儚い幻のような蕎麦
渋谷の奥、松濤に一軒の蕎麦屋の灯り。
女将一人が蕎麦を打ち、ツマミを仕込み、のれんを揚げる小さなお店。
彼女の蕎麦の師匠は伝説のそば打ち職人、繁盛したりミシュランの星を獲ったりするとお店を誰かに譲ったりひっそりと閉めたりして行方をくらます。
ほとぼりが冷めると違う土地でお店を開いたり。ちょっとシャイな蕎麦好きの変わり者。
知花のカウンターに座ったら、いつもお料理は女将におまかせ。
ただ座っていれば滋味深くて工夫と発想が溢れるような小皿がどんどん出てくる。
それは、素材の生命力に溢れたシンプルな天ぷらだったり。
ちょっと驚きの食材の組み合わせだったり。
女将の調理風景は喜びいっぱいでいつも笑顔。
斬新といえば斬新だけど、食べるとこれしかないよねって組み合わせの牡蠣が体にしみじみしたり。
さらっと松茸が供されて驚いたり。
もちろんお蕎麦も最高でね、いろいろな蕎麦をいただいたなあ。
大好きな素敵なお店だったけど、残念ながら今は、もうない。
店を閉めるお知らせをいただ女将と一緒に呑みながら在庫食材をいただき、そしてひっそりと暖簾を下ろした。
美味しい店、素敵な店は儚いものさあ。
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