B1第17節アルバルク-名古屋D。エナジーと3Pが浮揚のカギ
天皇杯、敵地での千葉戦に勝利してホクホクして年末年始のリーグ戦4連敗の痛手を忘れていたアルバルカーズ諸氏は一緒に思い出したはずです。
リーグ戦は天皇杯QFの勝利は関係ないことを。そして17節1/11(土)の名古屋Dとのゲーム1の敗戦で5連敗を喫してしまったことを。
しかもこの負けは名古屋Dのトランジションとチェンジングディフェンスに翻弄されて、いいところなく完敗してしまいました。ゲーム2は安藤の3Pが当たって勝利しましたが、後々スタッツを見てみると手放しで喜べる数字ではなかったので、今節でわかる相手チームのアルバルク対策の傾向と、これに対するカウンターは何であるべきなのか?考えてみたいと思います。
ゲーム①名古屋Dがアルバルクに仕掛けたこと
アルバルク 61-78 名古屋D
第1Q 21-27 第2Q 10-16
第3Q 15-26 第4Q 15- 9
スタッツから見えるアルバルク苦戦の様子
この日のスタッツを見るとアルバルクのショットは手数も確率もすべて名古屋Dに届きません。
アルバルク
2P 17/34 50.0% 3P 4/27 14.8%
FT 15/22 68.2%
名古屋D
2P 21/38 55.3% 3P 6/29 20.7%
FT 18/25 72.0%
POSSはアルバルクは71.7、名古屋Dは74とアルバルクからすれば速いペースで完全に名古屋Dの土俵上で試合が行われたことがうかがえます。
OFFRTG(100回の攻撃で何点入れたか)はアルバルク85.1、名古屋D105.4と当然ながらオフェンス効率が悪かったゲームといえます。
アドバンテージのはずのリバウンドとセカンドチャンスポイント(SCP)まで名古屋Dに上回られています。
アルバルク
OR14-DR25-TR39本 SCP 11点
名古屋D
OR17-DR28-TR45本 SCP 16点
さらにアルバルクはAS16本と平均値19.4本の2割減の数字です。ボールが回っていませんでした。
そしてTOは15本と多くミスも多発しています。さらにTOからの得点は21点も許しています。(※TO%は17.5%)
また、ファウルは22回犯しています。これはタフなゲームであったことを物語っています。
そして、名古屋DのFTが18/25本(※FTR37.3%)であることを考えるとアルバルクのファウルが相手の得点につながっていた傾向がうかがえます。
※TO%:攻撃回数におけるTOの割合
※FTR:得点におけるFT試投数の割合
効果的だった名古屋Dのトランジション
名古屋Dとの対戦で注目すべきはリーグNO1のファストブレイクポイント(FBP)チーム(名古屋D、1試合平均14.0点)とリーグワーストFBPチーム(アルバルク、1試合平均5.9点)だということです。走られて速いペースでゲームをすれば不利であることは当然です。わかっていますが、名古屋Dのトランジションは抜け目なかったです。
それが第1Q最初の応酬です。
アルバルクは最初のセットでテーブスが左ローポストアタックを仕掛けます。小酒部が左エルボーのサイズのスクリーンを使ってカールインしてペイント中央で構えます。そこにハイポストからロシターがダウンスクリーンをかけて小酒部がトップに上がります(JIPPER)。テーブス→小酒部。
そこからサイズのピックを使ってサイドに切れてオープンで3P。それなりに手数をかけた先制点です。
残り9分17秒 3-0
刹那! チータムエンドイン→齋藤→→→逆サイドマーフィー。ファストブレイク! 3-2
わずか6秒です。
さらに、その直後アルバルクのエンドインに対してはオールコートで激しくマンツーマンで当たってきます。
カウンターで機先を制されたアルバルクはリズムを崩していきます。
名古屋DはDRやエンドインからのファストブレイクとアルバルクが戻ってマッチアップにつく前にドラッグスクリーン一発で今村が3Pを決めるなどのアーリーオフェンスで速い攻撃を仕掛けていました。
