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ひとつぶやきで二度おいしいとは限らないが…(3)
#駅前の同じビルに「熟女クラブ●●」と「ヤングサロン××」が入っているのだが、「ヤングサロン」のほうが「熟女クラブ」よりも、なぜか平均年齢が高そうだと、知人が言っていた。
#老人と子供の不思議な会話。コサギを見て子供が「あっ、フラミンゴ!」「すごい想像力だねえ」と老人。
#イマジネーションを刺激しない歌詞は興味が無い。特に映像の目に浮かぶ歌詞が好きだ。川本真琴さんの作品は言うまでもないが、井上陽水さんの世界もヴィジュアルに富んでいる。陽水さんはとりわけドラマチックな描写がうまい。『背中まで45分』などは短編映画そのもの。
#判決が言い渡される。死刑より重い刑だという。「恥刑だ!」と裸にされ、お腹に黒いマジックで宮根誠司氏の似顔絵を描かれた。「これは、いやです…許して下さい」「では、もじょ刑にマケてやる。司法取引だ」AKB48みたいな女子の大群が、猫ジャラシを手にして僕を擽ろうとする…という怖い夢。
#ヘルメス・トリスメギトゥスのフルネームはトート・ヘルメス・メルクリウス・トリスメギトゥスだっけと、脳みその片隅でひっそり呟く。泣きそうで泣かない女と泣きそうで泣けない女と…どっちが好きかなと、曇り空を仰ぎながら思った。
#日ごろYouTubeさんにはずいぶんお世話になっているが、この文字を眺めるたびに「貴様は管だ」と言われているような気になる。そう、人間は管だ。ナマコと少しも変わりない。そう思うとむしろ、嬉しくなってしまう。
#Je suis sale comme Rimbaud/Je suis lache comme Villon/Debauchee comme Hugo/Syphilitique comme Baudelaire/Mais peut-etre apre tout/N'aimez-vous pas la poesie(Brigitte Fontaine『Comme Rimbaud』より)
#『Comme Rimbaud(ランボーのように)』の簡単な和訳を念のため…私はランボーのように穢れていて、ヴィヨンのように卑劣で、ユーゴーのような放蕩者で、ボードレールのような梅毒患者、でも、きっと、あなたは詩なんてお好きじゃないでしょうね。これを日本の詩人でやったら、どうなるだろう。
#日が落ちるとS駅のその場所に、彼女はやってくる。毎日ではない。曜日が決まっているわけでもない。髪の長い小柄な痩せた若い女だ。体には不釣合いな大きなアコギを抱えている。駅明かりを暗く翳らす暗い表情で歌いだす…
#♪夜に紛れて街に立てば/盗人猫も避けて逃げる/生血の涸れた傷跡など/舐める犬さえありはしない/私の胸に縋ってください/背中の骨はむき出しだけど/私の胸に縋ってください/与える肉もないけれど…「ありがとうございました。『地獄のマリア』という曲でした」
#十代の終わり、大学受験のために北の街の安っぽいビジネスホテルに独りで宿泊した。節約のため食事はほとんどホテル内の喫茶店の軽食で済ませた。古いロックばかり流す店だった。毎日のように聞かされたのがプロコル・ハルムの『青い影』。切なくなるばかりだった。
#街なかで見知らぬ女性に声をかけられる。誰だったか俄かには思い出せないとしたら、大方、百貨店の店員か看護師だ。
#三島由紀夫は『仮面の告白』の中で、産湯に浸かった記憶があると述べている。有名な話だが、一説によるとこれは、大嘘であるともいう。僕には産湯の記憶こそないが、母胎にいたときの記憶は確実にある。
#風が吹く→埃が舞い上がる→眼病を患い失明する人が続出→目の不自由な人の多い三味線弾きが増える→三味線の需要が増える→三味線の材料にされて猫が減る→鼠が増えて桶を齧る→桶屋が儲かる。おなじみの話だが、こんな形で猫が登場しているなんて、忘れていた。
#ピーター・S・ビーグルの『心地よく秘密めいたところ』という小説が好きだ。エラリー・クイーンの『心地よく秘密めいた場所』はミステリだが、これは違う。意味深なタイトルからして僕はポルノかと思ってしまったのだが、実は素晴らしいファンタジーなのだ。舞台はニューヨークの巨大墓地である。
#モフセン・マフマルバフの『パンと植木鉢』は胸に沁みる名作。イラン映画が好きだ。われわれの理解を超えた環境と感性。その特殊性ゆえに、却って普遍性が浮き彫りになる面白さ。それにしてもこの監督名、耳に心地よいのにもかかわらず、何度聞いても正確に覚えられない。
#岡本太郎さんが川本真琴さんのライブにやってきて、かぶりつきで見ている。いきなりステージに飛び乗って、「音楽は爆発だ~ぁ」と両手を広げて、大げさな身振りで叫ぶ。そんな幻想が、妙に生々しく目に浮かんだ。
#NHKの乳幼児番組『いないいないばあっ!』のお遊戯場面を見ていると、カメラは明らかに、えこひいきしている。かわいくて活発で愛嬌のある子ばかり捉えるのだ。寝そべったまま起きない子や、隅のほうでじっと何やら凝視している子の方が、僕はずっと興味があるのだが…