付随音楽「ペール・ギュント」(グリーグ)
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さて、"本日のオススメ"は、グリーグ作曲の『付随音楽「ペール・ギュント」』です。(数字は5-305・名曲解説全集第5巻-P297)
エドヴァルド・グリーグ先生。1843年-1907年(64歳)ノルウェーの作曲家でしたね。
抒情小曲集 第5集の回以来、2回目の登場です。
本日の曲は、『付随音楽「ペール・ギュント」』。この中から第1組曲と第2組曲ができた、元の作品です。
※こちら、管弦楽曲なのですが、大きめの劇音楽のため、ゆっくり聴けるようにするために、休日枠にしました。
先生、32歳ころの作品。前回紹介の『抒情小曲集』の第1集から10年くらい後で、ピアノ協奏曲の7年くらい後に作られました。
付随音楽は、劇に付随される音楽です。劇付随音楽。劇音楽。
もとになっている「ペール・ギュント」は、同じノルウェー出身の有名劇作家イプセン先生の戯曲です。
ノルウェーの民話採集の旅から得た伝説的な人物を主人公とした劇。
元々は上演をすることを想定しない、読み物としての戯曲として作られました。しかし、この作品を上演する事になりました。イプセン先生、近代演劇の流れを大きく変えた超重要人物です。ただ、上演を想定していないため、上演しようとすると弱い部分があったのです。そこでイプセン先生、それを補うために音楽を付けることを想起し、グリーグ先生に作曲の依頼をしました。
主人公のペールさんは、空想家にしてほら吹き、無節操の野心家、冒険好き、怖いもの知らずで世界を股にかけた浮浪家。そんなペールさんが旅に出て、様々な経験をして老いて帰ってくるまでを描いた物語
グリーグ先生、ご自身の作風が「抒情的」「小品向き」である事を知っていたため、上記のようなこの壮大な作品の曲作りには向かないと考え、一旦は断ろうとしていました。しかし、報酬と民族的な題材によるよる音楽作りに対する意義を感じ、着手を始めました。結果として、先生の代表作になったわけです。
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<あらすじ>
ノルウェーの豪農の息子として生まれましたペールさん。父が財産を使い果たし、その後は母と貧乏暮らしをしていました。ソルヴェイグさんという恋人がいましたが、かつての恋人イングリッドさんが結婚するという事を知り、なんとその結婚式からイングリッドさんを奪い、逃げ出してしまいます。
そして、イングリッドさんに飽きると捨ててしまい、今度は緑衣の女性(トロルの娘)に出会いますが、結婚直前までいきそうになるも、また捨てて逃げ出してしまいます。
故郷に戻ると、ソルヴェイグさんと一緒に暮らしていましたが、そこにトロルの娘が、子どもを連れてやってきます。驚いたペールさんは、飛び出して母の許へと走ります。久しぶりに顔を見た母は満足し、そのまま亡くなってしまいます。
ペールさんはソルヴェイグさんをおいたまま、心機一転アフリカへと赴きます。最初はモロッコへ行きますが、ここでお金持ちになります。しかし盗賊と密売人に襲われ、全財産を奪われてしまいます。次いでアラビアへ行くと、ここでまた財を築きます。踊りを見て楽しんでいましたが、眠っていると故郷に残したソルヴェイグさんを夢に見ます。
ここまでに数々の冒険をしてきたペールさん。最後にカリフォルニアで巨万の富を得たペールさんは、最後を故郷で過ごそうと帰国の途に就きます。ところが嵐に見舞われて難破し、無一文になります。老女となったソルヴェイグさんは、まだペールさんの帰りを待っています。ペールさんは、夜の松林や教会に向かう人たちを過ぎ、とうとうソルヴェイグさんの元に帰ってきます。ソルヴェイグさんは優しく子守唄を歌い心身を憩わせていると、ペールさんはそのまま永遠の眠りにつき、幕となります。
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01.前奏曲
02.花嫁の行列の通過
03.ハリング舞曲と跳躍舞曲
04.第2幕への前奏曲「花嫁の略奪とイングリッドの嘆き」
05.ペール・ギュントと女悪魔たち
06.緑衣の女のいる情景の終末
07.山の魔王の洞窟にて
08.山の魔王の娘の踊り
09a.トロルから攻撃されるペール・ギュント
09b.兎のいる情景
10.第3幕への前奏曲
11.ソルヴェイグの歌
12.オーセの死
13.第4幕への前奏曲「朝の気分」
14.盗賊と密売者
15.アラビアの踊り
16.アニトラの踊り
17.ペール・ギュントのセレナード
18.ソルヴェイグの歌
19.第5幕への前奏曲「ペール・ギュントの帰郷」
20.家でのソルヴェイグの歌
21.夜の情景
22.教会詣での人たちの歌
23.ソルヴェイグの子守唄
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確かに、物語全体の期間が長いし、場所(シーン)も変わり過ぎるので、上演向きの本ではありませんねww
これを音楽で補おうと考えたイプセン先生は、さすがだと思います。
さらにその期待に、期待以上に応えたグリーグ先生も、さすがです。
当たり前ですが、組曲で聞き慣れている曲がたくさん出てきます。全曲を、筋がわかった上で流れで聞くと、その曲の楽しみ方がちょっと変わりますね。
本日の音源は、Sergio Cánovasさんのチャンネルを視聴しながら書き進めてきました。ありがとうございます。
本日もご来店いただきまして誠にありがとうございました。
またのお越しをお待ちしております。