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【ビートルズ『リボルバー』について語る⑤】インド色強め
インドなアルバム
ビートルズで【インド】と来ると
どうも『ホワイトアルバム』が浮かんで
来ませんか?
確かに『ホワイトアルバム』は
インドで作った曲をイギリスに帰って来てから
作り込んで仕上げたアルバムです。
インド味が無い事はありません。
あとは、
「ノルウェーの森」でシタールが
弾かれている、とかね。
まぁ、中期あたりからちらほら
インド色は出てくるんです。
が、待てと。
『リボルバー』が実は
思いっ切りインドじゃないんか?!
皆さん、『リボルバー』と聴いて
どういうイメージや音像が思い浮かぶ
でしょうか。
綺麗どころの「Here,There And Everywhere」や
「For No One」などを聴いていると
うん?、なんかクラシカル?
西洋の綺麗な感じというか。。
バロック調?
そうなんですよね。ポールのキャッチー系の
曲の存在感はデカくて
ついついウッカリしていると
ヨーロピアンな雰囲気に飲まれそうに
なるんです。
ところがどっこい!
そもそも、このアルバムは
ジョン・レノンがティモシー・リアリーの
【チベット死者の書】を読んで感銘を受け、
「Tomorrow Never Knows」のアイデアを
スタジオに持ってきた所から
始まりました。
「俺はもう普通のサウンドには
飽き飽きしているんだ。
ギターを弾いたらギターじゃない音。
ピアノを弾いたらピアノじゃない音が
出るとか
そんなのがやりたいんだよ」
ジョンの無茶振りがはじまりました。
そこで、スタジオで遊びながら実験が始まり
逆回転、テープループなど
色んな技術が開発されました。
しかし、その手の込んだ技術を施された
楽曲自体は
これは、全曲ではありませんが
割にシンプルな体裁をもったモノだったのです。
何をインド的とするかは難しいところですが
分かりやすい部分で言えば
使われているコードが少ないです。
というか、
3コード!ロックンロール!
とか、そういうのじゃなくって
ドローンミュージックの様に
コードチェンジが最小限に抑えられた様な
曲が多い。
一部、例を出しますと。
「Tomorrow Never Knows」
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ちょっとメロディー的に少し雰囲気を
変える為にB♭が入りますが
それでもon Cであり、
ほとんどCみたいなもんです。
ほぼ1コードの曲。
「Eleanor Rigby」
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「エリナー・リグビー」も
ほぼCとEmのみ。
Em の部分、長いぞ(笑)!
Aメロ、ほとんどコードチェンジなし。
ただ、この曲がいわゆるインド的な曲に
聴こえないのは
バックにガッツリ入っている
ジョージ・マーティンが付けた弦楽八重奏
の為。↓
これの印象でむしろ西洋の音楽みたいに
聴こえてしまうんですが
実はこの曲もそんなのを剥ぎ取ってしまえば
ドローンミュージックに近い。
「Paperback Writer」
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この曲もほぼGとCのみ。
それでもインド!という感じでもないのは
この曲の印象的なギターリフのイメージが
先行するからではないでしょうか。
後は、上に乗ってるメロディーも
結構動きますしね。
でも、コード表を観てもらうと。。
かなり平べったい曲です。
ずっと同じ通低音が鳴っている様な
マントラ的な感じ。
「Taxman」
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この曲もDとC。
「Love You To」
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一番モロにインドでーす、なこの曲も
勿論、コードは最小限。
CmとB♭。
ジョージはモロだけど、
ビートルズが上手いのは
アレンジ面で西洋風な味を混ぜ込んで
いるところ。
いきなりインド!インド!インド!
ってやったら受け入れられないかも
知れない。
ホントは
「Love You To」や「Tomorrow Never Knows」
みたいな曲で埋め尽くしたかったのかも
知れない。
でも、それじゃ売れないし
受け入れられない。
特にポールはそこを意識して
ジョンとジョージがインドや実験に
走ったぶん
自分はいつもの安定した西洋の名曲を
書いてバランスを取ろうと。
それでも「エリナー・リグビー」みたいな曲も
書いて挑戦もするという、すごい男です。
詰まり、ビートルズがこのアルバムで
やった事というのは
西洋音楽、コードミュージックからの逸脱
じゃないかと思うんです。
ラ・モンテ・ヤングやジョン・ケージが
やって来た様な事を
ポップミュージック、ロックミュージックで
やってみようという感じだったんじゃ
ないかと思ってます。
『リボルバー』に影響を受けた
ミュージシャンは星の数ほど居ると
思うのですが
中でも、同世代ですぐにその革新性に気付き
いち早くこのテイストをまた別の
アプローチで取り入れたのが
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド
だと感じてます。
『リボルバー』が好きなら『バナナ』も
好きだろう、と。
ホントにいつまでもアホみたいに
『リボルバー』と『バナナ』を
ロックの頂点に君臨させとくのも
もう古い考えなのかも知れませんし
ローリング・ストーン誌の
偉大なアルバム500の最新のモノでは
もっと違うアルバムたちが評価を上げたんですが
僕は未だに『リボルバー』『バナナ』に
なっちゃいますね。
ホントに古びないんだもの、こいつら(笑)
と、いう訳で
今回はここまでです。
ありがとうございます!