC、どちらも幅広く獲得しなければいけないビジネスモデルなので、ウェブマーケティングでは新規顧客を獲得し続ける役割を担う。

当然費用をかけた広告出稿も行っているが、今日書きたいのは彼らのInstagramについてだ。

現状、プリント職人のInstagramのフォロワーは1.6万人。プリント工場で1万人を越えているのは彼らを入れて2アカウントのみ。「工場」というビジネスの内容を聞くと、1万人以上のフォロワーを持つ凄さは想像できるだろう。

工場とSNSマーケティング

「工場なのにSNSマーケティングが必要なの?」と疑問に思う人もいると思う。実際、プリント業界のプレイヤー達はそう思っていたようで、誰もSNSに注力していなかった。そんな中、僕はこの業界を俯瞰して見た時、SNSの強さは大きな差別化要因になるし、弱者の戦略として取り組むべきだと考えた。

エンドユーザーにとって、工場というのは極論どこでもいい。技術の良し悪しはユーザーにはわからないし、比べようものない。

普段から使う日用品や日々身につける洋服等と違い、突発的に需要が発生するプリント工場の選択は、一番早く見つけた工場か、一番安い工場に流れる。サービスレベルに大きな違いを作るのが難しいプリント工場のビジネス。価格は必然的にどこも同じ水準に落ち着くので、そうなると、「いかに一番最初に問い合わせをする工場になれるか」が重要になる。

これはつまり、検索広告の勝負だ。
そのためどの工場も、「オリジナルTシャツ」や「プリントTシャツ」などの検索ワードでの上位表示を狙うことになる。上位表示を狙うには、1クリックに対してより高い金額を払わなければならない。つまり資金力勝負の戦い方になってくる。

当時のプリント職人の売上高は数億円。大きな工場と戦いあえるほどの資金力は無く、限られた広告費しかなかった。正面突破で検索面を主戦場としても戦況はひっくり返せない。そこで必要だと考えたのがSNSだった。

カラフルなインクを使ってプリントTシャツが出来上がる工程は見ていてもワクワクする。色とりどり、デザイン様々なプリントTシャツの実例をInstagramで投稿し続けていたら、今ニーズがない人でもフォローするかも。そしてニーズが発生した時に、プリント職人を指名してくれる人が増えるかもしれない。僕が関わり出した当初、Instagramのフォロワーは2,000人台だった。工場の中では多い方ではあったので、ポテンシャルを感じた。

「大手と正面から戦わずに、プリント職人に指名で依頼する顧客層の創出。」
その戦略の活路を開くために、Instagramへの注力を提案した。

社長の中島さんは当初は少し懐疑的だったようだが、数日後に「インスタの件是非お願いします!」と快諾をくれた。

それから一定期間こちらで運用してベースを整え、徐々にプリント職人へ運用主体を戻していくことを前提にルール化した運用を開始。
プリント職人内で内製化できるよう、投稿のテンプレート化とスタッフへのトレーニングを重ね、6ヶ月ほどで運用主体を引き渡して今に至る。
今現在は、完全に社内運用に切り替わり、当時のテンプレートも使っていない。

彼らと一緒に仕事する中で、僕自身が& Supplyの自社事業で培った成功事例を常にシェアしている。大きな変化があったのは、リールについての知見を中島さんにシェアしてからだ。

▼シェアした内容は、以下のnoteの記載そのまま

リールを開始してから僕達の自社ブランド「MYTONE」が一気に成長したことを伝えると、社長の中島さんはすかさず興味を持って前のめりに聞いてくれた。

僕は早速工場へ動画を撮りに行き、数本のリールを投稿してみた。このリールの反応は特段良くなかったが、中島さんは何かを感じたのか、それからは自分自身で動画を編集し、リールの投稿を続けてくれている。

既に10万を超えるバズリールも登場。リールを始めてからフォロワーが一気に増え、ここ半年だけでも6千人も増えている。リール開始前の伸び率と比べると顕著な差だ。

リールの投稿は中島さんが行っているが、素材は各社員が工場の現場で、スマートフォンで撮影しているそうだ。

SNS用に画像や動画をアップするLINEグループがあり、現場社員は全員日々写真や動画をそこに送るルールにしているとのこと。
動画一つ一つに緻密な企画は用意していないが、色々な人々がそれぞれの視点、角度で動画を撮るので、バリエーションが保てている。

▼中島社長と、Tシャツを折りたたむニューマシーンのシュールな動画

プリント職人のリールを見ると分かる通り、動画や企画のクオリティは重要視していない。それもそうで、中学生からお年寄りまで顧客層が幅広いプリント工場のビジネスには、親しみやすさの方が大切だからだ。

「SNSをやるなら企画からしっかりやらないと!」「クオリティが大事そうだしな…。」などと盲目的に思ってしまい手が止まる人も多いが、スピードと量の方が大事な局面もあることを覚えておきたい。

リールの直接的な効果か否か、HPのトラフィックも増えている。
それに加えて、最近では、更に驚きの効果が確認できた。

なんと、Google検索で、「オリジナルTシャツ」と検索すると、自然検索結果で2位に出てくるようになったのだ。6年前は2ページ目の下の方で、箸にも棒にも引っかからないレベルだったのに!

これは本当にすごいことだ。
長くWebマーケティングの仕事をしているが、自分のクライアントの自然検索が2位になったのは初めてのこと。

ビッグワードと呼ばれるこのようなカテゴリワードの検索で上位に来ると、無料で爆発的に集客を増やすことができる。この上位表示にも、SNSへの地道な取り組みが確実に寄与している。

当然売上も毎月過去最高を更新し続け、急成長期に入っている。
プリント職人は次なる土台作りも欠かさず取り組んでいるので、これからのさらなる成長が楽しみだし、僕自身もより一層貢献していきたい。

素直に、地道に継続する人が成果を出す。

今回の話で、僕自身最も勉強になったのは、中島社長の素直さと実行力、そして継続力だ。そして、それが成果を出すために一番重要なことなのだと改めて気付かされた。

業界内でいち早くSNSに着手する姿勢に加え、「工場会社の社長が自ら動画を編集し、インスタグラムのリールを投稿している」と聞くとなかなか驚きがあるし、稀有な存在だと思う。

このエピソードだけでも、「この人は他のどんなことにおいても、仕入れた情報に納得したらすぐに行動し、継続できる人である」と想像できるし、だからこそ事業を継続的に成長させられるのだと思う。

実を言うと、僕のnoteは自分の社員に向けて書いている。今回の記事で一番伝えたいのはここの部分。

「素直に、地道に継続する人が成果を出す」ということだ。

長くマーケティングのコンサルタントをやっているが、伝えたことを素直に、地道に継続する人は本当に稀だ。皆、なんだかんだもっともらしい言い訳をつけてやらない。

「他の業務があるから、インスタをやってる時間がない。」
「年齢的にわからない。」などなど。

大きな組織の一担当、という人ほどこの傾向が強かった。役職者の人ほど、自分でやる前から、「〇〇にお願いしてみよう」などと言い始める。当然組織における様々なしがらみがあるだろうから、足腰が重くなる理由も理解はできるが、自分も出来ないことをチームに指示しても誰も動かない。

結局自分達のことは、自分達でやらないと伸びない。それが自分で事業を行ってよくわかったので、最近は安易にマーケティングの仕事依頼を受けないことにした。内部の人が本気でやらなければ、劇的な成果は出せない。

「素直に、地道に継続する人が成果を出す」
成功する人とそうでない人の分かれ道はここにある気がする。

大事な学びとして身を引き締める。



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