青森GW日記③5月6日(土)
実家の居間のテレビが、無駄にデカくてほとんど使っていない。両親は居間でテレビを、見なくなってしまった。しかしこうして帰省した際に、映画を見るときには最適中の最適。最近、出始めた黒澤明のリマスター版のブルーレイを、僕たちは見ることにした。青子ちゃん初の黒澤明の映画は、『用心棒』となりました。「面白くってぶったまげるぞー」と、あおりながらプレーヤーにディスクを挿入。始まりました『用心棒』! 映画を見るときの青子ちゃんの横顔はいつも真剣で、目は好奇心に輝いている。黒目にうつりこんだ三船敏郎は、二股の別れ道で木の棒を宙に放った。青子ちゃんの隣で映画を見るのは、僕の幸せ。何回も見た映画でも、青子ちゃんの好奇心に満ちた新鮮な眼差しで、初めて見るかのように映画を見ることができる。彼女は、素直にびっくりすると声をあげるし、疑問に思うと質問してくれる。「一両ってどれくらいの価値あんだろう?」ヤクザの親分が用心棒に、報酬を提示したシーン。「ちょっと待って、あと1分で一両の価値は示されるから、刮目して見て!」私の返答。用心棒は一両の報酬に不服で、すっと立ち上がり、屋敷を出ようと歩き始める。焦った親分は、用心棒の背中に「二両!いや、三両出す!」と指を突き立てる。しかし、用心棒の足は止まらず。「ええい! 十両!」などと、報酬は釣り上がっていくという、シーン作り。演出。画面作り。青子ちゃんは、唖然としていたな。これが黒澤明の演出力、シーン作りの真骨頂である。これは日本語のわからない、外国の人でも映画の世界における、金銭の価値が自然とわかる。などど、青子ちゃんと午前、あっという間のエンターテイメント超大作『用心棒』を楽しんだのでした。「あばよ!」と肩を揺らして、スクリーン奥に去っていた三船敏郎に拍手を送り、僕たちは午後の準備。
青子ちゃんの運転で、十和田の町中まで、15時に筒さんと合流。今日は筒さんを僕の家に招いて、BBQをするのだ。ほがらかに3人、挨拶を交わしスーパーへ。伝説のスーパーヤマヨにて、魚介やらお肉やらお安く購入。青森名物のホタテ、ホッキ貝、ホヤなんかはマスト。そそくさと僕の家に、車で急いだ。僕の実家にハナレがあって、そこには土間と宴会のできる居酒屋的なスペースがある。早速、炭をおこして、BBQがスタートした、梅原猛が「東北は妄想で、関西は批評」と日本人の特性を示していて、それは僕にとってとてもフィットする考え方だ。関西の人は頭の回転がはやく、ボケとツッコミで物事を批評し論じてく。なるほど京都学派などまさにそう。一方、東北の才能は太宰治、宮沢賢治、寺山修司、棟方志功など、どうも妄想が好きみたいだ。宮本常一が『忘れられた日本人』で、東北の農村の寄り合いに参加した際に、グダグダと誰もツッコミもせず、話が脱線に脱線を重ねてた事態を描写していた。さて今宵の僕の家でも同様であった。僕と父の掛け合いは脱線に脱線を重ね、筒さんは十和田のことを聞きたいのに、最終的に津軽弁のおもしろさを語り始めてしまった。着地点などなし! あってなるものか、ツッコミや批評は拒否。僕らは妄想の翼を広げて、どこまで飛んでゆきたい! 僕の両親は筒さんが何者かも理解せず、僕の友達かなんかだど思い込んでいた。彼が彼自身のアーティスト活動について、説明すると、僕の両親は驚いてマジックペンを差し出し、ハナレのBBQルームの壁にサインを求めた。オイオイ、このルーム20年やってるけど、初めての壁サイン。節操なさすぎ。皆で笑い合いながら、楽しく食事。夜もふけ、筒さんを十和田の町中まで送って行った。さて、いよいろ7-9月の筒さんの展示が楽しみすぎる。