B1第16節アルバルク-SR渋谷。悩めるアルバルクの処方箋
11月のバイウィークが明けてからアルバルクは8勝6敗(.571)と調子を崩しています。年明け1月4日、5日ホーム代々木第一体育館でのSR渋谷戦も年末のアウェイ群馬戦に続いて連敗となり4連敗となってしまいました。
バイウィーク明けのアルバルクの不調はアドHCの不在、テーブスのロスター外などの理由は考えられますが、戦術的な部分で対策されて解決できていない部分があるようにも見えます。今回はアルバルクが勝てていない原因が何か?
では、どうすれば糸口が見つかるのか、SR渋谷戦の戦いぶりから考察しようと思います。
SR渋谷のアルバルクに対するディフェンス
このところアルバルクが敗戦した組織力のあるチーム、島根、三遠、群馬は各々アルバルクのやりたいオフェンスを止めに来ていたように感じます。PNRでペイントを割れずにタフショットを打たされたり、スペインピックがくずされたり、思うようにクリエイトできなくてショットクロックがなくなり雑なショットを放ってしまうケースが多かったと感じたアルバルカーズは多いと思います。
アルバルクのモーションオフェンスにはパターンがあります。
ハンドオフからピンダウン+PNR。サイドからスペインピックのエントリーする場合はスペインピッカーの小酒部、メインデルらの動きはダウンスクリーンをカールしてS字に回って入る場合、AIカットからローポストに切れて入る場合、クロススクリーンから変化する場合など何パターンか同じエントリーをしてはいります。つまりスカウティングをしていればわかりやすいはずです。
バイウィークでスカウティングする時間はありましたし、12月に入って苦戦するようになった一因ではないかと思います。
ディフェンスの設計ができてしまえば、あとは遂行力です。
では今節のSR渋谷はどのように守ったのか?
SR渋谷には第1ゲーム56得点。第2ゲーム63得点と完璧に抑えられていました。
アルバルクのOFFRTG(100回の攻撃で何点取れているか)は86,100でした。今シーズンのアルバルクの平均は109.9ですので100以下の数字では勝つには厳しいです。
ボールの出しどころ受けどころを徹底ディナイ
まずSR渋谷は大倉、福澤、岡本アルバルクのPG陣とロシターがボールを持つとビッタリくっついて起点をつぶしにかかります。さらにパスの受け手メインデルや小酒部へのパスコースに大貴やクレモンズが立ちはだかりボールマンは孤立していました。
また、大貴とクレモンズは小酒部やメインデルに対してペイントにカールインしてきたり、クロススクリーンへ入ってくる場合はトップロックして上がらせない動きを見せてスペインピックなどのスクリーンへの参加を拒絶をするディフェンスをしています。
こうして、ボールが回らないアルバルクはクロックが迫ると個での打開を計ります。その結果ASがとても減っています。第1ゲーム13本、第2ゲーム12本は平均AS20本近いアルバルクからすると4割減の数字です。
ビッグマンドロップ、ガードにはファイトオーバー&チェイス
アルバルクのオフェンスを苦しめるディフェンスはやはりこれのようです。
アルバルクのハンドオフ、PNRにはSR渋谷のホーキンソン、トラビスはドロップしてロシターやサイズのショートロールに備えています。
スクリーンユーザーの小酒部、メインデルには大貴、クレモンズが激しくファイトオーバーしてプレッシャーをかけます。
ドライブ、ショートロールしてもディフェンスにあってペイントのゴール近くになかなか侵入できないため、ガード陣、ロシター、サイズはペイントの遠めの位置やエルボ-からのジャンパーやフローター、フェイドアウェーを打ちます。得意なショットですが、プレッシャーが強くタフショットにさせられるので確率が上がりませんでした。
第1ゲームペイント上部13/30本(43.3%)ペイントゴール下5/9本(55.9%)
第2ゲームペイント上部11/22本(50%) ペイントゴール下9/14本(64.2%)
ファウルを抑えてFTを打たせなかった。
特に第1ゲームです。
アルバルクはFTを0/4本。1本もFTから得点できませんでした。
アルバルクは平均で得点の18%をFTで稼ぎます。14点はFTから取っていることを考えるとFTを与えなかったSR渋谷は物凄いディフェンスをしたことになります。
SR渋谷のアルバルクに対するオフェンス
ショウディフェンスに対するオフェンス
