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B1第10節長崎-アルバルク。シーズンベストゲームじゃない?

第4Q残り55秒
長崎ブランドリーのロールターン一閃。


決まってしまった。


70-75。アルバルクは5点のビハインドです。
残り時間では互いに1回か2回あるかどうかの攻撃機会です。ファウルゲームに出ても可能性は少ない。


終わってしまったのか。
その時、そう思ってしまいました。


しかし、反攻にでたアルバルクがゴール下でサイズがブランドリーからファウルをうけてフリースロー2本を獲得します。
残り49秒、FT2本決まればディフェンスでワンストップする可能性もある。まだわからない。
だが、これも長崎ブースターの大歓声のブーイングに押されてサイズは2本落としてしまいます。


むむ〜ん、厳しい。 


しかし、アルバルクメンズは誰も諦めていませんでした。



FTのリングからこぼれたボールをロシターがタップ。これを小酒部がジャンプ一番抑えてORを獲得します。これを→安藤→テーブスと展開してサイズのピックを使ってテーブスがプルアップ3Pシュートを射抜きました。


残り34秒。73-75、2点差です。
ここ止めれば、ある、あるよこれ。

そして、長崎のエンドイン。アルバルクは前から当たりに行きます。
エンドスローは山口。バックコートエンドライン近くまでボールをもらいに行った狩俣に小酒部が激しくプレスをかけます。苦しみながらスティーブ・ザックに向けて出したボールを安藤がスティール。
テーブスに繋ぎます。
テーブスはサイズとのピックからフリースローライン後ろ、ペリメータジャンパーを放ちます



チームで繋いだ放物線はリングに吸い込まれていきました。


残り20秒、75-75同点!


万事休すの状態から生還したアルバルクは、勢いのままオーバータイムに突入。
ロシターのエルボージャンパーでオーバータイムの先制点を挙げたアルバルクは一進一退の5分間を8-6の2点差で勝ち越し、敵地長崎ハピネスアリーナで行われたB1リーグ第10節長崎-アルバルクの第2ゲームを83-81で勝利しました。

これぞ、バスケットボール。
最後までヒリヒリする最高のゲームでした。
(でも、実は私は現地に行けていない)
まだ言うには早いですが、今のところ、今シーズンベストゲームです。
今回は激アツの長崎戦をおさらいしてみます。

ゲーム雑感

第1ゲーム アルバルク 89-52 長崎


第1Q 19-17   第2Q 26-12
第3Q   20-14          第4Q    24- 9

熱き指揮官モーディ・マオールHCを招聘して昨シーズンとは全く違うチームに変貌した長崎ヴェルカ。昨シーズンはpossは76.4と速く、得点、失点共に80点以上で手数が多く攻撃的でした。しかし、今シーズンはpossは70.0、得点69.9、失点74.2点とテンポは遅めでディフェンシブなチームになりました。そのディフェンスはハードショウを主体としたとてもアグレッシブなものでした。

さて、ゲームは最終的には37点差の大差がつきましたが、第2ゲームの結果を見てもわかるように双方の実力は僅差であるように感じます。では、第1ゲームに差がついた原因が何だったのでしょう?
それは、第一にゲームの入りです。アルバルクが長崎のインテンシティ高い激しく当たるディフェンスに受け身にならずに、かつクレバーにオフェンスを遂行できたことにあります。その証左は前半のTOの数に端的に表れています。


アルバルク TO 1Q 2  2Q 1  
前半 3         トータル 10
長崎    TO 1Q 1  2Q 7   
前半 8          トータル 19

長崎のディフェンスはボールマンに対してはもちろんですがマンマッチは接近して付いて、激しくデナイしてきました。PNRにはビッグマンのDFがショウに出ます。
ショウに出られるとPGやウイングのスクリーンユーザーは圧力をかけられ、TOを狙われてしまいます。しかし第1ゲームではアルバルクは対策をしていました。

その対策とは、ハンドオフ+スリップ&ダイブです。
エントリーは高い位置で広くスペースを取ります。(カッティングしやすくDFの移動距離を多くと取るためです。)
テーブス(大倉)から左ハイウィングに出たロシターへパスを出してハンドオフ。
ロシターはそのまま右サイドウイングに抜けます。
(もしくはそのままリピックをスリップしてダイブします。)


次に連続して右エルボーからサイズ(グダイティス)がピックに向かいますが、これをヒットさせずにスリップして左スロットへダイブします。
DFはショウに出ますが、テーブス(大倉)は圧がかかる前に素早く⇒サイズ(グダイティス)へパス。もしくは⇒ロシター⇒サイズ(グダイティス)に展開してインサイドペイントを狙うか、→ロシタ⇒シューター(メインデル、小酒部、ザック、安藤)にキックアウトをして3Pを狙っていました。

2Q残り6分46秒
①大倉→④ロシター
④ロシターHO→大倉
赤⑤グダイティス スリップ&ダイブ
青⑤エドゥ ハードショウ
①大倉→④ロシター
④ロシター→⑤グダイティス
青⑤エドゥファウル


ところで、この日のアルバルクの3Pは13/24(54.2%)とついにブレイクスルーしていました。以前からも書いていましたが、これは必然です。3Pのタレントはそろっているアルバルクです。打つべき3Pを打ち続けることで必ずアルバルクの2P偏重のイメージが変わるときが来ます。実際この日の長崎スカウティング陣は驚いていたはずです。(その話はまたの機会に)

