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ぼくの短歌ノート⑭『母の愛、僕のラブ』

・紫陽花はふんわり国家その下にオロナミンC破棄されていて

・だいたいの魚は水に生きていて水がなければ宇宙とおなじ

・この靴はわたしじゃない誰かの物かもしれないな、少しきつい

・そとは雨 駅の泥めく床に立つ白い靴下ウルトラきれい

・下を縫うたびにミミズ腫れみたいな縫い目になる 糸ミミズ?

・ずぶぬれの自転車こうこう光らせて待ってないのに恋人がきた

・人身と雨が重なる電車かな私よりつらいひとばかりだよ

・かわいいなあ くまはかわいい 人よりもずっと軽くてポリエステルで

・開いたらチーズのにおいチーズだといいけれどチーズじゃなかったら

・海は必ず海だからいい目を閉じて耳を閉じても海だとわかる

・電話ボックスで雨宿りして十円をハムスターの温度に握った

・ゆるキャラのなかで手を振るあと二時間臓器でいればお金が入る

・半年も暮らせばそりゃあ愛情も湧くから、たぶん、たぶんオッケー

・惣菜パン惣菜パンひとつとばして窓、そこらじゅう夕日が殴る

・降りそうな空だ飛べそうな窓だもう泣きそうな目で果てばかり見て

・好きだからするの見ていて生脚にスティック糊を塗る行為とか

・悲しみを知らない獣になりたいな象はだめ御葬式をするから

・電線をリスが齧って焼け死んで停電 のちに電気は戻る

・誰それの住居は移り誰それの苗字は変わり戸に揺れる蜘蛛

・あの友は私の心に生きていて実際小田原でも生きている

・きっぱりと異国の空に塞がれて地べたを見ればいきものの影

・外はもうだいいちめんの蟬のこえ蟬が壊れるように鳴くこえ

・モニターに「指が五本」と産科医が言えばたしかに白い骨たち

・窓際のマトリョーシカはかろかやかに女が女に女へはいる

・公園の蛸すべりだいはすり減って蛸を脱したすべらかなもの

・結婚をした日の雨は地を廻りわれら果てなく限りある旅

・あしか見に行こうね、あしかは今日だって生活しているけれど、週末

・太ももを頑張らせている少女らによろこびのようなはつ雪が降る

・ババ抜きのババだけ光って見える目を持ってしまった子のさみしさだ

・産むことと死ぬこと生きることぜんぶ眩しい回転寿司かもしれず

・飽きるほど誕生日してめくるめくまっ白な髪を抱きしめあおう

・あがりすぎて戻れない帆 帆からの糸を握った僕の手はハム

・外食はおいしい だって産業になるほどおいしい 外食が好き

・好きな子が僕のことさえ好きだって壊れた自販機みたいな声で

・爪の根の白い半円見せあって私もあなたも欠けているじゃろ

・【添うように歩みたくても細い道 わが子かわたしが前へゆかねば】

・【戦争にいかせたくない わたし自身が戦争になってもこの子だけは】

・ガス満ちるホイップクリーム缶めいて凶器にも夢にもなるあなた

・淀むほど煮干の入ったラーメンをひどい顔色でしあわせに食べる

・欠席をします に丸をつけるとき始めと終わりがうつくしく合う

・汚れから私を護るエプロンをらぶと名付けてラブが汚れる

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