名古屋Dの強度の高いディナイディフェンスとチェンジング
一方でアルバルクは名古屋Dのディフェンスに翻弄されてしまいました。
名古屋Dのディフェンスの基本はマンツーマンからPNRにはショウに出ます。
パスコースを激しくディナイしてボールマンへは圧力を激しくかけます。
そこからのSTは11本にも及びました。
もちろんエンドインからオールコートで強く当たってくる場合もあります。PNRに対してはダブルチーム(ブリッツ)で仕掛けにも来ました。(第2Q残り3分11秒)
また、3-2ゾーン、2-3ゾーンを急に使ってくることもあります。
さらに、2-2-1のゾーンプレスから2-3ゾーンさらにマンツーへのチェンジングもありました。(第2Q残り1分47秒)
猫の目ディフェンスです。アルバルクメンズは面食らったはずです。
それでもゾーンに対してはロシターをハイポストに立たせてポストへの出し入れでハイローやミスマッチを狙うことで対応はするのですが、ゾーンは1ポゼッションだけ見せて、すぐに激しく当たってきたりするので強弱への対応は難しかったようにみえました。
ところで、名古屋Dディフェンスの引出しには驚ろかされました。
第3Q残り6分48秒
アルバルクはメインデルをユーザー、グダイティスがスクリーナー、小酒部がスペインピッカーとしてハンドオフからのスペインPNRを仕掛けました。名古屋Dは今村がメインデルを完全にトップロックしてグダイティスへのハンドオフに行かせませんでした。これに対してアルバルクは小酒部がトップに上がってグダイティスからボールを受けます。
小酒部がPNRユーザーにメインデルをスペインピッカーに変化させる2次攻撃を仕掛けたのです。
小酒部がグダイティスのスクリーンを使って左サイドから外側をドライブ。メインデルはエサトンを止めに入ります。グダイティスはペイント中央からダイブです。これは決まるだろう。
まさか、これに対しても小酒部のDF今村とメインデルのDFマーフィーがスイッチ。小酒部はペイント外でマーフィーに止められます。グダイティスは齋藤がローテーションしていったんシール。すぐにエサトンが詰めました。小酒部のグダイティスへのパスはリングに挟まってジャンプボールシチュエーションになりました。
準備してたであろうアルバルクの連続スペインはつぶされました。名古屋Dディフェンス恐るべしです。
ゲーム②リバウンド、SCPそして3Pがカギだった。
アルバルク 77-69 名古屋D
第1Q 23-13 第2Q 14-20
第3Q 19-15 第4Q 21-21
アルバルクペースの第2戦。スタッツから読み解いてみる
第2ゲームは第1Qにアルバルクがインサイドの得点と3本の3Pで10点のリードを奪うものの第2Qに逆襲に合い、第3Qには一時1点差に詰められました。しかし第3Q終盤、要所で安藤の3Pでリードを広げたアルバルクが勝利して難敵名古屋Dを破って連敗を脱出しました。
このゲームのPOSSはアルバルク65.9、名古屋D66.4とペースとしては遅い展開です。アルバルクのペースでゲームが進んだと言って良いでしょう。
OFFRTGはアルバルクが116.8、名古屋Dが103.9とアルバルクは大幅にオフェンス効率が改善しました。
ショットの確率は3P以外は名古屋Dが上回っていますが、ショットの手数と相手にフリースロー打たせなかったことでアルバルクが優位を保ったと言えます。
アルバルク
2P 22/45 48.9% 3P 7/21 33.3%
FT 12/18 66.7%
名古屋D
2P 22/32 68.8% 3P 6/23 26.1%
FT 7/10 70.0%
リバウンドとSCPはアルバルクがカムバックしました。
アルバルクのOR%は43.6%と名古屋Dの25%です。比べると圧倒的です。
数字的にはこの試合は相手にフリースローを打たせなかったこと。ORを確保して攻撃回数を増やしてSCPを奪ったこと。相手のアドバンテージのFBP(13点)とこちらのSCP(21点)がネットで上回ったことが勝因と言えそうです。
