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プラモ

小学生の僕の、数少ない散財は、プラモデルを買うことだった。
わずかな小遣いから、十円とか百円単位の積立金を捻出し、月に一回くらいの割りで、五百円以下のプラモデルを買う。

行きつけの小さなプラモデル屋は、本屋と文具屋も兼ねていて、品揃えこそ乏しかったが、プラモデルはすべて二割引だった。
おかげで僕は、割引の計算だけは早々に、暗算で出来るようになったものだった。

ジャンルで言えば、飛行機、船、車など、乗り物には興味が無かった。
戦車や戦闘機なども好きではなかったが、戦車に関しては、キャタピラの動きにちょっと魅せられたりした。
それでも一応は、一通りのものに手を付けてみたのだが、お気に入りは、怪獣や恐竜やロボットや屋台などだった。

プラモデルからはしかし、中学に上がる前には卒業してしまった。
飽きたわけではなかった。
本や雑誌を買うようになって、プラモに回す資金が足りなくなったことがひとつ。
もうひとつの決定的な理由は、出来合いのものをルールに則って仕上げるよりも、ゼロから作り出す方が面白くなってきたからだ。
工作やアートのような創作活動にのめり込んでいった。

それから随分時の流れたある日、マンションの郵便受けに投げ込まれていた一枚のチラシに目が留まった。

『夢の古民家 プラモデル 1/24 切妻屋根の二階建て住宅』

気のせいかもしれないのだが、幼少期に自分の住んでいた家に似ているように思えてならなかった。

チラシの主は、正夢グループ。
怪しい会社ではない。
価格は5千円で、まあ、リーズナブルだった。

QRコードを読み込んで、オンラインの注文フォームから、さっそく購入。
翌日には、宅配便で届く。

1日で出来上がりそうだったが、少しずつ、3日かけて完成。
テーブルに置いて眺めていると、不意に玄関の引き戸が、ガラガラと音を立てて開く。

中からは、小さな少年が出てきた。
半ズボン姿だ。
紛れもなく、僕だった。

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