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遊ぶとノベルゲームが作りたくなるゲーム『ファミレスを享受せよ』【ゲーム感想】
ファミレスを享受しました。サイコーでした。
この熱が冷めないうちに、たここが盛り上がったところと、その他のことをパパッと綴っていきます。
ガッツリネタバレを含みますので、未プレイの方はこちらからファミレスを享受してみてください。
たここが盛り上がったところ
主人公が16桁のパスワード総当たりを始めたところ
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パスワードの手がかりも特に無く、適当に数字を入れていったら開いたりしないかな〜、なんて思いながらカチャカチャとダイヤルを動かしていました。
すると突然、選択肢が出現します。
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「覚悟を決める」
主人公が総当たりを始めました。
...16桁を?!
ムーンパレスの住人が応援してくれたり、TRPGに誘ったりしてくれますが、主人公は構わずに総当たりを続けます。
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さすがに等倍で倍速の様子を眺めていたらゲームが進まないので、総当たりの様子は倍速で流れていきます。
ただ、その倍速の度合いがどんどん加速していくのです。
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1000000試行/秒くらいまで加速したとき、「うわうわ...マジかよ...」と恐ろしい気持ちになりました。とんでもない長さの時間が、たった数秒で流れていきます。
たここはパスワードをよく忘れるので、「総当たりで試したらどれくらい時間がかかるんだろうな」と妄想することが何度かありました。なので、目の前で起こっていることの途方のなさを実感できて良かったです。
箱が開いた時の主人公の反応も納得でした。お疲れ様です...。
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エネルギー発散のために試験勉強をするくらいの主人公なら...
と思いましたが、にしても16桁の総当たりは人間のすることではない。
ファミレスの5人が集まって話し合うとき
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やっぱりファミリーなレストランにいるんだから、みんなで集まって享受するのが良いよね!!JAZZでチルな音楽も相まって雰囲気サイコーでした。
普段、ファミレスの住人同士が集まって何かをしている様子がほとんど見られなかったことも、気持ちを盛り上がらせた理由の1つです。
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みんないつも1人で席に座ってるじゃん...。TRPGとかもっとやろう。
ギャラリーの存在に気づいたとき
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主人公のその後について語られ、ゲームは終了します。
そして、あまりにも簡素すぎるタイトル画面に戻されるのですが、2つの新しい選択肢が追加されていることに気がつきます。
「サウンドギャラリー」
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音楽がたくさんある!
ピアノ音源も聞ける!
「イラストギャラリー」
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イラストが良い!
文章がたくさん!!
こういうの良いですよね。
クリア後の情報公開というか、ネタバラシというか。
特に、世界観と登場人物にまつわる話がたくさん用意されていたことが嬉しかったです。色々と腑に落ちました。この項目が200個くらいに増えても、ニコニコしながらと読み続けていると思います。
個人ゲーム開発者として驚いたこと
これ以降は、あまりノベルゲームに触れてこなかったここの言うことなので、「こんなこと考える人もいるんだなぁ〜」くらいの雰囲気で読んでいってください。
ガッツリネタバレスタッフロール
たここは初見プレイ時、登場人物の過去をほとんど知らずにエンディングを迎えました。過去を知れるジュースは、月の人にしか効かないものだと思い込んでいたので、ムーンパレスの住人全員には試していませんでした。
そして、スタッフロールが始まり、ゲームをクリアした余韻に浸っていたのですが、なにやら流れていく文章が不穏なことに気がつきます。
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存在しないって何?
お前、処刑人だったのかよ?!
〇番って誰??
もう大混乱です。ゲームを一時停止して、じっくり考えたいところですが、スタッフロールは構わずに進んでいきます。
「どういうこと?」となったネタバレスタッフロールですが、おかげで、過去を知れるジュースが他の人にも使えると気づくことができました。
スタッフロールの内容が他のエンディングへの足がかりとなっているなんて他のゲームでは見たことがなくて、「はえ〜すげぇ...」と驚きました。
まぁまぁ長い、総当たりの演出
先にも述べたように、主人公は16桁...1京通りもの組み合わせを全て試すことで、箱を開けようと試みます。倍速されてその終始をプレイヤーは見届けることになるのですが、この演出が結構長かったです。
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測ってみたところ、所々に挟まれるセリフを除いて6分程度でした。
今どき、大抵のゲームには、ありとあらゆることのスキップ機能が設けられているイメージですが、この総当たりの演出はスキップ不可です。
あえて操作できない時間を長くすることで、その冗長さと途方のなさを感じられて、一緒に総当たりをしているかのような気分にさせることに成功していると思いました。
もし、たここが同じストーリーでゲームを作っていたら、安直に暗転させていたと思います。次にノベルゲームを作る際の参考にしようと思います。
超テクノロジーが理不尽に感じない理由
月の技術のぶっ飛び具合はヤバいですよ。
思いついたものを書き並べてみます。
人間の記憶をいじれる。しかも簡単に。
新しい人格を形成し、まわりの人間の精神を操作する薬。
長距離テレポート技術。
宇宙を旅できる船。
情報を格納できるストロー。
過去の記憶を覗けるジュース。
ほぼ永遠に心地よい状態を維持するファミレス。
中にいる人間の寿命がほぼ無限にできるファミレス。
中にいる人間の意思を操作できるファミレス。
マインクラフトのクリエイティブモードレベルです。いや、それ以上かも。
これは、ストーリーを見ているプレイヤーを「いや、それ別に月の技術で解決することじゃない?」と思わせかねないです。
ですが不思議なことに、こんな技術が盛りだくさんで、その原理や仕組みもゲーム中ではほとんどされないのにも関わらず、ゲームを通して、たここは「そんなのありかよ!?」と、そこまで理不尽には感じませんでした。
どうしてでしょうか?
