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寝違えなどで頸部に可動域制限がある場合のアプローチ

はじめに

寝違えなどで頸部の回旋制限や側屈制限、屈伸制限が生じ痛みにより頸部が動かせなくなるといった症状はよくあります。
これらの症状を徒手により早期に改善するためのアプローチを一つの方法として是非参考にしてみて下さい。

このnoteを見ることで、特別なスキルを持っていなくても急性頸部痛(寝違え)での可動域制限を改善するアプローチ方法がわかります。
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前提としてまずはどの筋や関節のどのレベルの動きが影響しているのかを評価しなければいけません。

しかしながら可動域制限が強い場合は、細かい評価がしにくい場合も多いです。

なのでその場合は、まずどの方向への制限が一番強いか、どの動きが一番つらいかを確認しそこからアプローチすることも多いです。

まず上を向いて回旋するときと下を向いて回旋するときとで痛みや可動域制限を評価し、上位頚椎が関与しているのか下位頚椎が関与しているのかを確認しておくとアプローチもしやすくなると思います。
上を向いて回旋時に痛みや可動域制限・・・上位頚椎に問題あり
下を向いて回旋時に痛みや可動域制限・・・下位頚椎に問題あり

それぞれの制限に対して、どの筋や関節の動きが関与するかを整理してみますのでアプローチの参考にしてみて下さい。
いろんなテクニックや手技がありますが機能解剖学を基に進めていきます。

多くは初回で可動域制限は緩解することが多く、2~3回で可動域制限がなくなる事がほとんどです。(レッドフラッグに引っ掛かるものや環軸関節回旋位固定などは除き筋由来のものと想定します)
これまでの臨床15年以上の経験や私見も含まれますのでご理解いただき読み進めて下さい。

急性頸部痛のレッドフラッグ

評価していく中で、まずはred flag sign(見逃してはいけない疾患を示唆する徴候や症状)を除外しておく必要があります。

  • 発熱の有無

  • 症状の左右差(運動器疾患であれば左右差があることが多い)

  • 突然発症

  • 人生初の寝違えという主訴

  • 神経症状、髄膜刺激症状

  • 頸部痛に先行して下肢症状(しびれ、歩きにくいなど)がある

などがあります。
そこを除外できたとして、次に進んでいきましょう。

比較的回旋制限が多い印象ですので、回旋制限を中心に解説し、他の可動域制限に関しては別のnoteで解説していきます。

回旋制限の改善

回旋制限に関与する主な筋肉は僧帽筋上部繊維胸鎖乳突筋斜角筋頭板状筋頚板状筋などが考えられます。

まずは表層の僧帽筋上部繊維からチェックしてみましょう。
ここのアプローチだけでも回旋制限は結構取れることが多いです。

僧帽筋上部繊維の解剖

起始:後頭骨の上項線、外後頭隆起、項靭帯
停止:鎖骨外側1/3
神経支配:副神経の外枝、頚神経叢の筋枝
作用:肩甲骨の挙上、上方回旋
※上肢帯が固定されていて、片側が働くと頸部を同側に側屈し反対側へ回旋する。両側が働くと頸部の伸展。

僧帽筋の全体像
僧帽筋上部繊維の上縁部

僧帽筋上部繊維に対するアプローチ方法

上記の※に記載してある作用が大事で、この表層にある僧帽筋上部繊維とその深層にある頭板状筋、頚板状筋、肩甲挙筋、前鋸筋、棘上筋などとの滑走性を上げていくようにアプローチしていきます。

ステップ1:まずは僧帽筋上部繊維の上縁部を見つける
ステップ2:僧帽筋上部繊維の上縁から裏側に指を滑り込ませるように斜め下に押し込む(深層筋とのスペースを作るような感じで指を裏側に滑り込ませつつやや背側方向に押す)
ステップ3:ステップ2での指はキープしたまま、同側への頸部回旋を5回前後繰り返す(無理がない範囲で)
※ステップ2では起始部から停止部まで全範囲を、指を滑り込ませる場所を少しずつずらしながら行う

僧帽筋上部繊維の上縁部をとらえる
斜め下に押し込みながら背側方向へ滑らせる

ステップ3を終えた後、もう一度頸部回旋を行っていただくとする前よりは痛みなく回旋可動域が広がっているはずです。

あまり痛みや可動域が変わっていない、もしくはもう少し残っているといった場合は僧帽筋以外にも原因があると推測し次の筋のアプローチに進みます。(僧帽筋の上縁部をうまくとらえられていない可能性もありますが…)


もう一つ表層にある回旋に関わる主な筋は胸鎖乳突筋があります。
次は胸鎖乳突筋のアプローチを解説していきます。

胸鎖乳突筋の解剖

起始:胸骨柄の上縁と前面(胸骨頭)、鎖骨の内側1/3の領域(鎖骨頭)
停止:側頭骨の乳様突起、後頭骨の上項線の外側部
神経支配:副神経の外枝、頚神経叢の筋枝
作用:両側が同時に働くと頭・上位頚椎を伸展、下位頚椎を屈曲(頚をすくめて顎を突き出す)
片側が働くと、頭頚部を同側へ側屈、反対側へ回旋する

