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アントレプレナーシップ教育をどう実現していくか?

こんにちは、タクトピア代表の長井です。前回記事で、アントレプレナーシップ教育の必要性をいろいろな角度から述べてきました。続いては「じゃあ、そんなアントレプレナーシップの学びをどう実現すればいいの?」についてタクトピアの経験に基づきながら触れていきたいと思います。

■記事一覧(リンクから飛べます)

0. 私がアントレプレナーシップ教育を専門にするまで
1. アントレプレナーシップ教育とは何か?

2. なぜ、アントレプレナーシップがすべての人に必要なのか?
3. どのようにアントレプレナーシップ教育を実現していくか?(本記事に掲載)
4. 最新!中高でのアントレプレナーシッププログラム事例
5. その他の新しい学びとの接続

-一般的なプログラムの流れ

前提として、アントレプレナーシップのプログラムを学校で実施する場合、以下のような構成を組むのが一般的かと思います。大まかに言って以下の3つのステップがあります。

・お題の提示:生徒に取り組んでほしい内容を示すための「問い」を投げかける
・問題発見解決の取り組み:プログラムの本体部分 ※ここはプログラムによりかなり内容の幅がある
・成果発表:「問い」への回答として、取り組みの結果を校内外へ発表する

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-アントレプレナーシップ教育を実践するときの四大論点

日々いろいろな学校さんと会話させていただくなかで「アントレプレナーシップのプログラムを導入してみたい」と興味を持っていただくことが増えてきました。しかし、いざ実施に向けて設計を始めてみると、イメージをすり合わせるべき論点が意外と多く見つかります。ここでは代表的なものを紹介し、タクトピアとしての意見も述べてみます。

論点1. お題はどこまで詳細に設定するべきか

必ず議論にあがってくる論点です。生徒にとって取っつきやすいのは「〇〇社からの『10年後の△△(その会社の主力製品)事業を考えてくれ』という依頼に応えてアイデアをプレゼンしよう」といった、与えられるお題の具体性が高い(誰が何を求めているかが明確なタイプの)お題設定です。先生たちも生徒が出してくるアウトプットが想像しやすいため、比較的導入しやすい形式といえます。

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その反面、「そのお題(あるいは分野)に興味がない場合、生徒の主体性が著しく低下する」であったり「お題によって取り組むべき方向性が定められてしまっているので試行錯誤の経験が薄くなる」というリスクを抱えます。

タクトピアとしては、そもそもアントレプレナーシップ発揮の大事な基盤である「自分自身の熱意に基づく問題提起」「最後まで逃げない自分事化の姿勢」を育むために、指導側からのお題設定は極力制約を緩やかにし、具体的な取り組み内容を生徒自身で決定するよう促すのがベターであると考えています。もちろん、割ける時間が少ない場合は取り組んで欲しい内容の方向性を具体的に絞ることもありますが、できるだけ生徒たちが自分事化しやすいお題にするなどの工夫をします。

論点2. 大きい問題を扱うか、身近な問題を扱うか

こちらも重要な論点です。SDGsが教育に取り入れられた影響か、生徒さんが設定しようとする問題が地球規模のものになることがたびたびあります(海洋プラスチック問題やLDBTQ+などが典型的です)。それ自体は悪いことではないのですが、解決策を考案していく際に「政府とか国連レベルじゃないと手の打ちようがないじゃん…」と詰まってしまう様子を何度も見てきました。

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タクトピアとしては、アントレプレナーシップ獲得のためには最終的に自らが解決に向けて行動できることが重要だと考えています。そのため、大きな問題から出発したとしても、問題定義のプロセスで「その問題に繋がる原因のなかで、自分たちの身の回りで起きていることはないか?」と細分化を図ったり、解決策を考えるなかで「自分たちでも実現可能なアクションはないか?」と視点をフォーカスするようなガイドが必要になってきます。

一方、身近な問題設定で秀逸なものが出てくるのは自分自身が抱える問題であることも多いです。このケースは「自分事化」の究極形であり、実際に「何としても解決したい」と生徒自身が思っているため活動にも熱が入りやすい特徴があります。

論点3. アウトプットはビジネス的にするべきか

前回記事の「4つの誤解」のセクションでも触れたとおり、アントレプレナーシップというとビジネス=お金儲けを取り扱うというイメージが強いようです。タクトピアとしては以下の順番で考えを整理する必要があると思っています。

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・アントレプレナーシップは最終的に自らが解決に向けて行動できることが重要
・解決行動は継続的に行われることが大事(一回限りの行動で解決できることは少ない)
・継続的に行動するためには「経済循環」と「仕組みづくり」が不可欠

上記のとおり、お金や収益の考えが必要となってくるのは解決行動に継続性を生むため、という目的を見失わないようにすることが重要だと考えます。もちろん、学校として現実的に収益を生む活動を許可することが難しいケースも多々あります。その場合は「学生として継続的に活動ができるよう、お金以外の経済が回るように施策を考えたり(例:行為と行為のGive & Takeで成り立つ、活動自体が学業上何らかのメリットを生む、など)、仕組みを構築したりする」ことをひとまずのゴールにすることもアリだと思います。

