憲法条文コメンタール(総論)案
滝川沙希です。
憲法総論は、法学の一部とも重複します。
1 憲法の意味
(1)形式的意味の憲法:「イギリスには憲法がない」というときの「憲法」。憲法典を指しています。日本の場合「日本国憲法」という憲法典がありますね。
(2)実質的意味の憲法:憲法典の有無ではなく、憲法の内容に着目した概念です。次の二つがあります。
①国有の意味の憲法:統治の基本を定めた法としての憲法を指します。この意味での憲法がない国は存在しません。あらゆる国に固有の意味の憲法は存在しています。
②立憲的意味の憲法:専断的な権力を制限して、国民の自由を保障しようという立憲主義の思想に基づく憲法を指します。フランス人権宣言にそうした趣旨が出てくるそうです。日本国憲法に②はあります。
2 立憲的憲法
立憲的憲法は、通常、成文法の形をとります。
社会契約説を前提とすれば、「契約」だったら紙に書くよね、ということです。
イギリスには、(1)形式的意味の憲法はありません。しかし慣習法で成立しているわけではなく、(2)実質的意味の憲法として成文の法律で制定されています(紙に書いてある)。
3 憲法の特質
(1)自由の基礎法:憲法は自由の規範である人権規範であると考えられています。憲法は国家機関について定めたり、各機関の国家作用を授権するなどしていますが、人権規範に奉仕するものとして規定されているということです。
→41条は国会という国家機関を定めていますね。そして国会に立法権限を与えています。それは、立法の中身が人権を保障するようなものであってね、ということなのです。なお人権を保障しないような立法だったら違憲無効になります(81条)。
また、法律に基づいて政令などが制定されますが、この場合、憲法は法律の授権規範だ、法律は政令の授権規範だということがあります。
(2)制限規範性:憲法は国家権力を制限するための基礎法です。法律は権利を制限しますが、憲法は国家権力を制限するのです。
(3)最高法規性:98条が示すように、憲法は国法秩序において最も強い形式的効力持ちます。97条は実質的根拠を示しています。
※97条は11条にそっくりですね。大昔は97条を盲腸だといった大家がいます(宮沢俊儀。芦部憲法で有名な芦部先生の先生)。
※97条を不要としておくよりも、何か意味があるはずだとして登場したのが、実質的最高法規とする見解です。通説になりました。
この説は、「97条の内容を読むと大変ありがたいことが書いてあり、ありがたい故に最高法規に違いない!」という説です(雑ですが)。
※96条(最高法規)、97条(実質的最高法規)、98条(形式的最高法規)の関係は、相互の関係を一度理解しておいてください。
※この辺りは、軽く理解してください。上で述べたように、通説が条文を整理して解釈して見せただけです。
4 法の支配
(1)定義:正しい法により国家権力を拘束し、もって人権を保障する原理をいう。「法の支配」は、「人の支配」の対義語です。人の支配が行われているところでは、お代官さまがいいように年貢を奪ったり、働き手を戦争に駆り出したりします。そんなイメージです。
※定義でありながら、テキストによって表現が違ってたりしますので、驚きますよね。「正しい法」という主観的な言い方にも驚きます。
※憲法さえまともに働いていれば、悪法を制定したり行政などの国家機関が人権を抑圧したとしても、人権が保障されるということになるという考え方だと理解してください。憲法が最高法規だとか授権法規だとか、散々上記でお伝えしました。ここに繋がってくるのです。
(2)比較法:法の支配は、英米法で発達した概念です。法の支配というときの「法」とは、理に適っている「法」です。法の原理は、国民の権利自由を制限する立法をするのは国民だということで、その意味で民主主義と結び付きます。
他方、法治主義での「法」は、形式的に法でありさえすればよく、手続的なもので、内容はどうでもよい。独裁制とも結びつきえます。具体例として戦前のドイツを覚えておいてください。
なお、戦後のドイツは法治主義の「法」は内容的にも人権保障にあついものでなければならないという実質的法治主義に生まれ変わりました。法治主義とほぼ同じだと理解しておいてください。
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