さて、スリップ&ダイブに戻します。アルバルクはこのプレーのエントリーでハンドオフを1回かませています。
1アクション入れることで次のスリップ&ダイブへのDFの対応を遅らせパスを出しやすくなるからです。
第1Qは長崎のDFのプレッシャーに慣れませんでしたが、第2Qは多く得点をこのプレーで重ねて前半で16点ものリードを奪いました。



後半に入って第3Qには長崎があまりショウに出なくなりました。
と、同時にアルバルクはPNRのスクリーンをヒットさせに行きます。
第3Q残り8分18秒にはメインデル、サイズのHO+リピックにサイズのDFエドゥに小酒部がバックスクリーンを当てるスペインPNRから小酒部がポップしてメインデル→サイズ→小酒部がトップから3Pを決めています。
(第3Q残り8分7秒 51-31)


最後第4Qにはアルバルクのサードユニットともいえる福澤、岡本、菊池もプレータイムを確保します。第4Qの得点24-9と15点もの得点差を生じさせました。プレーは同じスリップ&ダイブを遂行します。フレッシュに出てきてチームにエナジーを与えるベンチメンバーは強度も技術も落ちません。

最終スコアは89-59ですが、長崎にはブランドリーの速さ、マーク・スミスの技術の高さにアイソレーションで押し切られる場面も散見されていたました。第2ゲームではこの2人に苦しめられることになります。


第2ゲーム アルバルク 83-81 長崎


第1Q 24-26  第2Q 18-17
第3Q 19-16  第4Q 14-16
OT 1    8- 6

45分間ずっと接戦でした。まずスタッツを見てみましょう。
possはアルバルクが79.5、長崎が80.8です。延長5分間があってわかりにくいのでpaceにするとアルバルクが70.6、長崎が71.8でほぼ両チームのほぼ平均値のスピード感で、すこし遅めのディフェンシブな戦いです。


アルバルクは2Pが20/40(50.0%)、長崎は23/41(56.1%)。3Pがアルバルク7/18(38.9%)、長崎6/24(25%)です。アルバルクは3Pの確率は良いもののあまり打てませんでした。その代わりフリースローをたくさん獲得しています。しかしブースターの圧のためか、あまり入っていません。22/33本(66.7%)。FT試投数が33本って異常に多いです。これ、FTRって数値、オフェンス回数に対するFTの割合のことなのですが、56.9%(長崎30.7%)もあるんです。おかしい。


一方、長崎のフリースロー17/20(85%)これだって試投数が多い。そして長崎のFT確率も、とても高い。おかしい。



つまり、両チームバッチバッチに当たりあってファウルがかさんでファウルトラブルになったってことです。(テーブスもファウルトラブルで前半あまり出なかったし、マーク・スミスはファウルアウトになっています。)
それで、アルバルクはアリーナの圧に負けてFT落としまくって、逆に長崎のFTはアリーナの後押しを受けて入ったってことでしょうか。

さて、高さがアルバルクに劣る長崎ですが、リバウンドはアルバルクと互角です。
アルバルク8-28-36、長崎8-29-37。互角というより長崎が勝っています。
OR%アルバルク21.6%、長崎22.2%でした。この日の長崎はボックスアウトを徹底してサイズを押し出しザック、森川、スミス、エドゥなど4人でリバウンドを取りに行っていました。見習うべき点です。頑張っていました。


ところで、テーブスは試合後のコメントでこう語っています。「今日の長崎さんは昨日よりハードに来ることは分かっていたとはいえ、想像を超えたインテンシティ高いディフェンスでタフな試合になって、なかなか自分たちの流れに持ち込むことができませんでしたが、試合終盤に取り戻せたことは良かったと思います。」


これは本音だと思います。長崎は昨日対策されたショウディフェンスをやめないでさらに強度を高める方向に振ってきました。
ディフェンスはハードショウ、ブリッツです。しかもオールコートでダブルチームに来ます。ほんとによくオーバータイムまで足があったと思います。

一方、長崎のオフェンスです。長崎の攻めはシンプルでワンピックでドライブ、アイソレーションです。ブランドリー、スミス、山口がオフェンスの起点でした。
特にブランドリー(201㎝)には37点奪われました。彼は止められませんでした。
登録はPFですが、トップからハンドリンクしてスティーブ・ザックとPNRします。オフェンスの役割としては、もはやガードです。

ブランドリーとザック、エドゥのビッグマン同士のPNRなのでDFとしては本来スイッチしても問題ないのですが、問題はブランドリーがロシター、サイズ、グダイティスとの1on1でスピードでぶっちぎってしまうことです。そしてドライブで抜きにかかればゴール下で一人ヘルプに入るのですが、そこから押し込んで決めるかファウルドローンもしくはキックアウト、ディッシュと多彩でした。彼は前日のパフォーマンスを完全に超えていました。


それでもアルバルクはプレッシャーに耐えながらピック、リピックからショウを割って数的優位をつくりペイントの得点を重ねてスコアを後ろから食らいついて最後に冒頭のドラマを作り上げました。

また一つチームの成長を感じられた長崎のシリーズでした。
さて、バイウィーク明けは連戦です。
次は水曜ゲーム天皇杯の雪辱に燃える齋藤拓実率いる名古屋Dをホーム代々木第一に迎えます。疲れが残る次節でしょうが、強度が変わらず逆にエナジーがブチ上がるベンチメンバー総出でタフな試合を勝ち抜いてもらいたい思います。

Photos by Kii

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