いずれは、「自分が始めたプロジェクトで自分の学費を稼いで高校を卒業した」くらいの事例が当たり前になる世の中にしたいものです。

論点4. プログラムの到達ゴールはどこに設定すべきか

アントレプレナーシップと一口に言ってもさまざまなパターンが存在すると思いますが、アイデアプレゼンで終わってしまってはアントレプレナーシップ教育としては片手落ち、というのがタクトピアの意見です。繰り返しになりますがアントレプレナーシップの学びの醍醐味は「実際に行動に移し、問題を解決する=価値を提供する体験」にある、と考えているからです。机上でアイデアを考えているだけの段階と実際に行動する段階ではまったく別種の難しさが味わえますし、実際に相手に価値を提供できた原体験を得るかどうかでこの学びの価値はまったく変わってしまいます。

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とはいえ、新規でプログラムを導入しようとする場合、時間的な制約や「何がアウトプットとして出てくるか分からない」という怖さもあると思います。現実的には、第一ステップとしてアイデア創造までを体験し、第二ステップとしてアイデア実現に向けた挑戦をおこなう、というような多段階のプログラム設計が良いのではないでしょうか。

ちなみに以前ある先生から聞いてしまった衝撃的なエピソードとして(敢えて聞いたとおり記載しますと)「中高生対象のビジネスアイデアコンテスト大会の場合、実現性や具体性がふわっとしていても、審査員のオジサンたちに向けて、それっぽいキラキラした未来を元気いっぱいプレゼンすれば良い成績を収められる、と生徒たちが学習しつつある」というものがあります。ビジコンがただちに悪い、というわけではないのですが、生徒が間違った学びを得ないように気をつけたいところです。

-グラウンドルール設定のススメ

前のセクションではアントレプレナーシップの学びを設計していく上での重要論点について述べてきました。これらをクリアし、いよいよプログラムの実施となったときにも気をつけておきたいことがあります。良くも悪くも、日本教育の主流のあり方とアントレプレナーシップ教育のそれは違う点が多いからです。

以下では、タクトピアがアントレプレナーシップのプログラムを実施する際に、先生や生徒とともに共有することが多いグラウンドルールの例を紹介します。

ルール1. 未知を楽しもう!

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アントレプレナーシップのプログラムは典型的なオープンエンド(決まった答えがない)であり、生徒の前に立つ講師・先生も何が正解か分かっていません。そのため、分からないこと・決まっていないことをネガティブに捉えるのではなく、これから分かってくる・明らかにできることって楽しいよね!とポジティブなマインドセットをおこなう必要があります。ここにおいて講師・先生はあくまで生徒の伴走役であり、ともに問題に立ち向かう仲間である、という意識が重要だと考えます。

2. 実践から学ぼう!

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アントレプレナーシップにおいては実社会へ価値提供することがゴールのため、自分で手足を動かして情報を得たり検証しないと前に進まないことが多々あります。ときには頭をフル回転させて黙考することも重要ですが、「とりあえずやってみるか!」というフットワークの軽さも重要です。

3. やり直し上等!

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こうした新しいチャレンジは一回で成功するほうが稀です。チームで考えた渾身のアイデアが、一度のインタビューで砕け散ることもあり得ますが、それは成功への大事な一歩となります。たとえ失敗しても「これじゃない、ということが分かったから大収穫だね」と声を掛け合える文化づくりに気を配ります。

-アントレプレナーシップを育む10のPのフレームワーク

ここまでいろいろと述べてきましたが、「で、どうやってプログラムを作ってるの?」という話題に入っていきます。今回の記事では、すべてのプログラム設計の基点となっているフレームワークについて触れます。

タクトピアでは創業以来の試行錯誤により、再現可能な学習フレームワークの開発に努めてきました。このバックボーンとなるのが「10のPのフレームワーク」です。タクトピアのアントレプレナーシップのプログラムは、形態に関係なく(海外研修でも国内研修でも、定常型の講義でも)このフレームワークを使って設計をおこなっています。

1. Perception(認知・気づき。世の中の事象への感度を上げる)
2. Passion(情熱・感情。強く心が動かされる物事を言語化する)
3. Problem(問題。客観的なエビデンスとともに問題の状態を定義する)
4. Persona(ペルソナ。問題の渦中で"不"に苦しむ人物を想定する)
5. Pain(困りごと。ペルソナにとって取り除きたい場面/感情を特定する)
6. Product(解決策。Painを解消し幸せにするアイデアを創造する)
7. Process(ストーリー。ペルソナが幸せになるまでの流れを想定する)
8. Prototype(試作品。アイデアを目に見える形として制作する)
9. Profit(収益。売上とコストを試算し、バランスが取れる状態を見出す)
10. Pitch(短時間プレゼン。効果的な構成と実施方法を練習する)

このフレームワークに基づきながら、実際の学校さんの要件やビジョンに沿ってプログラムを設計していきます。事例紹介は次回の記事にておこないますので、どうぞお楽しみに!