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TAR/ター

【何もかもコントロールしていた者が、何もコントロール出来なくなるとどうなるのか】

やっと鑑賞出来ました。
絶対にガラガラやと思ってギリギリに言ったらほぼ満席でした。
上映時間が約2時間40分と長尺である事、前半の感じを見てかなり不安になったのですが、後半で一気にまくってきました。
「面白い!ぶち上がる!」という感じではなく色々と考えたくなる感じの映画でした。

冒頭記述した通り、前半は指揮者として何もかもコントロールしているターを中心に描かれます。
世界有数の指揮者であり、パートナー・子どももいて、本まで出版して、何不自由ない様が映されます。
権力は絶大で、授業で自分と反する意見のもつものは弾き、副指揮者が気にいらなくなれば辞めさせる。
権力もある。金も地位も名誉もある。愛する家族もいる。
そんなターがある事をきっかけに何もコントロール出来なくなっていく。。。

みたいなお話でした。
メトロノームの登場からコントロールが効かなくなっていくのがオシャレだなと感じました。
リズムをメトロノームに支配され、ターの人生にも綻びが見え始めてくる。

パワハラ、セクハラ、アカハラ。
全てをやっているように“見えてしまう”ター。
「核心はないんだけど、あの人だったらやってそうだよね。」
そう言われてもおかしくない人物に見えました。

そんな彼女がクリスタの自殺をきっかけに、SNSを中心に見えない何かに襲われていく。
オルガが忘れた人形を渡しに向かった先で、得体の知れない“何か”に襲われたのはそれを暗示していたのかなと思います。
ここから地位も名誉も家族も失い、挙句の果てに自分の曲までも奪われてしまうター。

転落しきってやつれているケイト・ブランシェットの演技・表情が素晴らしかったです。
皺が増えて老けて見えるのが良かったです。

その後ベルリンを追い出されてアジアのどこかの国に拠点を移すター。
疲れを癒すためにホテルにオススメされたマッサージ店に行く描写。ここが本当に意地悪だなと感じました。
実はそこは風俗店であり水槽と呼ばれる女性が待機しているガラス張りの部屋の中から女性を選ぶ描写。
半円上の水槽はオーケストラの配置と同じ。奇しくもチェロ奏者のオルガと同じ位置にいる5番の女性に睨まれるター。
オーケストラでも風俗でも、権力のある者が好みの子を指名して権力者を満足させるという構図が出来ており、そこを重ねるのが本当に巧みだなと感じました。
そらゲロも吐きますわ。

ラストはちょっぴりハッピーエンドなのが良かったですね。
ターにとってはバッドエンドなのかもしれないですが。。。
モンスターを討伐するゲームのコンサート。ターというモンスターを討伐出来たんですかね、、、?

満足度は高い作品でした。
もう一回鑑賞して、最初の対談の言葉がどのくらい真意だったのかを確認したいです。

【その他メモ・独り言】
・オルガと飯食ってる時のターのスケベ顔。
・副指揮者の部屋でこっそり盗んだ物なんやったんやろ。
・介護されてたおばさんのシーンはわからなかった。

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