【第18話】今日こそ、僕が「白血病」と向き合った日
【第17話】の下痢が続いた後、真夜中。
僕の意識がもうろうとする中、主治医ではない当直の先生らしい人が、目の前でこう言いました。
「◯◯さん、分かりますかー!? 今、『好中球減少症』で、危ない状況です!抗菌薬剤という薬を使ったことはありますか!?」
初めて聞いた名前の薬だったので、「分かりません」と応えます……。
実はその夜、ベッドに寝ていると、だんだんとお腹がムカムカしてきて、次第に、腸が締めつけられるような痛みが出てきたのです。
下からも出し、上からも吐き出しを繰り返していると、そこから先は、体調不良のオンパレード。発熱、嘔吐、腹痛、息苦しさ、と夜中まで続きました。
嘔吐を繰り返しますが、夕飯に食べた食材とは色合いのちがう、赤黒い色をしています。それが、血なのか、薬なのかは、僕には分かりません。
とにかく、薬を飲んでは吐き、唾を飲んでは吐き、を繰り返しているのです。
「◯◯さん、採血検査です。今、静脈からは採られないので、動脈から採りますね」
「採血できたら、CTスキャンへ行きますね」
ベッドの周りに人や機械が増えていったり、ストレッチャーで押されたり、これでもかというほどの大騒動になっています。
下は、意識がもうろうとする中で、医者や看護師さんたちから聞こえてきた単語たち。
「好中球減少症」
「腸炎」
「敗血症」
同時にいろいろな病気を引き起こしていたようですが、みんな心配そうに背中をさすってくれました。朝方、だんだんと薬が効いてきたのか、嘔吐は落ち着いてきました。
当日の昼間、「今日は強い抗がん剤をうちます」とのことだったので、また副作用に耐えていればよいと思って嘔吐を繰り返していました。
しかし、今回の相手は、副作用ではなく、合併症だったのです。
※以下、医学的な説明ではありません。僕が解釈しているイチ個人の話です。
今、治療に使っている抗がん剤という薬は、がん細胞となっている血球はもちろんですが、僕の数少ない正常な血球や、新しく血球をつくる機能までも退治してしまうようです。
そうなると、血球の数は減りに減って、普段は、なんてことのない菌にも負けてしまい、今回みたいな感染症を起こす可能性があるとのこと。
白血病は「血液のがん」であることや、医療技術の進歩で、生存率が上がっていることも前に書きました。
今、僕が向き合うべきなのは、
「白血病」よりも「感染症」
そんな気がしていています。なぜかというと、白血病の治療は主治医に任せるしかありませんが、
感染症の予防は、僕にもできることが多いからです。
どちらにせよ、僕はまだ向き合えてなかった。今日こそ、この病気と本気で向き合えた気がしたのです。
そして、今、出た答えは、僕は知る必要がある。てか、知りたい。
自分の身体にどんなことが起きているのか、それを、どうやって治してくれようとしているのか、そのために、僕は、何に気をつけなければいけないのか。
(へへ、よく考えたら生きた教材研究や笑。)
2023.11.21