理由を考えてみます。
そもそも、常識の通用しない異空間にいる設定をプレイヤーは飲み込めているから、なにが起こってもOK。
ストーリーは、登場人物にまつわることがメインなので、超テクノロジーについては意識されない。
語られない情報が多いため、いくらでも「まぁ、〇〇ならそうなるのかな」と自己解釈できる。
月の人や技術も完璧ではないと思わせる描写が多くあるから。
特に、最後の「月の人や技術も完璧ではないと思わせる描写」の部分が大きいと思います。
なんでも出来そうな月の人達ですが、完全無欠では無いことが分かる描写がゲーム中にはいくつかあります。
まず、ムーンパレスの住人の中に月出身の方が2人居るのですが、そもそも、その2人が完璧ではないです。
片方は緊急時の対処能力に長けておらず、このゲームの舞台を作り出した原因の一端ですし、もう片方は、友達が永久追放された悲しみに耐えられなくて、記憶を上書きする薬を飲んでしまっています。
なんだか人間みたいですね。
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月の秩序維持を担っている法律もまぁまぁ適当です。
基本の3原則を破ってさえいなければ、情状酌量や後処理次第でほとんどが許されるみたいです。なんなら破っていたとしても、判決を任されている「処刑人」が慈悲深すぎるので、なんとか理由をつけて無罪になりかけます。処刑人曰く、「月の法はファジーで甘いもの」とのことです。
なんか親近感が湧きます。
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月の技術に関しては、一部の天才によって成り立っているらしく、他の人たちは人間と同程度の知性みたいです。
ただ、このことについては、ゲームクリア後のイラストギャラリーで語られることなので、「いや、それ別に月の技術で解決することじゃない?」とゲーム中にならない理由としては挙げられませんね…。
とにかく、こういった理由から、月の人たちも失敗はするし、出来ないこともあるし、適当にやっているところもある、ということが分かります。
「まぁ、月の技術でもできないことはあるよね」とプレイヤーは自然と考えてしまうのではないでしょうか。
などと、SFにありがちな「全てのいざこざ、超テクノロジーで解決する問題」が、このゲームでは起こっていない理由を考えてみました。
『ファミレスを享受せよ』は、超テクノロジー側も完璧ではない設定にすることで、この問題を回避しています。「あまり見ないアプローチだな...」と、SF文学に触れた記憶のないたここは勝手に感心していました。
...よくよく考えてみれば、『ファミレスを享受せよ』の過去に起こった事件は、超テクノロジーで解決できるかできないか以前に、当事者の強い意思によって起こされたものだから、「いや、それ別に月の技術で解決することじゃない?」って考えるのはどこかズレてるのかもしれないですね。
とにかく適当に感想を書きなぐるよ!!
状況次第ではムーンパレスに放り込まれる可能性があるのがおそろしい。月の人たち、はやく何とかして!
ノベルゲームによくいる「めちゃくちゃ話しかけたりする能動的な主人公」についても、キャラクターの設定でちゃんと説明がされているのがスゴいと思った。
主人公の素性が徐々に明らかになっていって興味が惹かれた。「反撃の雑談」→「ファミレス会での質疑応答」→「イラストギャラリーでの紹介」
BGMの音源が2種類あったから、2周目も楽しめたよ!
不思議に思ったこととしては、他のムーンパレスの住人に主人公ラーゼの名前が知られていなかった事。少なくとも数万年も同じ空間で過ごしているらしいのに、コミュニケーションを取る上で不都合は無かったのかな?
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最後に
たここもノベルなゲームを作りたい!!
以上!
書きたいことが多すぎて、夜遅くまで記事を書いていたここからでした。
こんなに月が綺麗な夜はファミレスに行こうかな。
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