胸鎖乳突筋を前外側から見た全体像
胸鎖乳突筋を外側から見た全体像

胸鎖乳突筋は斜角筋群や肩甲挙筋など深層にある筋群との滑走を促したり停止部の付着部に軽い刺激を入れたり1b抑制を使って筋自体を緩めていく操作を行っていきます
どちらの回旋動作に制限があるのか痛みがあるのかで収縮時に問題があるのか伸長時に問題があるのかを評価しなければなりません。
例えば、右回旋にて可動域制限や右頚部の痛みを訴えている場合、胸鎖乳突筋で考えると右の伸長に問題があるのか左の収縮に問題があるのかが考えららます。
まずは痛い側(右側)の胸鎖乳突筋のアプローチから行って、変化がなければ反対側を行ってみましょう。
なのでアプローチ方法は右回旋での可動域制限や痛みがある想定で解説します。

胸鎖乳突筋のアプローチ方法

ステップ1~3は順番の決まりはありません。どの方法が一番合っているかを見極めて順番に実施してみて下さい。
ステップ1:(滑走操作)痛みがない左回旋を行っていただくと右胸鎖乳突筋のレリーフが確認できます。筋腹を手指で愛護的につまみ上げ胸骨頭側から手指を深層筋との間に指を滑り込ませスペースを作るようにし痛みがない範囲で右回旋(自動運動)を行っていきます。5回前後。その後再評価。
ステップ2:(1b抑制)痛みがない範囲で右回旋していただき、行けるところまで回旋したらそこで頭部はキープしたまま施術者が頭部を固定し患者様に左回旋してもらいます。(等尺性収縮)これで胸鎖乳突筋の1b抑制を行っていきます。もし繰り返す間に可動域が広がってきたら最大可動域まで回旋し等尺性収縮を行っていただきます。これも5回前後繰り返したら再評価します。
ステップ3:(筋リラクセーション)停止部の乳様突起、上項線の付着部を軽くほぐしてみます。
痛みがない範囲まで右回旋していただきそのままの肢位で付着部をほぐしていきます。やり過ぎや強い圧迫は気を付けましょう。その後再評価します。

それでもあまり変化がない場合、回旋にはあまり関与しませんが経験上、斜角筋にアプローチをして改善することが多いので斜角筋のアプローチの解説からいきます。(伸展時痛は結構改善します)
この斜角筋は寝違えによる可動域制限や痛みに関与していることが多い(個人的な感想です)ので大事なポイントになります。


前斜角筋の解剖

起始:第3(4)~6(7)頸椎の横突起の前結節
停止:第1肋骨の前斜角筋結節
神経支配:頚神経の前枝(C5~C7)
作用:肋骨を引き上げて胸郭を広げる(吸息)、肋骨を固定すると頚部を屈曲、片側が働くと頚部を同側へ側屈

中斜角筋の解剖

起始:第2(1)~7頸椎の横突起の後結節
停止:第1肋骨の鎖骨下動脈溝の後方の隆起(第2、3肋骨の場合もある)
神経支配:頚神経の前枝(C2~C8)
作用:肋骨を引き上げて胸郭を広げる(吸息)、肋骨を固定すると頚部を屈曲、片側が働くと頚部を同側へ側屈

後斜角筋の解剖

起始:第5(4)~7頸椎の横突起の後結節
停止:第2肋骨の外側面
神経支配:頚神経の前枝(C7、C8)
作用:肋骨を引き上げて胸郭を広げる(吸息)、肋骨を固定すると頚部を屈曲、片側が働くと頚部を同側へ側屈

斜角筋群を前外側から見た図
胸鎖乳突筋を取り除いて斜角筋群を前外側から見た図

斜角筋群の特徴

・後頚三角部で触知可能
・前斜角筋は胸鎖乳突筋に大部分が覆われている。
・前斜角筋は腕神経叢のすぐ前方、中斜角筋はすぐ後方に位置する。
・後斜角筋は中斜角筋と肩甲挙筋との間に位置する。
・中斜角筋の筋腹は前斜角筋の筋腹よりも大きい。
斜角筋症候群にも関与してきますので正確に触察しておきたいところ。

斜角筋に対するアプローチ方法

斜角筋は頸部の痛みや可動域制限の際に高い頻度で関与しているかなと思っていますので重要なところですね。
腕神経叢への強い圧迫は避けるようにしてください
中斜角筋が比較的触れやすいのでまずは中斜角筋を目安にして前斜角筋との滑走を、中斜角筋と後斜角筋との滑走を促すように筋間を見つけていきます。

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