大人と銭湯と夏
うだるような暑い夏だった。
僕は西へと足を運んだ。
理由は何もない。ただ西に行きたかった。
将来そっちに住みたいとかその時は思ってなかったし、
今思うと行かなくてよかったなんて思っている。
(旅行で行くのは大好きなんだけどね)
初めての大阪でそこそこドキドキしていた僕は
案内してくれるという心優しい方の元待ち合わせのあべのハルカスへ向かった。
初めて会う人に緊張しながらも僕は待ち合わせ場所についた。
身長は僕より大きくて、完全に僕より「大人」だった。
といっても、僕は僕でそんなこと何も気にしないので
シンプルに大阪観光を楽しませていただいた。
大阪城前で飲む生ビールは美味しかったし、
行列で食べるのを諦めたかき氷屋もあった。
高架下で食べた魚は美味しくて、音楽の話も盛り上がって
結局近くにいてくれる人が最高か最高じゃないかでその地域の評価が下されることにその時の自分は思ったものだった。
大阪は最高だ。
その後は、僕はその人の家に急遽泊まらせていただくことになった。
夢ならばこの暑さのまま溶けてなくなってくれ。
こんな暑さならということでせっかくなので近くに銭湯があるので一緒にいくことになった。
そこは、町の銭湯なのでタオルも基本自宅から持っていく必要があって確かシャンプーも持参だったような気がする。
入口で下駄箱に靴を入れて番台おばちゃんにお金を渡して、僕たちはそれぞれ赤青の暖簾をくぐっていった。
たかが30分~1時間の間なのに、その時間がとても愛おしくてお風呂を楽しまずに速攻で出てしまったな。
結局40分くらいした後に出てきたあなたを見て、
僕は、やっぱり子供だった。
その後、帰り道のコンビニでガリガリ君を買って食べながら
二人で火照った体を冷ましながら、夜道を歩いて行った。
クロノタシスって知ってる?
時間が止まって見える現象なのを身を持って体験したな。
何もしないよね。
こんな嘘っぽいセリフで本当に何もしないで
朝までThe Beatlesの話で盛り上がっただけなんだけど。
僕たちはただ、話せる場所が欲しかっただけだった。それが幸せだった。
朝が来て、僕たちは何もなかったかのようにお互いの道を行く。
この先あなたと出会うことができるのは人生で何回あるのだろう。
そんなことを考えながら僕は東に戻っていった。
今こうして下北沢の魚屋で、瓶ビールを二人で分け合って節約していたあの頃よりも、
のどぐろを食べれるような僕は、大人になっているのかな。
いや、僕はまだまだくだらない話で笑いあえるくらい、
年を取れば取るほどフィクションになってくるけど、諦めないで生きていくよ。
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