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FIRE の失敗パターンと "RE" = "Retire Experiment" という考え方
GAFAM エンジニアを辞め40代で FIRE (Financial Independence, Retire Early: 経済的自立と早期リタイア) をして3ヶ月目になりました。 私は「FIRE の実験中だ」と 自己紹介 で書きましたが、今回はその部分を掘り下げていきたいと思います。
FIRE の種類
一般的に言われている FIRE には、以下のような種類があります。
ファットFIRE: 大きな資産を築き、不労所得や資産の切り崩しだけで生活する、労働不要の FIRE。
リーンFIRE: 必要最低限の生活を目指し、支出を抑えながら「ギリギリで FIRE」を達成するスタイル。
サイドFIRE: 投資による不労所得と、副業やパートタイムの収入を組み合わせることで、収入>支出の状態を維持するスタイル。会社に縛られず、自由に収入を得ながら生活することを目指します。
バリスタFIRE: 投資による不労所得と、パートやアルバイトの収入を組み合わせることで、収入>支出の状態を維持するスタイル。
コーストFIRE: 支出を賄うための収入はまだ必要ですが、老後の資金の心配は不要な状態。仕事は必ずしも辞めなくてよく、老後の部分の "FI" を達成し、"RE" はしないスタイルです。
ただしこれらの分類は、主に "FI" (経済的自立) の方法に焦点を当てており、"RE" (早期リタイア) の部分には触れていません。しかし、最も重要なのは「リタイアしてから何をするか」という "RE" の部分ではないでしょうか。
FIRE の失敗談から学べること
FIRE を実行し、実際に退職するのは大きな決断です。当然失敗したくはないので、計画段階で多くの失敗談を調査しました。いくつか参考にしたリンクを紹介します。
FIRE(早期退職)してみたが幸せになれず失敗する
ビジネスで成功して「FIRE(早期退職)」した人は、たしかに経済的自由を手に入れるでしょう。しかし、INSEADの研究によれば「経済的自由」になっても、その自由を持て余してしまう人は多いようです。
また、FIRE(早期退職)した後には、同じ境遇の友人や家族がなかなかいないため、孤独感に悩まされる人は多いようです。中原もFIREに近い暮らしをしている一人ですが、「周りと話が合わなくて寂しい」と感じることは、けっこう多いです。
結局、FIRE(早期退職)してからも居心地の悪さを感じて、ふたたび仕事を始める人も多いと思います。筆者の周りでも「仕事をやめたところでやることがないし、仕事を続けたほうが幸せだ」と言う富裕層の方がけっこう多いです(のんびり暮らしてスローライフ……という人は、ほとんどいません)。
結局、FIRE(早期退職)は人生の目的にはならないようです。夢を持って、前向きに全力を尽くしている日々のほうが、目的もなくのんびり暮らす毎日と比べると、幸せになりやすいということなんだと思います。
まず、不幸なFIREは何よりもお金に対する執着心からスタートします。少しでも多くの収入を、少しでも多くの資産をと考えて頑張ります。ただ、そこには何のビジョンも目的も無いので、徐々に退屈さや無力感が襲います。
また、心身の健康に重きを置いて生活していない為、体の不調や心の鬱状態に襲われます。そして、良好な人間関係を築いてこなかった為に、寂しく孤独な生活が待っています。
…(中略)...
次にグッドサイクルを見てみましょう。幸福なFIREはまず一番初めにビジョンを明確にします。ビジョンとはどんな人生にしたいのか?自分は何を幸せに感じるのか?もっと大きな視点で言うと、自分は何の為に生まれたのか?ということを明確にします。
ビジョンが定ったら、次に何よりも心身の健康が土台となるので、たばこや有毒な食事を避け、定期的な運動を行い、感情のコントロールを行います。それらにより、常にエネルギッシュで心身共に健康な状態を自分で作ります。
FIREは達成がゴールではなく、達成後の生活をいかに楽しめるかが重要だと私は思います。
…(中略)...
FIREは多様性を受け入れながらも自分らしく生きることであり、競争社会からの卒業でもあると考えています。FIREを達成すると、あまり人のことは気にならなくなりました。
またFIREする前から、「時間を持て余してしまうのではないか?」、「社会との接点が無くなり孤独でつまらない人生になるのではないか?」と思う人はおそらくFIREに向いていない可能性があります。
むしろそちらの価値観の方が正しいとも言え、FIREを考えずに会社で普通に頑張ることが幸せに繋がるのかもしれません。
このようにFIREは、向き・不向きがあり万人向けのライフスタイルではないと感じています。
…(中略)...
