写真を読む日々#8
写真家 小林紀晴氏を知ったのは、なんとなく街をぶらぶら歩いていたある冬の日だった。ちょうど京都写真美術館の2階で写真展があったのだ。無料だったので、何気なしに鑑賞しに行って、彼のアジアをうつした写真に、アジアの空気感をうつした写真に、その撮影地に居合わせたいと強く思った。
そんな彼の写真にグッと心を掴まれたのを覚えている。
それから著者の作品をよりみてみたいと思った。
小林紀晴「最後の夏 1911」
23歳の小林紀晴氏が、会社を辞めアジア放浪にでるまでの2ヶ月の間に撮りためた写真を、その時の心境ととも文章で書き綴った本だ。私写真的な作品。揺れ動く心境を覗き見しているよう。
小林紀晴「DAYS ASIA」
小林紀春氏がアジア放浪中に撮影された写真がまとめられた写真集。
モノクロだけでなくカラー写真も散りばめられている。
決して気取らないような、その場に馴染んだような、ずっと昔からその場にいるような、そんなことを感じる写真が印象的。
十何年も昔に取られた写真だけれど、想像するに現代とそう多くは変わらないアジアの景色なのではないかなと思った。
被写体に映り込むものにスマートフォンといった昔はなかったテクノロジーや小綺麗なビルが映り込むだけで、街の雑踏な雰囲気は昔も今も大きくは変わらなさそう。
写真は時間を保存する媒体のようだけれど、アジアの日常はノロノロと進んでいるのではないか。
そんな私はタイ、シンガポール、台湾をちょろっと行ったくらいしかないので勝手な想像だけれど。
小林紀晴「DAYS ASIA」
著者がアジア放浪中に出会った日本人にインタビューし、写真と文章でまとめた読み物。若者から老人まで何らかの理由で日本をでて海外に暮らす人々の心境を明かしている。
なんだか彼らの心境にうなずける部分もある。
古い本なので、インタビューされた彼らの現在はどうなっているのだろう、そんなことをふと思う。
当時の彼らは、写真と文章の中に一生とどめられたままだ。
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