二段モーションサーブ?
「二段モーションサーブ」が話題になっていると聞いて、「サーブヒットのスイングの二段モーション」を想像してしまいました。ハンドボールの7mスロー(ペナルティスロー)で「ボールをつかんだままシュートモーションをやって、キーパーが動いたらタイミングを外してシュートする」みたいなものかと。
ところが、実際に動画を見たら全く違っていました。
これで「ポジショナルフォールト(いわゆるアウトオブポジション)」の反則になったわけですが、ルールはどうなっているでしょうか?
国際バレーボール連盟(FIVB)のルールブックでは
となっており、「ボールヒット時」の位置で判定することになっています。しかし、実際の運用は最近とても緩くなっていて、サーブのトスアップ辺りのタイミングでもセーフになっているので、こういうことが起きるのも当然だと思います。
では、実際何が起きていたのか見ていきたいと思います。まずはレセプション側のスタート位置です。セッター(No.2)がバックライトにいて(S1)、前衛は左側の3人(左からOP、MB、OH)であり、問題のプレイヤーはフォワードレフトにいるOPです。
動画のコマでは、OPが自分より右側にいるべきMBを完全に追い越したのが次の画像になります。サーバーはここで「助走を止めて」います。右足が前にありますが、この後左足を踏み出して片足で踏み切ってジャンプフローターサーブを打つ予定だったと考えられます。
ここで相手OPの動きを見て、「いくらなんでもそれは早すぎだろ?」ということで、サーバーが一旦動作を止めたのではないでしょうか?相手を指さしていますね。それで相手が正しい位置に戻る前に急いでサーブを打ったというだけかもしれません。一部で言われているような「二段モーションでポジショナルフォールトを誘った」というよりも結果的にそうなっただけのような気がします(ただし、これ以後意図的にやるようになったかどうかは分かりませんが)。「二段モーション」は「本来ワンモーションで行うもの」について言うはずですが、これは助走の途中で動きを止めており、何ステップもある助走をワンモーションとするのは無理があるのではないかと思います。
現在のルールの運用がかなり緩いので、もしかしたら「サーブ動作に入った時」で判断されるようになっているのかもしれません。そうであれば、「助走もサーブ動作に含まれる」と考えることもでき、問題の動きはセーフになる可能性も出てきます。そこまで含めることにはならないでしょうが、もし含めるとすると、サーブのルーチンとして「ボールを床に突く」みたいなのも含めざるを得なくなるかもしれませんね。
問題は「明確な基準があったのに、それを曖昧にしてしまった」ということだと思います。基準がなくなると「審判の恣意的な判断」に判定がゆだねられることになります。オーバーハンドパスの「キャッチの反則」も「キャッチの明確な基準(定義)」がないために「審判の恣意的な判断」にゆだねられて大きな問題が起きています。「明確な基準」はとても大切です。
もちろん、人間の判断の解像度(正確さ)には限界がありますが、「明確な基準」はその通りに判定できないとしても、定義することはとても重要です。例えば「ボールのイン・アウト」はビデオ判定やホークアイによる判定によって「見えている感覚とかなり違う判定」がされるようになりましたが、そういうシステムを使えない場合は「人間ができる限界の中で判定するしかない」わけです。でも、だからといって「イン・アウトなんて明確に定義して基準を決めても意味がない」ということにはならないですよね?
「キャッチ」については「明確な定義が可能なのに、されていない」ものと考えていますが、「ポジショナルフォールト」は「明確に定義されているのに、そこからかなり離れて運用されており、定義がないも同然になっている」だと思います。
これらに対して「ダブルコンタクト」は「体の2カ所以上の接触の時間差」のは厳密に言えば必ずあるわけで、逆に「完全に一致する」ことはあり得ず、かといって「反則となる時間差を数値で定義する」こともできません。これは「明確な定義が不可能」なものであり、「ワンモーションでのダブルコンタクト」という反則自体をなくすべきだと思います。
バレーボールのルールはまだまだ進化が望まれますね。