アルバルク
OR17-DR21-TR38本
SCP 21点 FBP 2点
名古屋D
OR 7-DR22-TR29本
SCP 6点 FBP 13点
勝ったけれど、手放しで喜べない理由
ところで、これまでアルバルクは2Pの試投数を多く、確率を高くすることでコツコツ得点するチームでした。アルバルクは総得点に対する2Pの比率52.8%、3Pの比率が28.9%、FTが18.3%です。(名古屋Dは2P 47.9%、3P 34.7%、FT 17.3%)
つまり、アルバルクはペイントの2Pの得点をベースに戦っているチームとも言えるのです。
今、その生命線がライバルチームの対策によって脅かされていることに気づかされたのです。
この日のアルバルクのペイントの得点は34点(17/38本44.4%)、名古屋Dは38点(19/25本76%)です。
さらに詳細にするとアルバルクはペイントのうちゴール下(11/18本61.1%)
ペイント上部(6/20本30%)
名古屋Dは
ゴール下(15/17本88.2%)
ペイント上部(4/8本50%)
名古屋Dのペイントの確率76%は出来すぎですがファストブレイクが多いことやバックカットダンクなどゴールの近くでの試投数がペイントの試投の68%あり、イージーに得点していることがわかります。
一方アルバルクはペイントの試投のうちゴール下の試投は47.4%でペイント上部の試投は52.6%で半分以上に及びます。ましてやペイント上部の試投ではフローターなどクロックギリギリで打たされたショットが多く相手の対策によってタフショットにさせられています。
そのためにこの日は、ペイント上部のショット成功率は30%という残念な数字となっています。
ここのところなんとなく感じていました。
アルバルクはライバルチームの対策によってインサイドで点が取れなくなってきているのではないか?という仮説が浮かび上がってくるのです。
ポジティブなポイントはリバウンド、SCP、そして3P
しかし、アルバルクには変わらないストロングポイントがあります。
それはリバウンド、SCPです。
とはいえ、琉球、三遠、島根などリバウンド、SCPに秀でたチームはほかにもあるわけで、問われるのはゲーム内でのバランスになるわけです。
そういう意味では、アルバルクはあまり打たないと言われている3Pが第2ゲームの勝因の一つでした。
スタッツを見るならば2Pは名古屋Dに確率で下回り手数のおかげでやっと同じメイク数となっています。したがってやはり、この日の勝利を引き寄せたのは小酒部2本、安藤4本の3Pであったと思います。
今節の名古屋Dはアルバルクのオフェンスを激しくディナイすることとスイッチ、トリプルスイッチ、ダブルチーム、ローテーションでディフェンスを構築して、なるべくペイント上部、エルボーでタフショットを打たせるように仕向けていました。(数字で見る限りそれは成功しています)
アルバルクのオフェンスのベースはペイントアタックにあることは間違いありません。
ただし、このゲームでは第1Qにテーブスとサイズのショートロールに加藤、チータムがスイッチ、加藤とマーフィーがトリプルスイッチしてサイズに対応しましたがサイズがコーナーにキックアウトして小酒部が3Pを見舞った1本目。マークされていた安藤がロシターとのワンピックで3Pをメイクした2本目。これらの3Pが名古屋Dのディフェンスにフローターは打たせても3Pはまずいという迷いと混乱を生じさせて流れをアルバルクに引き寄せたのだと思うのです。
安藤も今シーズンは3Pが当たらない苦しい時期を過ごしてきました。それでも3Pを打ち続けてきました。アルバルクは打つべき3Pを打ち続けることです。
残り30試合。アルバルク浮揚のカギはリバウンド、SCP、そして3Pにあると思います。
オールスターを挟んで後半戦も引き続きアグレッシブなバスケットを見せてほしいです。
photos by yu