SR渋谷にはクレモンズ、ベンドラメ、大貴とBリーグでも有数のハンドラーがいます。そして、ホーキンソン、ジョーンズ、トラビスのビッグマンのスクリーンの精度が高くPNRでは高確率でスクリーンにヒットしてズレを作り出しています。アルバルクはズレたスクリーンユーザーのディフェンスの遅れを防ぐためにビッグマンがショウにでますが、そこにビッグマンダイブへの対応の遅れが出てしまいます。ダイブへのパス供給を防ぐためショウに出たアルバルクのビッグマンはダイブマンへのパスコースを防ぎながらマークマンへ戻ります。また、スクリーンユーザーのディフェンダーは激しくチェイスしてプレッシャーをかけます。
そして、ダイブマンにはペイントの高い位置でタグ(ヘルプ)に入って攻撃を阻止するのがアルバルクショウディフェンスです。
ウイングにセイフティを置くか、ダンカースポットにビッグマン
ところが、SR渋谷はウイングの位置にパスアウトのためのセイフティを置いています。ショウに出られてもウイングにベンドラメ、大貴、たまにジョーンズがそこに入ることでパスが楽に出せて、ダイブするホーキンソンに展開していました。
また、セイフティがウイングにいないときはダンカースポットにトラビスなどのビッグマンが待機していました。
ゴール下に彼がいるとタグに入るためにペイント上部に上がってしまうとディッシュ一発でダンクを決められてしまうのでペイント中央がポケットとなって空いてしまいます。そこにスリップなどして素早くPGからパスが供給されるとホーキンソンなどはペイント中央はノンプレシャーなので高い確率でフローター、ジャンパーが決められます。第1ゲームはアルバルクがショウディフェンスを長く続けていたのでSR渋谷のペイントの確率は高ったのです。
第1ゲーム渋谷ペイント上部12/18本(66.6%)ペイントゴール下5/10本(50%)
ミスマッチを徹底的に攻めたSR渋谷
アルバルクは第1ゲーム終盤から第2ゲームはショウディフェンスからスイッチディフェンスにシフトしました。つまりPNRを仕掛ければホーキンソンやトラビスに福澤や岡本がマッチアップすることになります。
アルバルクのPGはテーブス188㎝、大倉185㎝、福澤177㎝、岡本170㎝です。福澤、岡本と200㎝超のビッグマンとのミスマッチはさすがに気持ちと気合では難しいとは思います。しかし2人共ファウルが嵩もうとも激しく戦って防いでいました。
福澤とメインデルがローテーションする場面は見られましたが、ほぼミスマッチのままビッグマンに当てられて中央突破を試行されていました。ゴール下まで持ち込まれると流石に防ぐことは難しかったですが、スイッチディフェンスは一定の効果はあったようです。
第2ゲーム渋谷ペイント上部12/25本(48%)ペイントゴール下7/9本(77.8%)
ディフェンスから取り戻そう
第2ゲームはスイッチディフェンスに変えたところで63-65と1ポゼッション差までカンバックしています。だからと言ってスイッチディフェンスが良いというのではなくて、これは戦術の妙ではなく、選手のインテンシティの高さでここまでもってきたのだと思います。但し3分間SR渋谷を0点に抑えた時間帯はオフェンスの停滞が見られなかったことも事実です。アルバルクの流れるようなモーションオフェンスはその間発揮されていました。ところがリズムを崩すとハンドオフ、PNRを連続することでズレを大きくするのに、一つ一つのプレーが切れ切れで単発になることで効果が減っていると感じるのです。
何が言いたいかといえば、メンタルです。
ディフェンスで相手をストップしてアドバンテージのリバウンドを取って連続攻撃を流れるように仕掛けることで、止まっていた連続モーションが動き出せばショットクロック内にオフェンスが複数回クリエイトできるはずです。また、スカウティングされているズームアクションなどの裏をかくバックドアカットが有効であったように、したたかにクリエイトしてもらえると観ているほうは爽快です。
では、ディフェンスからオフェンスもリズムを取り戻せるならば、ディフェンスをどうやって立て直しましょう?
SR渋谷戦でのヒントは第2ゲーム第1Q残り5分18秒からのフリースローのあとからのアルバルクのディフェンスにあると思うのです。
SR渋谷のエンドインに対してアルバルクは1-2-2のゾーンプレスから2-3ゾーンを敷きました。このターンのゾーンは成功しています。ショウディフェンスが対策されて困ったときは昨シーズンもマッチアップや3-2ゾーン、2-3ゾーンをつかって切り抜けています。
一方で、スイッチは一定の効果は認められましたが、ミスマッチ対策は必須です。
ミスマッチにはヘルプ(ダブルチーム)にいって、そこからローテーションして、ミスマッチを解消できる準備とそのディフェンス戦術の落とし込みが必要になるでしょう。ぜひ次節にはアルバルクの回答を見せてほしいと思います。
さて、明日は天皇杯。宿敵千葉ジェッツ戦です。
勝ってほしい。勝って17節名古屋DD戦へ勢いを付けてほしいです。