夢は続くよどこまでも・・・⑴
『た子の足跡日記』ー有料老人ホームにてー
ユメコさんは夢見る夢子さんなんです。
とにかく夢が大きいので悩みが絶えません。
今の夢は小説を書いて芥川賞を狙うこと!
「ねえ~、小説を書くって難しいわね。書きたいことは決まってるんだけど文章にならないわ」
「どんなことを書くんですか?」
「娘のこと・・・題名は『ひまわり』・・・私って、若い頃モテたのよ」
「じゃあユメコさんの娘時代の事ですか?」
「いいえ、娘のことよ。あの子はいい子だから・・
それでね。私が若い頃、質屋のボンボンに目を付けられて困っちゃった~」
やれやれ、『ひまわり』はいつ完成するのやら。
「それからね、小説も書くんだけど・・・歌始めに出す短歌も考えないと。
でも、選ばれたら皇居まで行って、一晩はホテルに泊まって、着ていく服も買わなきゃならないでしょ?お金が掛かるのよ。お金どうしよう」
「はあ、、今度は歌始めですか?」
「バイトしてお金貯めようかしら」
「バイト?するんですか?」
「喫茶店! さっき下の喫茶店行ったら『いつでも来てください』って」
「それって、お客さんとしてじゃないんですか?」
「違うわよ~ちゃんとバイトしたいって・・・聞いたのよ~」
「それにユメコさんは、持病(糖尿病)があるから茶店出入り禁止だったはずじゃないですか?また行っちゃったんですか?」
「あら、だって・・バイトするには研究しなくっちゃ!!」
そう言って、隠し持っていたサンドイッチを胸の下から取り出してみせた。
「私これ食べるから、お昼ご飯は要らないわ。
なにしろ私は小説を書くので忙しいんだから・・・」
つづく
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