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「連携」は重要だが、絶対ではない

このテキストは、2020年7月に発売の書籍『売上が上がるバックオフィス最適化マップ』(クロスメディア・パブリッシング)の「第1章」をnote用に編集したものです。

近年のITシステムにおいて「データ連携」は非常に重要なポイントです。ただ、この点を理解してシステムを導入した結果、現場の運用に失敗するケースもあるので要注意です。

ある会社のある部署に一番マッチするツールは、多機能・高機能なものであるとは限りません。それぞれのツールには一長一短があり、A社の営業部では微妙だと映った顧客管理システムが、B社の営業部にとっては最高のシステムかもしれないのです。データ連携を重視しすぎると、その点を見落としてしまう可能性があります。

たとえば、C社が提供する顧客管理システムと勤怠管理システムと給与計算ソフトがあったとしましょう。言うまでもなく、それぞれのシステムはデータ連携しているはずです。そのため、顧客管理と勤怠管理と給与計算を最適化したい会社にとって、(1)すべてC社のサービスにする――というのは有力な選択肢の1つです。しかし、現場の運用面においては、(2)C社の顧客管理システム・D社の勤怠管理システム・E社の給与計算ソフト ――という組み合わせがベストであることもあります。

この場合、私たちなら、基本的には(2)をクライアントにおすすめします。その理由は、データ連携は(2)の組み合わせでも可能だからです。

データ連携のやり方は、以下の3つに大きく分けられます。

①CSV連携
連携元のツールから、エクセルやスプレッドシートで編集できるCSVファイルとしてデータを書き出し、内容を整えて連携先のツールで読み込む方法

②API連携
外部のツールのデータを自動で取得し共有する方法

③RPAの活用
ロボティック・プロセス・オートメーション。人がPCを用いて行っていた作業をロボットに処理させる方法

API連携は、CSVのようにデータを書き出したり、その中身を確認したり、連携先のツールでインポート処理をする必要がなく、自動的に、あるいはワンクリック程度のわずかな動作でデータが同期され、必要な処理が実行されます。

この最も便利なAPI連携が、他社のシステム間でも可能となる動きが加速しています。先ほどの(2)のような組み合わせでも、API連携ができるケースが増えているのです。

また、手作業を要する連携であっても、現場の運用面を重視するほうがいいケースもあります。

人事部が給与計算ソフト・Fを利用すると、これまでの作業時間が月8時間から30分に短縮できるとしましょう。しかし、Fは現状、経理部の使う会計ソフトとAPI連携はしていません。そこで経理部としては、会計ソフトとAPI連携できる給与計算ソフト・Gを導入してほしいのだけれど、Gだと作業時間が月2時間となります。

このケースなら、たとえAPI連携はしていなくても、Fの給与計算データを会計ソフトにCSV連携で移す作業時間が30分で済むのなら、合計時間が1時間なのでFのほうがいい――という判断にも妥当性があります(あくまで一例です。実際には作業時間だけでなく、手作業でミスが生じるリスク等、その他の要素も踏まえて判断しなければいけません)。場合によっては、CSV連携もできず、完全に手入力でデータを移す必要がある組み合わせのシステムであっても、「導入したほうがいい」と判断するツールもあります。

このように、データ連携は非常に重要なのですが、それだけを理由にツールを選ぶのが、必ずしも正解とは限らないのです。

そして、API連携をしていなくても、その他の手段である程度効率的に連携させることは可能です。ITに詳しい人材がいれば、API連携のないツール同士でも、何かしらの手段で、手数が少なくミスも起こりにくい連携方法を確立できる可能性は高いです。

つまり、システム間のデータ連携は、本当に大切な要素なのですが、「どう組み合わせるか」は、実はそこまで気にしなくてもよかったりするわけです。それよりも、現場の作業の最適化を重視してツールを選び、「各部署のツールが連携して、こんな風にできればいい」というビジョンを描くことのほうが重要です。そのビジョンさえあれば、連携方法は導き出せる場合がほとんどです。

順番としては、「各部署の作業の最適化」を現場目線で考えてツールを選び、その後、それぞれのツールがAPI連携していない場合は、連携方法を情報シスが考えるとよいでしょう。もちろん、連携方法が見出せず、別のツールを検討することになる可能性もありますが、この順番を常に意識できていれば、よりスムーズなIT導入を実現できるはずです。

詳細は、本書を読み進めていただければ幸いです。


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