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岩明均・ヒストリエ雑感
ヒストリエの単行本がなんと五年ぶりに発売になるそうだ。愛読者のかたがたは、この刊行ペースには色々と思うところもあるだろうが、まずはこの発売を喜びたい。私はこの作者の単行本化された作品には全て目を通しているが、コミックモーニングに連載していた風子のいる店というマンガを本屋の店先で立ち読みしていたころからかれこれ40年になるかと思うと、いささかの感慨がある。
というわけで、もはや何度めかわからない
打倒消える魔球・星一徹の「失敗」
巨人の星という作品において、とくに後半の部分では3つの大リーグボールと呼ばれる変化球をめぐる攻防がストーリー展開の大きな柱となっている。これを分析するだけでいろいろと面白いことがわかるのだが、今回述べるのはある失敗についてである。もしも消える魔球なるものがなんなのか知らずにこの文章をお読みになるかたがいたとしたら、地面すれすれにボールが飛んでいくために土埃が舞い上がって、それでボールが消えたよう
もっとみる大リーグボールとは何だったのか
巨人の星という作品において展開の要となるのが、大リーグボールと呼ばれる変化球群である。昨今のリアル志向のスポーツマンガと違って、かつてのマンガにおいては、いかに荒唐無稽の誹りを受けようとも、この種のいわゆる必殺技と呼ばれるギミックはきわめて重要な位置を占めていた。七十年代くらいまでは、こういった趣向はほとんど必然とまで思われていた。したがって大リーグボールも、いくつもあるそのようなギミックの一例
もっとみるジョンとポール問題を敷衍する
これは、とある有名なポップス評論家の話である。かつて彼が知り合いにこう尋ねられたという。「ジョンレノンとポールマッカートニー、どっちが好き?」彼は答える。「ぼくはポールのほうが好き」すると相手は「へえー、ポールのほうが好きなんだー。ふーん。」相手の反応には、明らかに、軽蔑とまではいわないが、こちらの好み、感性をいくぶん見下すニュアンスが込められていたという。
この評論家氏はどう思ったか?
穏健派の
たくさんの人がおなじ年に
2019年に橋本治が亡くなって、同じ年に吾妻ひでおも亡くなっている。橋本が亡くなってからほぼ一年後に、雑誌ぱふで橋本と親交のあったまついなつきも亡くなっている。もちろん単なる偶然であるのだろうが、遠くからただ眺めていただけの人間からすると、なにかしらの因縁めいたものを勝手に感じてしまう。
みなもと太郎・さいとうたかを・白土三平といった超ビッグネームが相次いで鬼籍に入ったのは、言うまでもなく偶然で
橋本治と巨人の星・最終回
かつて広告批評という雑誌があった。その名のとおりさまざまなメディアにあらわれるさまざまな形の広告について紹介したり批評したり、という形をとりながら、毎月の特集は文化・社会・政治などなど極めて刺激的なトピックをあつかう、充実した雑誌であった。そしてこの雑誌の巻頭で毎回社会時評・文化時評を数ページにわたって書き続けていたのが、ほかならぬ橋本治であった。広告批評の顔といっても過言ではなかった。
橋本が死