大さがしてください
B5判ほどの白い紙に、縦書きでびっしりと黒い文字がのたうつ。
サインペンで書いて、コピーしたものと思われる。
字もどこか拙く、とにかく読みにくい。
そんな張り紙が、あちこちの電柱に張られていた。
数日前から気になってはいたのだが、その字面を見たとたん、読もうという意欲が失せるのであった。
それでもやはり気になるので、意を決して読んでみた。
「大さがしてください…」で始まる文章は、
誤字脱字だらけで、ほとんど平仮名ばかり。
句読点もなしに延々と続いていく。
なんとか苦労して解読すると、どうやらこういうことらしい。
散歩中に愛犬が逃げてしまった。
13歳のメスで、柴犬風の雑種。
かなりボケが来ているので、一人では家に帰ってこれないと思う。
どうか探してください。
最後のほうに、モノクロの不鮮明な、犬の画像がある。
これまた、写真をコピーしたものであろう。
苗字と電話番号以外、飼い主についての情報は何もない。
この張り紙に塗り込められたものから、飼い主の横顔をあれこれと想像する。
どうしようもなく、切なくなってしまった。