時に今のFIRE生活の継続性に不安を覚えることもあり、決してストレスフリーではありません。
これらの記事から学べる教訓をまとめると、以下のようになります。
FIRE は夢やビジョンを叶えるための手段であって、目的ではない。
ビジョンなき FIRE は飽きるか孤独になりやすい
幸せになるためには前向きに全力を尽くすことが大事
FIRE 達成後の生活をいかに楽しめるかが重要
FIRE は向き・不向きがあり、決してストレスフリーではない
なるほどと思う一方で、いくつかの疑問が残ります。
ビジョンはどうやって決めるのがいいの?
働いているとビジョンを考える時間なんてない!
定年リタイアした人でビジョンをちゃんと持っている人なんて少ないんじゃないの?
向き不向きは FIRE する前に分からないの?
FIRE に不向きな人は定年退職したらどうするの?
さらに考えると、
そもそも時間がない中で考えたビジョンなんて当たり外れが激しそう
ビジョンなんて実際に考えてやってみないと向き不向きも分からないし、結局時間がかかる
という堂々巡りに陥りました。 そして、ある程度確固としたビジョンを持つためには結局まとまった時間と挑戦が必要 だと思うようになりました。
“RE” = “Retire Experiment” とは
そこで提唱したいのが "RE" = "Retire Experiment" (退職実験) という捉え方です。 主な目的は 自分がリタイア後の生活を楽しめるかどうか早めの段階で試す ことです。
アイデアとしては、
ある程度の余剰資金を活用し、期限を決めて一度仕事から離れる
退職後の生活を擬似的に送ってみて、定期的に振り返る
長らく挑戦してみたかったことや、年を取ってからではやりにくくなることを早めに始める
長く楽しく続けられそうなことを見つける
共有できる仲間を増やす
資産管理のスキルを上げる
資産状況が想定より悪化したら早めに切り上げ復職する
があります。
必要なもの
もちろんこの "Retire Experiment" を行うには、以下が必要です。
住宅ローンなど、無職ステータスになったら困るものを持っていない
ある程度の (数ヶ月〜数年収入なしで生きられる) 余剰資金
キャリアプランを一時中断する勇気
復職できる自信
周りの人の理解
このうち、一番厳しい縛りはステータスの部分でしょうか。こればかりはどうしようもありません。
資金の話ですが、メインの収入がなくなる、退職金が一度清算される、健康保険代が増える、失業保険で賄う、など色々な変化がおきますが、その部分は必要経費として考えないといけません。 しかし、"FI" は今後何年も生きていけることを目指しますが、"Retire Experiment" にはそこまで必要ありません。 例えば今後3年生きていける資金があれば 1年 "Retire Experiment" できると思います。
例えば 3 年分の余剰資金があって 62歳にアーリーリタイアできるのであれば、その3年分を前借りして今に使うほうが効果があるのでは、というアイデアです。
メリット
一方、この実験にはどう転んでもメリットがあると思っています。
長らく挑戦してみたかったことを始められる
意外とやってみると面白いことを探せる
ずっとやってみたかったけど一度やるとそんなに長続きしないことなどに気づける
時間がある限り何回か挑戦できる
体力や頭が衰える前に色々なことに挑戦するべき
何回か挑戦する時間は必要
否が応でもお金を意識するので、資金管理、運用のスキルが増える
長続きできそうなことが探せれば、早めに見つけられたことを喜べる
何もかも失敗したとしても、60歳台で初めて気づくよりかははるかに良かったと喜べる
一度リタイア後を経験することで、60歳以降に学びを活かせる
あの時はああだったよね、今度はこうしようか、と言えるようになる
若いときと違い体力も頭も衰える60歳台以降に、予行演習もなしでぶっつけ本番で突入することは怖くありませんか? リタイアした後にやりたかったことは、もう体力がなくてできないかもしれません。やってみたら意外とすぐ飽きるかもしれません。 逆に「やっぱり自分は仕事が好きだ」と再確認するかもしれません。どれも一度経験しないと何も判断できないでしょう。
肩書としては単なる無職と変わりありませんが、計画して期限付きで無職になり、リタイア後を見据える のが一番の違いかと思います。
自分の計画
私は余剰資金を作り、少なくとも 3 年は仕事から離れるつもりで Retire Experiment を始めました。
先程書いた 62歳にアーリーリタイアできるのであれば、その3年分を前借りして今に使うほうが効果があるのでは というのが一番のモチベーションです。同時に子供が思春期前なので、濃密な時間が過ごせるのは今のうちではと思ったことも大きいです。それに関してはまた別記事を書きたいと思います。
FIRE してからのこれまでの気付きもこれからまとめていきたいと思います。